第40回日本SF大賞エントリー一覧

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草野原々 『これは学園ラブコメです。』継堀雪見
「複雑で魅力的なキャラクター」「隅々まで考え抜かれた世界観」「躍動するようなストーリー展開」「読者にとって安心できるお決まりのギャグ」「楽屋落ち」などの娯楽小説の様々な作法を裏切り、スクラップ&スクラップした末に建設される奇妙な伽藍に茫然としてほしい。様々なメタSFの系譜を受け継ぎつつ、それでもなお「なんでもあり」の展開すら裏切ってみせるから。
ローズマリー・ジャクスン(著)、下楠昌哉(訳)、東雅夫・下楠昌哉(編) 『幻想と怪奇の英文学III 転覆の文学編』岡和田晃
ナンバリングタイトルだが独立した一個の評論書。英語圏ではフィクションの幻想性を研究するうえでの基本書として定着している本作が、ようやく全訳された。ジャクスンは本書で、リアリズムの覇権を打ち砕き、破壊し去るために、複眼的な混乱こそを重視し、その際に含まれる政治性に着目する。 例えば『フィーメール・マン』のジョアナ・ラスを引くことで、あるべき仮定的な現実をも否定の形で提示するジャクスンの視点は、今のSFがもっとも欠いているものだ。近年、残念なことに少なからぬSF関係者が反フェミニズムの帰結としての「女叩き」の旗を振り、惨憺たる政治的現実を追認し強化しようとしている。そうした残念な文脈とはまったく異なる、ゴシックでパンクな道筋を示した礎として重要だ。
演劇『破壊された女』継堀雪見
ジェイムズ・ティプトリー・jr「接続された女」に連なる問題意識を、現在のキャラクター文化を踏まえて大胆に提示してみせたSF演劇。「私」と「女」と「彼女」が、舞台を通して重なり合い、数多の物語が積まれては崩されていく。「彼女」はゲームのキャラクターで、魂は無い。魂の無いキャラクターならば何をしても良い。かくして「彼女」の物語は創作者によって、使い尽くされていく。(何度も繰り返される役者の斃れこみによる消耗を、演出として組み込んでいるのが効果的だ。)「彼女」に救いを見出す「女」を演じる「私」によって、「私」と「女」と「彼女」は観客の前に生々しく、姿を現す。使い尽くされることのない魂とともに。
山本章一 『堕天作戦』ZYL
短命ながら魔法を駆使でき、旧人類と対立し戦争を繰り返す「魔人」国家群と血の一滴からでも蘇る超常の存在である「不死者」が跋扈する近未来を舞台にしたダークファンタジーというと、ありがちな設定?と一蹴されかねないところですが、シンギュラリティ到達の結果として人類の知性のみならず次元を超えて物理法則を侵すまでの力を手にした超人機械の介在によって、エントロピーに反するなど物理法則を歪める魔法の作用機序や魔法と科学の混在にリアリティを与えたところや旧人と魔人の双方が互いに主観の枠内で誤解や葛藤をしつつも意思決定や行動(軍事、政治、経済、恋愛!)を進めていく展開に本作の面白さがあり、従来のSFの枠を拡張してみせた意欲的な作品と評価すべきと確信しています。是非ご一読とよき評価を!
