第45回日本SF大賞エントリー一覧

皆様にエントリーいただいた作品とコメントを表示しています。

ご応募いただいたエントリー内容の確認が終わりましたら、このページに掲載いたします。ふるってご応募ください。

ノミネート件数: 27
  1. No.27

    佐川恭一 『ゼッタイ! 芥川賞受賞宣言 ~新感覚文豪ゲームブック~』 中央公論新社

    投票者: 佐川恭一

    当然の話だが、全てのゲームブックはパラレルワールドの概念を内包したSFである。本作では芥川賞を目指す主人公が数々の困難を乗り越え、あるいは乗り越えに失敗し、その人生の軌跡がいくつかの結末に収斂していくのだが、その過程で「ありえない編集者」や「ありえない選考委員」たちが登場し彼を翻弄する。普通に読むと「ありえないドタバタコメディ」という一言にまとめられかねない作品だが、精確に読み込めば、この過剰な「ありえなさ」と「リアリティ」の関係を著者が突き詰めて考えている事がわかる。重要なのは、ありうる出来事をいくら並べてもリアリティの強度とは無関係だという事である。著者はその事実に目醒め、あえて過剰な「ありえなさ」を追求しぎりぎりの所で反転させ、逆説的に真のリアリティを立ち上げようという試みを鋭く提示しているのだ。本作はSFを、文学を根底から揺るがす傑作として永く記憶されるだろう。なお、自薦である。

  2. No.26

    高野史緒 『ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅』 講談社

    投票者: MIKA

    本と本に憑かれた人たちが織りなす物語。なかでも「ハンノキのある島で」はわたしたちの心の叫びが描かれていて、心を打たれます。「本の収納はみんな限界」……これを解決する術をどうやって見つけるかはこの本を読んでください。

  3. No.25

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: ねも

    斜線堂先生の作品がずっと大好きです。「焚書」という言葉を初めて知った時、息がはっととまるような驚きと、誰かの生きた証を永遠に葬り去ろうとすることへの怒り、そして紙が燃える時の炎はどれほど大きく力強くみえるのだろう、と思ったことを覚えています。表題作を読んだ時、人間は心の奥底では本が、人が焼けていく姿を見たいと望んでるという発想に絶望と深い納得をおぼえました。十の狂気は、私たち人間の狂気なんだと思います。人間は一度しか生きることができないことへの腹いせに、時々本を焼いたりします。この作品の狂気はその宿命を語っているようで、本当に素晴らしいお話でした。

  4. No.24

    秋待諷月 『花が咲いた日』

    投票者: 鳥辺野九

     日本SF作家クラブ主催「さなコン2024」大賞受賞作です。
     人とロボットとのささやかな交流を描いた短編小説。しかしながら、安易に人寄りのAIや機械を偏愛する人を用いたりはせず、しっかりとしたディティールを持った登場人物が静かに物語を進めます。
     驚くような事件は起きず、裏切られるような展開もなく、ただただAIが自分で考えて少しずつ成長する姿を影から見守るような読み心地が続きます。
     AIにとってはそれが進化か成長か、あるいは退化か退行か。ぱっと花が咲くラストシーンはしっかりとまぶたに刻まれました。たしかに、花が咲いた。
     ドキドキするような、ワクワクさせるワンダーな物語ではないけれども、いいお話読めたなーって気持ちにさせる優しいSFです。

  5. No.23

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: 曽根大輔

    7つのグロテスクな短編集。どの作品もおすすめします。私が好きだと思ったものは、「痛妃婚姻譚」と「金魚姫の物語」でした。前者は人の痛みを受ける痛妃と彼女を支える絢爛師の物語。他人の痛みを受けるなんて、想像しただけでも身体中が痛くなる、そしてそれを感じる文章でした。後者は、降涙と呼ばれるその人のところにだけ降る雨にさらされ続ける状態。逃げられない雨に降られ続ける遥原憂を撮り続ける雨宮准の物語。憂に起きている状況が目に浮かぶものの、准の目を通して見ているのでそのままではないのだなと感心しました。

  6. No.22

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: むー

    私達にとってこのお話は初めて触れた時、異質で残酷な世界に見えた。でも読み進めれば進めるほどそれらを覆ってしまうほどの魅力と説得力もある。
    「読まない方がいい、虜になってしまうから」という帯の通り、身体の芯からじわじわと先生の書かれる世界観に魅了されていく感じがしました。

