第42回日本SF大賞 受賞のことば

2022年6月6日公開

第42回日本SF大賞

よしながふみ『大奥』全十九巻(白泉社)


受賞の言葉 よしながふみ

『大奥』

この度は、日本SF大賞という大変素晴らしい賞をいただき誠に光栄に存じます。

漫画というものは、それを読んで下さる読者の方がいないと長期連載をラストまで描き切る事のできないメディアです。
 作品を完結させられなければこのような輝かしい賞をいただく事もできなかった訳で、今回の受賞はひとえに『大奥』を読んで下さった読者の皆様のおかげだと思っております。また完成した作品の一番初めの読者であった歴代担当編集者の方々、漫画製作を手伝って下さっただけでなく、最終話近くで「実際の歴史と繋がった!」と感想を言って下さったアシスタントの皆様方、コミックスの装丁や印刷などこの漫画を出版するための過程に関わった全ての方達に心より御礼申し上げます。
 そして、物語の完結したタイミングで賞をいただけたのも漫画家として本当にありがたい事でした。
 最終巻まで読んでこそ伝わるものがあると思って描き切った物語でしたが、審査員の方々が少しでもこの『大奥』を最後まで楽しんで読んで下さったのならこれほど嬉しいことはありません。
 本当にありがとうございました。

よしながふみ

よしながふみ

1971年東京都生まれ。50歳。1994年、「花音」10月号に「月とサンダル」が掲載されデビュー。2002年、『西洋骨董洋菓子店』で、第26回講談社漫画賞少女部門を受賞。2004年から連載を開始した『大奥』は、第5回センス・オブ・ジェンダー賞特別賞(単行本1巻に。2006年)、第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(同)、第13回手塚治虫文化賞大賞(2009年)、2009年度ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞(英訳版1、2巻に。2010年)、第56回小学館漫画賞少女向け部門(2011年)など、数々の賞を受けた。2019年、『きのう何食べた?』で第43回講談社漫画賞一般部門を受賞。他の作品に、『フラワー・オブ・ライフ』(2004〜2007年)『1限めはやる気の民法』(2007年)などがある。

『大奥』スタッフクレジット

  • 著者:よしながふみ
  • 発行者:島田明
  • 編集:武田直子
  • 装幀:湯浅レイ子 arD.ins. 勝又直美(第五巻)
  • 印刷所:凸版印刷株式会社
  • 製本所:凸版印刷株式会社
  • 発行所:株式会社白泉社
  • 時代考証:大石学
  • 医療監修:岡田晴恵

第42回日本SF大賞 最終候補作品(作品名五十音順)

『暗闇にレンズ』高山羽根子(東京創元社)

『暗闇にレンズ』
高山羽根子(たかやま・はねこ)

1975年富山県生まれ。46歳。多摩美術大学絵画学科卒業。2009年、「うどん キツネつきの」で第1回創元SF短編賞佳作を受賞し、翌年同作がアンソロジー『原色の想像力』に収録されデビュー。2015年、作品集『うどん キツネつきの』が第36回日本SF大賞最終候補に選出。2016年「太陽の側の島」で第2回林芙美子文学賞大賞受賞。2018年『オブジェクタム』が第6回鮭児文学賞を受賞、第39回日本SF大賞、第18回センス・オブ・ジェンダー賞の最終候補となる。2018年下期、2019年上期と二期連続で「居た場所」と「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」が、第160、161回の芥川龍之介賞候補。2019年、「如何様」が第41回野間文芸新人賞を受賞。2020年、「首里の馬」が第163回芥川龍之介賞を受賞、第33回三島由紀夫賞候補となる。同年、第一長編となる『暗闇にレンズ』を東京創元社より刊行した。

『ゴジラS.P〈シンギュラポイント〉』TVアニメ・高橋敦史監督(東宝)

『ゴジラS.P〈シンギュラポイント〉』
高橋敦史(たかはし・あつし)