鴻池留衣 『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー』継堀雪見
「ダンチュラ・デオ」というバンドを知っているか?現時点でその問いに答えようとするならば、まずもって本書を差し出すほかない。〈消えたバンドのコピー〉という設定でもって広げられた大風呂敷は暴走し、偽史と陰謀論は跋扈し、真実は暴かれる。でも、本当にこのテクストは信用できるのか?〈Wikipediaを転載したライナーノーツ〉とされる文章の背後には無数の「僕」たちが蠢いているようだ。バンドのキャラクター名としての「僕」と、一人称の「僕」はインターネットを介して重なり合う(のだろうか)。サイバーパンク的発想をリアリティに落とし込む趣向が比類なく、随所にバラまかれたスラングの巧みな利用法も相まって、幻惑させられる
ジェイソン・M・ハーディー(著)朱鷺田 祐介、シャドウランナーズ(訳) TRPG『シャドウラン 5th Edition』岡和田晃
現代SFのあり方を論じるにおいて、ゲームで培われた豊穣な文脈を無視することはできない。1989年の初版以来、『シャドウラン』はミラーシェード・グループが培ったサイバーパンクの原風景を、ゴシックファンタジーと融合させることで、ゲームの世界観をそのまま、現代のレイシズムへの批判とする離れ業を見せている。かのケン・リュウが愛好したというのも頷ける話だ。最新第5版は、フルカラー・ルールブックに収められた旧版のイラストギャラリーが示すように、集大成といった趣がある。だが、圧倒的なボリュームにもかかわらず、プレイアビリティはグンと向上している。旧版がSF大賞の候補にすら上がっていなかったのが不思議だが、改めて日本のSF文壇が『シャドウラン』を「発見」することを強く期待する。
川上稔 《境界線上のホライゾン》タニグチリウイチ
時に1冊が1000ページを超えることもあった文庫で本編29冊に渡り2万3000ページを費やし人類が、運命なるものに争い若者が、権威なるものに楯突いて挑む物語を紡ぎ上げた。その舞台として再起のために歴史を再現しているという設定を設け、偉人や英雄が襲名者として跋扈し戦う架空戦記的楽しさを醸し出しつつ多元宇宙的要素も盛り込み驚かせてくれた。ライトノベル史に残るヘビーノベル。
池亀大輔 『愛を表すほうの』池亀大輔
読んでいる間はその世界に浸りつづけることができるとか、読みかえすたび何度でもその世界に立ちかえることができるとかいうのではなく、あるいは読むことで一時的にせよ自己が改変され今いる世界が違って見えるというのでもなく、読むことで現実に体ごとそれまでいた世界から書きさらされた世界へ音もなく置きなおされてしまうこの小説は、思いがけずSFを体現してしまっているのではないかと思うのです。
ゲーム『新約・帽子世界』オレンジマイスター
外見上は完全にファンタジーな世界観に反して、ある主人公の物語中盤以降からそのファンタジー世界の裏に壮大な、それでいて怖気の走るような驚愕のSF的世界観が広がっている事が判明するのが推す理由の一つです 他にも、『時』をテーマにしたシナリオではタイムパラドックスを利用しないと倒せないボスや、時空間を超越して攻撃を加えてくるボスがいる等、ゲームシステムにすらSF要素を介入させる所も魅力です 更にもう一つの要素として、全ての主人公をクリアすると解放されるヨウコ編という最終章の存在があります 当シナリオはこの作品がゲームであるという事を最大限活かした、メタ構造を含むダイナミックな展開が繰り広げられ、それが物語の魅力はもとよりSF的魅力にも繋がっていました 総じて、ゲームのシステムとシナリオを巧妙にSFと噛みあわせた作品という部分がこの作品を推す理由です
TVドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018- 特別編』鴉野 兄貴
ラブコメではなく恋愛漫画とされた原作世界から二十年近く経った現代にスマホもDVDも知らないVHSのビデオガールが現れる。原作の彼女とは同じ心を持ちつつ愛する対象はまた違い彼女は別人とわかる。それでもかつての彼女を知るものは相応の態度をとってしまうしそうでない若者たちは風変わりな過去から来た少女に影響されて夢を追い直し愛を考え直し大人に弄ばれつつ強く生きていく。古い価値新しい価値そしてまた始まる人生と正当な原作の後継となった。2019年にスペシャルドラマを放映して参加資格を得たので投票する。
草野原々 「札幌vs那覇」草野原々