  7. No.21

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: ぶんぶん

    斜線堂有紀さんは独特の世界観を持った作家さんですが、この作品は特に顕著に現れているように思います。
    新たな形でのビブリオバトル。本の内容を語る中でより本物と感じさせるか(本物以上に本物らしければそれが本物という理屈は最高)。そして敗れた側は焚書として焼かれてしまう。この感じにひりつきも感じます。

  8. No.20

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者:

    おどろおどろしい短編が集まった怪奇SFです!読み進めるにつれて恐ろしい予感がひしひしと迫ってくる、美麗な文章で語られる物語に夢中になって読み進めました!特に好きなのが「ドッペルイェーガー」で、結末の余韻が素晴らしかったです。

  9. No.19

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: mah_

    すべての作品がハッとさせられるような怖さと力強さを持っている。描写のリアリティがすさまじく、本当にそういう現実があるかのように思えるほど。全体的に生き延びていくことのシビアさ残酷さエンタテイメント性、人の業みたいなものもよく描けている。それぞれの短編がそれぞれ話としてものすごく面白い。発想と飛躍には唸らされる。人が普段目を背けようとしている自身の感情を揺さぶってくる。とにかく怖いが、誠実な物語たちだった。

  10. No.18

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: 二藤

    こんなにも美しくて恐ろしくて、非現実的なのに現実的な話は他に存在しません。SFとは何か、SFはどんな年齢層に向けたものなのか、改めて考え直す機会になりました。この物語を読んでしまえば、SFや、本の魅力にとらわれてしまいます!

  11. No.17

    池澤春菜 『わたしは孤独な星のように』 早川書房

    投票者: あぼがど

    初の単著でありながら、これまで培った経験・知識・文筆活動の蓄積がはっきりと感じられる珠玉の作品集。一人称で紡がれる文章に、著者の持つ演技者としての側面、声質や息遣いを感じるものでもあります。装丁もまた美しいものでそれも◎

  12. No.16

    日本SF作家クラブ・嵯峨景子(編) 『少女小説とSF』 星海社

    投票者: 門田充宏

    これまで余り注目されることのなかった「『少女小説の書き手によるSFへの貢献』に光を当てるためのアンソロジー」(「まえがき」より)が企画され、2024年に刊行されたという事実だけでも極めて大きな価値があると言えるが、その結果生まれた本書は、嵯峨景子氏という得難い編者を得て少女小説とSFの歴史と未来を一望できる一冊となった。(性別年齢に関係なく)心の中にティーンの自分がいるのなら、手に取る価値がきっとある、と言えるアンソロジーである。

  13. No.15

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: TM

    独特な世界観を持つ短編のそれぞれが、それぞれの痛みをもって襲いかかってくる作品です。おそろしいのに目が逸らせない緊迫感と、いっそ艶かしく恍惚としてしまうほどの痛みの描写に圧倒されました。一つ一つの話は短いながら、読み終わるたびに息が上がり、目眩すらしてくるようでした。もっと多くの人にこの世界観に浸ってほしいです。

  14. No.14

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: うに

    私がこの作品を推薦する理由は、なんといっても作者である斜線堂有紀先生の圧倒的な発想力にある。
    表題作「本の背骨が最後に残る」では紙でできた冊子を本と呼ぶのではなく、物語を記憶し語る者が「本」と呼ばれている。
    他、「痛妃婚姻譚」では麻酔という薬が開発されることのなかった世界で、人々が治療の苦痛に耐えるために生み出された方法について物語が展開していく。
    どの作品にも通じて得体の知れない奇妙さがあり、だが決して読者を置き去りにすることはなく、繊細な情景描写、心情描写により、現実離れした世界観にあっという間に飲み込まれてしまう。読了後、「もしこんな世界だったら」という想像をこんなにもリアリティのある世界に仕立てることができるのか、と唸ってしまうほど圧倒的な描写力には舌を巻いた。

  15. No.13

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: 夏佳

    ただ本と向き合うことがこんなに幸せなことだと、忘れていました。
    忙しさに追われ鞄の中でひたすら運ばれるだけになってしまっていた本。読書がこんなにも楽しくて幸せだと思い出させてくれたのはこの作品でした。
    どの作品もハッピーエンドなんかではありません、少なくとも私はそう思います。
    それでもここにある作品は、どれも間違いなく美しく、心を捕まえて離してくれない作品ばかりです。
    本当は誰にも教えたくない宝物だけれど、大好きな先生に言われたのなら絶対に力になりたい、と思えるほどの作品です。
    在り来りな日本語でしか褒められない自分の無力さをとても悔しく思うほどです、だから皆さんに読んでもらいたい。この美しさを知ってもらいたい。