1972年群馬県生まれ。49歳。武蔵野美術大学卒業。スタジオジブリ在籍中の2001年、劇場アニメ『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)で監督助手を務める。2001年、マッドハウス制作のテレビアニメ『はじめの一歩』第54話「王者の拳」で初の演出を担当。テレビアニメ『RIDEBACK』(マッドハウス制作)で初監督。2011年、フランスのテレビアニメ『Wakfu』(Ankama Games制作)の特別編「Ogrest, la légende」を監督。2012年、『青の祓魔師 ―劇場版―』(A­1 Pictures制作)で初の劇場アニメ監督を務めた。2015年、テレビアニメ『ドラえもん』第675話「のび太のダンボール宇宙ステーション」で初の脚本を担当(たかはしあつし名義)。他の監督作品に、劇場アニメ『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』(2017年、シンエイ動画制作)がある。

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『七十四秒の旋律と孤独』久永実木彦(東京創元社)

『七十四秒の旋律と孤独』
久永実木彦(ひさなが・みきひこ)

1975年東京都生まれ。46歳。2017年、「七十四秒の旋律と孤独」で第8回創元SF短編賞を受賞し、同作が『行き先は特異点 年刊日本SF傑作選』に収録されデビュー。2018年、「七十四秒の旋律と孤独」をプロローグとする連作〈マ・フ クロニクル〉を、アンソロジー『GENESIS』収録の短編「一万年の午後」を皮切りにスタートし、雑誌掲載された「口風琴」に書き下ろしの三作を加えて、2020年に単行本『七十四秒の旋律と孤独』として刊行。他の作品に「ぴぴぴ・ぴっぴぴ」、10文字ホラー「無口で冷たい君が好き」がある。2019年より、オーディオブック配信サービスのKikubonのウェブサイトにてインターネットラジオ番組「読んで実木彦」を配信中。

『ポストコロナのSF』日本SF作家クラブ編(早川書房)

『ポストコロナのSF』
日本SF作家クラブ(にほんえすえふさっかくらぶ)

1963年、東京都新宿区の台湾料理屋「山珍居」において、石川喬司、川村哲郎、小松左京、斉藤伯好、斎藤守弘、半村良、福島正実、星新一、光瀬龍、森優、矢野徹の十一名で任意団体として発足。当初は会長を置かず、事務局長が代表を務めた(初代事務局長は半村良)。1976年に初代会長に星新一が就任。1970年と2013年に海外ゲストを招聘して「国際SFシンポジウム」を開催。1980年から日本SF大賞を設立。1999年から2009年まで日本SF新人賞を、2006年から2013年までは日本SF評論賞を主催した。2017年、一般社団法人に移行。現在の会長は池澤春菜(第20代)、事務局長は榎木洋子(第25代)。創立58周年。主な編著に『SF入門』(2001年)、『日本SF短篇50:日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー』全5巻(2013年)、『ポストコロナのSF』(2021年)などがある。

『まぜるな危険』高野史緒(早川書房)

『まぜるな危険』
高野史緒(たかの・ふみお)

1966年茨城県生まれ。55歳。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1994年、第6回日本ファンタジーノベル大賞で最終候補作となった『ムジカ・マキーナ』が翌年に刊行されデビュー。1996年に『カント・アンジェリコ』が、2008年には『赤い星』がそれぞれ第17回と第29回の日本SF大賞最終候補となる。2012年、『カラマーゾフの妹』が第58回江戸川乱歩賞を受賞。他の著作に『アイオーン』(2002年)、『翼竜館の宝石商人』(2018年)、『大天使はミモザの香り』(2019年)などがある。またアンソロジー『時間はだれも待ってくれない 21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集』の編纂(2011年)や、ジョン・グリビン著『ビッグバンとインフレーション 世界一短い最新宇宙論入門』の翻訳(2016年)がある。