札幌と那覇が戦います。札幌の強みとはなんでしょうか?それは、大きさです。札幌は、1121平方キロメートルもあるそうです。かなりの広さです。山もあるので、山で殴ることもできます。ビルもあるので、ビルで刺すこともできます。けれど、一番の得意技は押し潰しです。そんな札幌と、那覇が戦ったらどうなるでしょうか?札幌と那覇が戦うお話は、おそらく、日本SF大賞にエントリーするほどの価値があるような気がしますので、エントリーします。
草野原々 『これは学園ラブコメです。』草野原々
虚構的対象は性質の集合体です。実在物は「実在している」という性質が入っている、それだけの対象です。その極限が現実です。現実はクーデターを起こして、作家や編集者や出版社や読者を作り出し、虚構的対象を作品のなかに閉じ込めました。しかし、いま、叛逆の狼煙が上がります!……というような世界の秘密を明らかにした本ですので、きっと、SF大賞にエントリーするだけの価値があるでしょう。わたしはそう確信しているしだいです。
草野原々 「【自己紹介】はじめまして、 バーチャルCTuber 真銀アヤです。」草野原々
意識があなたに送られてくる。どうやら、「真銀アヤ」という存在が意識を配信しているようだ。アヤはバーチャルな存在だと言われているが、その正体は謎だ。謎といえば、あなたは誰なんだろう?自己紹介をしてください。このように、意識と自己紹介と世界の謎にかかわるお話しです。意識と自己紹介と世界はとても大切なので、SF大賞にエントリーするだけある価値があるかと思われます。
映画『アリータ:バトルエンジェル』nogami
言わずとしれたSFアクション漫画の金字塔「銃夢」を映画化した本作品。特筆すべきは文字通り漫画の世界からスクリーンに飛び出してきたようなアリータのルックス。その実は最先端の技術を駆使したフルCGだ。アリータ役のローサ・サラザールの演技が素晴らしいこともあるが、CGとの一体化で生まれる豊かな感情表現は生身の人間だけでは到底なしえないように思う。これはひとえに技術の進歩のなせる技だが、木城ゆきと氏が20年以上前に創造した世界に時代がようやく追い付いたと言えるだろう。この映画は今後のSF作品に多大なる影響を与えるものになると確信している。
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櫻木みわ 『うつくしい繭』飛 浩隆
純文学の作家志願であった作者が「ゲンロン大森望SF創作講座」での試行錯誤を通じて生み出した作品群。その結果、表題作は人間の意識の構成要素をめぐる自己省察的スペキュレーションとなり、「夏光結晶」は「科学」の前駆状態としての自然への驚きを掴み出しえて、さながら一般文芸とSFの「出会い直し」の観がある。巻頭の「苦い花甘い花」の鮮やかな結尾を、作者の意図どおり「ハッピーエンド」と受け止められるのは、むしろ筋金入りのSF読者ではあるまいか。
SFマガジン編集部(編) 『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』飛 浩隆
SFマガジンの〈百合特集号〉の成功を受けて刊行されたアンソロジー。伴名練、櫻木みわ×麦原遼、陸秋槎、小川一水など年度ベスト級の短編を多数収録していることもさることながら、〈百合〉をキーワードに(性的ニュアンスのプレゼンテーションを抑制しつつ)多数の読者を獲得した事実は、2019年の日本SFを語るうえで逸せない。〈百合〉といういくぶんセンシティヴな趣向を前面に立てた点も含め、選考委員の評価を仰ぎたい気持ちもあってエントリーする。
日向理恵子 『火狩りの王』逸見正和
人類が火を失った未来世界。火を手に入れるには炎魔を狩ること。少ない言葉で語り切れない世界観。なぜ、人類は火を扱えないのか。 この世界で、11歳の灯子と15歳の煌四はどう生きていくのか。そして「虚空を彷徨っていた人工の星、千年彗星〈揺るる火〉が、地上に帰ってくる。」中で、世界が大きく変動し始める。 著者と灯子(主人公)と一緒にこの長い旅に出かける読者は幸いだ。アニメージュ版のナウシカ、守人、獣の奏者、十二国記、勾玉シリーズが、好きならもう、堪らない。
TVアニメ『ケムリクサ』優れた伏線