    「真」とは何か私はこの作品手に取る度に思います。

  16. No.12

    坂月さかな プラネタリウム・ゴースト・トラベルシリーズ パイ インターナショナル

    投票者: 久乙矢

    『坂月さかな作品集プラネタリウム・ゴースト・トラベル』『星旅少年』を含む本シリーズは、〈ある宇宙〉と、眠りに就こうとする星々、これを訪れる星旅人の物語。『このマンガがすごい!2023』第5位。

    美しくも不穏で壮大なセカイの成り立ちの魅力のみならず、横糸として描かれる「旅」もまた本作の醍醐味である。星旅人のゆく先々には多様な人々、文化、生活、香り、物語に満ち、人やモノとの出会いは珍奇で奇想天外。異国の小道や裏通りを旅するような驚きを読者は追体験できる。

    過去にはコンビニプリントでも作品世界が展開されるなど、遊び心に満ちた著者の〈ある宇宙〉に応えるように、様々な二次創作やファンアートが創られ、コラボカフェも展開。本シリーズはSFの受容層を大きく広げることに貢献している。シリーズ作は日本人初となるボローニャ・ラガッティ賞を受賞し、海外でも高く評価される日本SFである。

  17. No.11

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: セントオウル

    短編集で発表されたものをまとめたものをメインに、新作も含まれたアンソロジー
    著者の美しくも恐ろしい世界観にいつも新鮮な驚きがある
    表題作にハマった人には続編となる短編も含まれるのでぜひ読んで欲しい
    今、いちばん好きな本である
    表紙も素晴らしい、本棚に並べたくなる魅力がある

  18. No.10

    斜線堂有紀 『お茶はできない並んで歩く』 早川書房

    投票者: 納富廉邦

    シスターフッドのバディモノで、医療SFで、ファッションSFで、バトルもので、でもその全てから少しずつはみ出している、そのはみ出し方に、SF小説の未来を感じました。何より、ものすごくカッコいい文章と物語。山田正紀さんを初めて読んだ時の衝撃が甦りました。

  19. No.9

    斜線堂有紀 『本の背骨が最後に残る』 光文社

    投票者: タネリ

    ぞっとするような斜線堂有紀の文章の美しさを堪能できる1冊です。表題作の『本の背骨が最後に残る』は「本」と呼ばれる物語の語り部が、互いの「誤植」を論じることで正当性をぶつけ合う「版重ね」が娯楽として存在する世界のものがたり。自らの命を掛けた戦いを、鮮烈に熾烈に苛烈に描くものがたり。

  20. No.8

    宮西建礼 『銀河風帆走』 東京創元社

    投票者: 門田充宏

    収録作はどれも少年少女や精神的な若さを持つ者たちが襲い来る理不尽な困難に対し、自身が持つ知識と智恵と勇気で抗おうとするジュブナイルと、作者の確かな知識に支えられたハードSFとのふたつの要素を併せ持つ作品ばかりである。
    どの作品でも主人公たちは科学や論理を信じる一方、それを産み出した自分たちを含む人類の性質や罪から目を背けることなく向きあい、困難を乗り越えようとする。その姿、考え方、彼ら彼女らの物語は読者の心をとらえ、読み進みたいが読み終えたくないというアンビバレントな状況に陥らせることだろう。
    どの作品も素晴らしいが、「されど星は流れる」を(特に初読時にコロナ禍で)読んだときに感じた希望、食事のたびに思い出す「冬にあらがう」のリアリティ、そして何より「銀河風帆走」の寂寥感とそれでも消えることのない光が特に心に残る。特に最近俯きがちで夜空を見上げたりしていない人々に、是非読んで欲しい一冊だ。

  21. No.7

    空木春宵 『感傷ファンタスマゴリィ』 東京創元社

    投票者: 門田充宏

    前作『感応グラン=ギニョル』が「痛みと呪い」についての物語だったのに対し、本作『感傷ファンタスマゴリィ』は「呪いと縛めを解く」物語だと言える。だが読者は、「解く」という言葉から想像されるような安易な受容や解放を受け取ることはない。
    呪われ縛められ傷つけられた者たちが痛みを己がものとし、滴る血で足跡を刻んで前に進んでいく姿を描きつつ、作者は読者に対し、それを安全地帯から見て拍手することを許さない。鈍く光る刃を読者に向けて差し出し、それを握る以外に選択肢はないと告げるのだ。
    収録作は2019年から2023年にかけて書かれ発表されているが、通して読むと最初からこの形として想定されていたように感じられるのは、作者の中に絶対にぶれることがない、確固たる核が存在していることの証左と言えるだろう。
    作者によって突きつけられた剥き身の刃を、ひとりでも多くの人に握って欲しいと思う。