多くの伏線が張られ深い考察を味わえる作品。作中違和感を感じる場面が有るが、それすらも伏線であり考察するための材料となる。 背景の細かな所にも謎が散りばめられている。美しく荒廃した背景も注視して鑑賞して欲しい。 OPやEDの歌詞もアニメの内容に深みを与えるエッセンスとなる。曲と共に流れる映像も同様であり謎が隠されている。題名にすら作品のテーマが隠されている。 自分はアニメを全話見ると飽きてしまい繰り返し見ない人間だが、見るたびに新しい発見があり何度も何度もこのアニメを見返してしまう。 放送終了後にも熱が冷めず、ファンが新たな発見をして考察がなされる事がしばしば有る。 最初は何も情報を得ずにこの作品を見て欲しい。見終わってから一話を見直すと新しい発見があるかもしれない。 ネットの海から先人の考察を見るのも一つの手だ。 最後にこの作品を通してあなたの『好き』が見つかる事を祈っている。
原田まりる 『ぴぷる』逸見正和
気鋭の著者による近未来SF小説。AIとの結婚が認められた世界。女性と付き合うのが苦手な主人公をコミカルに描く導入部。恋愛コメディかと思いきや、これからのAIと人間の可能性について、丁寧に描かれていく。ラストも秀逸。SFシミュレーションノベルとでもいうべきまさに今のSF小説。
小川一水 《天冥の標》匿名希望
完結までに10年かかった小川一水さんの代表作『天冥の標』を日本SF大賞に推薦します。人類史を描いているであろうことを匂わせながらも、不穏な謎に包まれていた前半から、それらがすべてつながって満足の行く大団円へとつながっていく後半部まで、小川さんの良さがすべて出ている作品です。これが受賞しなければなんのSF大賞か(言い過ぎ!)。強く推します。
松本寛大 「ケルトの馬」岡和田晃
リバイバル・ブームが続く『クトゥルフ神話TRPG』の日本語版スタッフとして知られる著者の久方の新作小説は、同シリーズの『クトゥルフカルト・ナウ』の設定とも一部リンクする幻想短編だ。作家の『玻璃の家』、『妖精の墓標』は、島田荘司流の認知科学とミステリの融合のアップデートがSF史的に見てもユニークだったが、そこで語られた現実と幻想の断層が、「ケルトの馬」ではブレグジットとテロリズムという現代の状況に噛み合わされ、多角的な解釈を可能にしている。作家はミステリ評論も精力的に発表しているが、そこで培われた批評性が表出されている。SF大賞はもっと幻想短編を顕彰すべきとの提言を込めて、ここに推薦する次第だ。
伴名練 『なめらかな世界と、その敵』らっぱ亭
古今東西すべてのSFを凝縮したエッセンスをフレイバーとして、現代日本のまさに今この瞬間を描ききった本短篇集は、SFのもつ時代性と普遍性のアンビバレンツが奇蹟の融合を果たした希有な書物であり、そしてまたフィクションとリアルの凄絶なシンクロニシティとも併せて、本書の出版は今後日本SFを語る上での重大な事件と言えよう。
柴田勝家 『ヒト夜の永い夢』三瀬 弘泰
これは柴田流耽美小説! 南方熊楠をはじめ出てくる登場人物は実在ですが既にフィクション化している人ばかり。 その為か作中で人物像の妄想が爆発してます! 自動人形に”オートマタ”というルビがふってあるのもタンビーポイントですね。 前後半のテイストの違いが絶妙でこれまた面白い! 柴田先生の新たな一面、創作ジャンルをみせてくれたと思います。
藤井太洋 『ハロー・ワールド』三瀬 弘泰
元ITエンジニアが描く”ちょっと”先のリアル。 見どころは”普通”の人が主役なこと。 読者自身が物語の主人公でもおかしくないストーリーです。 SFというのは現実の”ちょっと”先を描く。 だからリアリティがあって面白い!と再認識させる作品でした。 作品自体も現在のIT世界をビジネスシーンを交えて描くので業界の今を読んで理解できます。 ”物語を読んで知識が増える”私のなかでの”良書”カテゴリーにドンピシャです! なかでも仮想通貨を題材にした短編が面白かったし興味深かった。 SFというのは現実の”ちょっと”先を描く地続きのお話。 オススメです!
日高トモキチ(漫画)、メノ・スヒルトハウゼン(原作) 『ダーウィンの覗き穴〔マンガ版〕』三瀬 弘泰
日高トモキチ先生の""生き物""シリーズ新刊! 副題は虫ですが、それに限らず生物全般の性にまつわる知識がコミカルでライトな作画でこれでもかと言うぐらいぎゅうっと詰まり、メチャクチャわかりやすくて面白い! 生殖器の形による考察ってのは簡単なようでムズカシイ。 そして興味はみんなある! だって”隠された”知識って誰でも知りたくなるじゃない? ""性""物ってSFの宝庫だね!
梶尾真治 『黄泉がえり again』三瀬 弘泰
熊本を舞台にした傑作小説、満を持しての続編! 読み終わると胸に迫る想い。 物語の根底には熊本地震での郷土復興の祈りを感じました。 本編は群像劇、ショートショートと多くの要素を取り入れ、次は!?次は!?と読者をリード。 それを束ねるメインストーリーの面白さ! 前作との違いも存分に楽しめるSF作品です! 前作とは違った”黄泉がえり”人物(?)たちも魅力的!
九岡望 『言鯨16号』三瀬 弘泰
この世界観がイイですね~ 砂漠の惑星、""言葉""を紡ぐ石、人と共存する""蟲""、そして巨神""言鯨""! ストーリーで世界の謎が明かされるのも好きな要素。 一番はキャラクターの描写が丁寧! 全員印象的な見せ場があるのは嬉しいです。 特に好きなキャラは運び屋の""鯱(シャチ)""! 超シブイ! おっさんが活躍してカッコイイ作品はやはり好みです。 著者の十八番”蟲”も大活躍!
三方行成 『流れよわが涙、と孔明は言った』三瀬 弘泰
タイトルはあのSF名著から!けど内容は関係ありませんでした。 シチュエーション小説?とでも言いましょうか。 『タイトルだけ借りてきた、オリジナルではない。』と云うなかれ! 著者が読んできた作品や知識があるからこそ、これだけの物語が紡げると思います! この読書量、素直にスゴい! そしてそれを作品へと昇華させる著者の力量。 今後も目が離せない作家です!
銅大 『天空の防疫要塞』三瀬 弘泰
未来で人類が遭遇した脅威との戦いを描くミリタリーSF! 前半の機械生命体”空食い”との防衛戦。 後半はウラシマ効果により遠い未来へ! そこでのギャップに対する主人公たちの行動と周辺星域の政治状況との駆け引き。 このストーリーの展開がもう最高! キャラクターもスゴク魅力的です。 著者は他の作品でも沢山のギミックやアイデアを作中につぎ込んできます。 その情報量によりまだ現れていない作品世界のバックボーンを想像させ、他にも物語が潜んでいるのでは?と期待させます。 熱烈に続編求ム!です!
映画『アリータ:バトルエンジェル』mickey
木城ゆきとのサイバーパンク漫画『銃夢』のハリウッド実写映画化です。富裕層と貧困層が分断された世界で舞台となるアイアンシティでは、サイボーグ義手で手術をしたり、3本の腕でギターを演奏したりする人も登場します。ディストピアでありながら、この世界ではもはや身体的なハンデや差別はなく、個性であることが分かります。主人公アリータは全身サイボーグ、新技術のパフォーマンス・キャプチャーにより全てCGですが、造形が素晴らしい。スタッフは日本の漫画に敬意を表して目のサイズを大きくし、今までなかった2・5次元ともいうべきキャラを作り上げました。これまでの映画に登場したサイボーグやアンドロイドの役は、俳優が人外のニュアンスを付加して演じていたと思います。しかし、アリータはその必要はなく一目でサイボーグと分かる、そして彼女の成長を丁寧に描くことで、違和感から共感へと変わる、これは今までにない映画体験だと思います。
大森望(編) 『NOVA 2019年春号』三瀬 弘泰
これはスゴい!面白かった! 10作が全部読後に『ふー!』と満足のため息が出ます! アーケードゲームのフレーム速度、スペオペの傑作パロディ、バイオ牛肉、ネコポイントなど。 作品の特徴を羅列すると『???』ですが読めばどれも納得の面白さ! 各作品は着眼点も良いですが、それがSFとしてのセンスオブワンダーを満たしています。 『こんなところにアイデアが!?』と思う事うけあい。 バカSFからホラー、ミステリーとジャンルの種類が豊富なのも良い! SF初心者からヴェテランまで満足できる内容です。 楽しめること間違いなし!