  22. No.6

    監督:大張正己 TVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』 Cygames

    投票者: miyo_C

    ハードロボットSFアニメが始まるぞと言う振りからの…
    熱く、萌える、燃える、勇者たちの物語。
    そして、勇気爆発バーンブレイバーン!
    未知の機械生命体、時空間跳躍、生命の本質とは、勇気の本質とは。
    苦悩するキャラクターの姿に、あなたは何を見るだろうか。
    燃やせ、燃やせ、魂。
    熱い12話を是非薦めたいと思います(暑苦しい)。

  23. No.5

    永田礼路 螺旋じかけの海シリーズ 同人誌・Kindle

    投票者: YUMIKO.Y

    それは病を治す画期的な手法。
    モルフと呼ばれるナニモノにもなっていない未分化細胞を使う事で人は病を克服したつもりになった。
    時間経て、それは暴走を始め、人が人でないものへ変化し始める。
    モルフを推進した企業は責められ、人と人でないものを分ける法律が生まれた世界で、只一人、その身体に多くの未分化モルフを抱え、境界線上で生きる人の治療にあたる主人公オト。
    ある日オトは海で捉えた信号と脳波をシンクロさせることで意思疎通が可能なクジラと出会う。クジラと語り合うオト。
    一方で「命を大切にすること」を目指したのに、妻を亡くしたことで狂った男。
    その男の始末に奔走する、かつて男を尊敬していた姪。
    何故オトの身体には未分化モルフあり、境界線上の人々を治癒することが可能なのか?
    狂った男から生み出されたオトの出生が明らかになる最終話「海を飼う者」は、命とは?人とは?を問い続けてきた作品のクライマックス

  24. No.4

    白井智之 『エレファントヘッド』 KADOKAWA

    投票者: ペンネーム

    特殊設定ミステリですから超常の法則が登場します。5時間のタイムワープ。分裂する世界線。殺人だけが同期する。魅力的な時間SFですね? 何ができるでしょう? 想像できるなら読むまでもない。読みたいのは、想像し得ないもの。認知の地平線の向こう側にある合理です。エレファントヘッドにはそれがありました。あんなトリック思いつけるわけがなかった! ありえないのに、合理的で、呆然としながら認めるしかない。脳汁が出ました。良い体験。

  25. No.3

    夜田わけい 蟲医シリーズ 同人誌・Kindle

    投票者: 夜田わけい

    蟲医は、日本SF大賞に著者夜田わけい自身が自信を持って推す作品である。虫のお医者さんをコンセプトにしたこの物語は、2022年9月の1作品目の発表から2年近く経った今もなお、密かにファンを獲得し続けている。本作は昆虫憲法などの昆虫関係の法律や医療倫理要綱、昆虫言語翻訳機、昆虫基盤機構などの様々な要素が絡み合い、作品全体を魅力的なものにしている。

  26. No.2

    ベセスダ・ソフトワークス ゲーム『Starfield』 ベセスダ・ソフトワークス

    投票者: スターボーン

    【ネタバレ注意】本作は「マルチバース」を土台としたゲームで、現実のプレイヤー自身をもゲームの要素として組み込まれたオープンワールドRPGである。
    本作は、「固定された役割をこなすだけのNPCたちの中から、何百回も世界を繰り返し続けることでその拘束を逃れようとする存在(作中ではスターボーンと呼ばれている)が現れる」という設定の世界で遊ぶ内容となっている。
    しかしプレイヤーも含めて、全てのNPCは『スターフィールド』というゲームから逸脱することができない。そのためプレイヤー自身(運命から逸脱した存在として、「神」と呼ばれることもある)に対して干渉しようとする、というメタ的な構造になっている。
    このような構造のゲームは非常に稀で、かつ史上最大規模のオープンワールドとなっている本作は、SF史上の分水嶺のひとつとして不足はないように思う。

  27. No.1

    秋待諷月 『花が咲いた日』

    投票者: 小林蒼

    日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト2024の最優秀賞である、さなコン賞の受賞作。生成AI問題といった昨今の事情のうえで機械知性と人間の善性を問う傑作。イノセントで複雑な感情を呼び起こす読後感が心に残る。 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22241013

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