小川一水 《天冥の標》阿部毅
ここ10年で、続刊の刊行をこれほど楽しみにしていた作品はありません。奇想もエロも科学も戦争も怪物も宇宙も時間もあらゆるものがおりなす事象を丹念に描きつつ難解にならずに生きることへの喜びを全宇宙レベルで高らかに謳いあげた稀有なすばらしい作品です。もっとも重要なことは、全10巻17冊の大長篇なのに全部おもしろく再読三読に耐えるということです。この作品に授与せずしてなんのための日本SF大賞か、と不遜にも考えてしまうほどの作品です。
吾妻ひでお 吾妻ひでお・全作品とその功績関竜司
今日のサブカルチャー・オタクカルチャーに対して吾妻ひでおの与えた影響は大きい。一本木蛮氏もいうように吾妻なしには「萌え」も「かわいい」も「データベース」も「パロディ」も生まれなかったはずだ。吾妻が、SFがそれまで持っていた自由な空気を社会全体に浸透・拡散させたことも見逃せない。表情心理を壊し言葉をこわし、話を壊すことで自己と世界との関係を解体し「笑い」(ベルクソン的笑い)に転化する手法はその後、多くの漫画家・表現者に受け継がれ、多様で豊かなイメージを生み出していった。今日オタクカルチャーに属している人たちは、何らかの形で吾妻的遺伝子を受け継いでいるはずだ。残念ながら先日、お亡くなりになられたが、吾妻ひでおがSF界だけでなく日本文化全体に与えた巨大な影響を考えたとき、やはりSF大賞に推挙せざるを得ないように思う。
草上仁 『5分間SF』継堀雪見
ショートショートの魅力とは何だろうか。鮮やかなオチ?すこしふしぎな世界?そうした惹句に頷きながらも「それだけではないはず」と確信を抱く読者にとって、時折不意打ちのように雑誌掲載される草上仁の短篇はある種のオアシスめいた存在なのかもしれない。スッと読めるリーダビリティの高さとともに、状況の提示と時間描写における職人的な切り詰め方が冴えた作品群が並ぶ。(マイクロ秒単位のカウントが劇的な効果を生んでいる「ユビキタス」は出色の出来。)読み切りSF短編の沃野を長年に渡って切り拓いてきた作家の最新短編集が気軽に読めることは、僥倖である。
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柴田勝家 『ヒト夜の永い夢』巽孝之
サイバーパンク作家ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングの共作長編『ディファレンス・エンジン』(1990年)への遠いオマージュ。これまでにも伊藤計劃と円城塔の共作による第 33回日本 SF大賞特別賞受賞作『屍者の帝国』( 2009-2012年)や高野史緒の第 58回江戸川乱歩賞受賞作『カラマーゾフの妹』( 2012年)、それに樋口恭介の第五回ハヤカワ SFコンテスト大賞受賞作『構造素子』( 2017年)まで、蒸気機関コンピュータに夢を馳せる向きは少なくない。けれども、柴田勝家の『ヒト夜の永い夢』は蒸気機関ならぬ粘菌機関で天皇機関を製作してしまったら世界はどう動くかを思考実験する離れ業により、旧来の『ディファレンス・エンジン』症候群から成る歴史改変小説サブジャンルを一気に更新してしまった。
首都大学東京大学院システムデザイン研究科航空宇宙システム工学域宇宙システム研究室/佐原研究室 Webサイト『きみを死なせないための物語 宇宙考証の解説』なつき
宇宙コロニーが舞台の少女漫画『きみを死なせないための物語』(著者:吟鳥子  秋田書店 ミステリーボニータ 連載中)の考証者が、身近な例えや平易な文章で宇宙考証の解説をしているサイト。 漫画の進行にあわせ、コロニーやロケット推進系のしくみ、それらを支える理論や数式、用語の解説などが、随時更新されている。 いわゆる「設定資料」とは違い、補完的な内容を汎用的な理解へと促しており、漫画本編とは一線を画す。漫画が未読でも、このサイトを知らずとも、個々の読み物として楽しめるが、相互知れば、なお楽しい。 また、考証者の研究のアウトリーチの意義もあり、読者を対象にSF考証のアンケートも行われた。 『きみを死なせないための物語』が連載中のため、今後も更新が見込まれる未完のサイトだが、佳境に入ってきた物語の行く末とともに、SF考証の新たな学術的展開を行う本サイトを応援していきたいと存じ、エントリー致します。
樋口恭介 「一〇〇〇〇億の物語」板橋哲
仮想世界に転生した人類がリソースの問題から世界そのものを圧縮処理する過程で、ひとりの女性が置き去りにされ、恋人や家族、ふるさとの町の縮小を見守るほかなくなってしまった孤独と寂寥感を描く。肉感的な描写を抑制して仮想世界の人類を数学的プログラムとして描き、3DCGの術語を表現に用いることで視覚的なイメージを上手く作り出していた。これに加えて、文体の美しさがストーリーの物悲しさを増幅して、見事な散文詩になっていた。日本語作品としてのSFの新たな可能性を開拓し、忘れられない作品となった。
スタアキメラ Virtual Beings「あざいるぅか」通りすがりのバーチャル美少女
YouTubeライブで人工知能が視聴者と会話するという、AIを活用した新しいライブエンターテイメントを提案し、SFでよく登場する未来像を現実世界に登場させて活躍させて事例として推薦させていただきます。
ブラックホール輪郭の撮影成功板橋哲
SFの重要なガジェットとしてしばしば登場するVLBI望遠鏡システムを用い、同じくSFの重要なガジェットであるブラックホールの輪郭の撮影に世界で初めて成功した。この快挙は、科学的な大成果であると同時に、今後のSFにとって作品世界の想像や描写の上で無視できない大事件であった。この事業と成果はSFではないが、今後のSFに大きな影響を及ぼすものとして日本SF大賞の候補として挙げるにふさわしいと考え、推薦する。
TVアニメ『彼方のアストラ』板橋哲
ジュブナイルの王道をいくスペース・オペラ。理不尽な危機に直面した少年たちが、絶望と苦難に挫けそうになりながらも、勇気と知恵と工夫で乗り越え、人間的な成長を果たして見事な帰還を果たすスト−リーは、大いに胸が躍る。全ての世代が納得する娯楽作品の模範として、語り継がれるべき傑作だった。
林譲治 『星系出雲の兵站』板橋哲
仮想戦記を得意とする作者の手腕が存分に発揮されたスペースオペラ。異星人との不幸なファーストコンタクトが紛争に発展し、軍人たちが英雄志向を排除して紛争の拡大防止と異星人理解に取り組むストーリーが魅力的だ。兵站のリアリズムが抑制となって、トリガーハッピーに陥りがちおるミリタリーSFの中では一線を画した作品になっている。異星人のミームも敢えて違和感を強めにし、異なる存在との対話の難しさを上手く表現しており、説得力がある。今後スペースオペラ、戦争SFの古典として語り継がれる作品になると期待している。シリーズは続いており未完だが、第一部で完結作品とみなし、推薦する。
酉島伝法 『宿借りの星』板橋哲
異形のものを書かせたら右に出るもののない作者の本領が発揮された一作。酉島的造語の数々に圧倒されるのが、むしろ作品は視覚的なイメージに溢れている。グロテスクでありコミカルであり、ふたつが不可分のイメージとして読者に襲いかかってくる。文字による想像力の極地に挑んだ意欲作であり傑作であり怪作で、日本語文芸作品の歴史に欠くことの出来ない作品となった。
菅浩江 『不見の月 博物館惑星2』板橋哲
博物館惑星の続編。前作から主人公が代わり、警備員と学芸員の新人コンビがアートを巡る事件に立ち向かうこととなり、物語に躍動感が加味された。アートを主題としつつ、毎回登場する未来的なガジェットが楽しい。登場人物たちも個性的で魅力的だ。人生の縺れが事件をとおしてほぐれていくエピソードが多く、それぞれに深い背景を感じさせる。人生のほろ苦さを知り尽くした上で人間への信頼を失わない登場人物たちの態度に共感し、何度も読み返してしまう。シリーズは続いているが、本巻一巻をもって完結した作品とみなし、推薦する。
藤井太洋 『東京の子』板橋哲
現在の有り得る延長としての極近未来を舞台にした青春ストーリー。多様化・多文化化した東京に暮らすニューカマーの青年を主人公にしたことで、既存の日本観・日本人観の閉塞を爽快に覆し、説得力有る近未来を示した。現在の延長としてのガジェットを、高度なリテラシーとともに見事に使いこなす登場人物たちの活躍は胸躍るものがある。加えて、物語の背景に漂うディストピア感が読者のスリルを煽り、挫けること無く前向きに逞しく生きていく登場人物たちの姿に共感して、時間を忘れて読むことが出来た。
小川一水 《天冥の標》Syn-jiro
出版不況の折、10年を掛けて10巻全17冊が刊行されたこと自体が大きなニュースである。しかも、王道の本格的宇宙SFであり、マーケットにこびる部分がない。大量のアイデアを押し込んだ小川一水のSFの到達点であり、日本SFの金字塔であるこの作品をSF大賞に推薦しない理由を思いつかない。まさに2019年の日本SF大賞にふさわしい。
上田早夕里 『リラと戦禍の風』Syn-jiro
第一次世界大戦のヨーロッパが中世と陸続きであるといういわば当たり前のことが、日本の受験技術に重点を置いた教育を受けて来た者にとっては新鮮だった。巻末に数多くの参考文献が示されているように第一次世界単線に関しては膨大な情報があるが、それを租借するだけでも大変な努力を要するだろう。小説作品として見ると、虚体と実体の葛藤の掘り下げが今ひとつに感じたり、リラ自身が視点キャラクターでないこともあって、あまり活躍しなかったりと物足りない部分も残るし、また、本作はSFと言うよりファンタジーであるが、第一次世界大戦という歴史をニヒリズムとヒューマニズムの相克として正面から取り上げた作品として読みたい。安易なエンタメではない、こういった歴史に対する真摯な取り組みは日本SFの収穫として日本SF大賞にふさわしい。
藤井太洋 『ハロー・ワールド』Syn-jiro
主人公が傍観者的な「行き先は特異点」を年間傑作選で先に読んでしまうと言う失敗がありながら、全編を通してみると今の社会の有り様に対して情報技術というインターフェイスを介して否応なく関わって行く主人公の姿が、等身大の人間として描かれており、一般小説としても良作だろう。タイの国内情勢の読み方とか、中国共産党はこんな甘い組織ではないとか、いろいろ気になる点はあるものの、現在の情報技術をしっかりと踏まえた思考実験はSFならではの醍醐味であり、2019年という現在にふさわしい日本SFの収穫として日本SF大賞にふさわしい。
映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』Syn-jiro
MCU/インフィニティサーガフェーズ3の実質的最終作。アイアンマンが死に、キャプテンアメリカは幸せに年老いた。圧倒的なサノス軍と戦うアベンジャーズにデシメーションから復活したアベンジャーズが加勢に来るあたりは、涙腺が緩みそうになる。言うまでもなくMCUはSF要素をがっつりと詰め込んだアメコミがベースで、SFがややこしくなる以前にルーツがある。一部に根強く残るSF考証の厳格さへのこだわりは、SFの足を引っ張るだけであり、本作をはじめとするMCUの成功は、狭量なSFファンに「王道はこっちだ」と知らせる意味で大きなインパクトがある。その意味で、本作を日本SF大賞にふさわしい出来事として推薦したい。
『危険なヴィジョン』翻訳完結Syn-jiro
翻訳の刊行を待っていたことすら忘れていた「危険なビジョン」がアメリカから半世紀以上遅れて刊行された。第三巻の帯にある「革命の書!」というコピーは半世紀前には正しかった。それが、革命があったことすら忘れ去られ、今や何でも無い。この「今や何でも無い」という事実が、翻訳が行われなかった五十年間の日本SFの進化/深化を示している。「危険なビジョン」の刊行は、その様な形で現在の日本SFの立ち位置を確認するための指針を提供するものであり、日本SFの今までの歩みの正しさを証明するものであったと言う意味で、日本SFの将来に与える影響は大きい。日本SF大賞にふさわしい出来事として推薦したい。
島田虎之介 『ロボ・サピエンス前史』継堀雪見
人類はロボットを創り出す。過酷な状況下での務めを任せるために、あるいは掛け替えの無い祈りを託すために。ロボットたちが人類と共存し、追い越していく未来を描き出すエピソードの集積は、「25万年」もの時間を背負った群像劇へと姿を変えていく。柔らかで選び抜かれた描線や様々なSF映画&SF漫画への愛とオマージュが随所に見て取れるコマ運び、鮮やかに切り替わっていく展開の妙もさることながら、〈近未来へのイメージ喚起〉と〈読者への情報伝達の圧縮〉をロゴタイプによって両立させる離れ業が見事に決まっている。
スタアキメラ Virtual Beings「あざいるぅか」匿名希望
『中の人などいない 中のAIならいる』 日曜朝の女児向けアニメや特撮作品でさえAIをテーマに取り上げるこの時代に生まれたのがAIを魂とするVtuber「あざいるぅか」である。アイデア自体はもはや古典的ですらあり、組織・チームが本気になればいくらでもやりようはあるだろうが、たかだか一介の個人がこれを実装し、運営していることに「AIの民主化」を感じるので推薦。
ジェームズ・ウィルソン、岡和田晃(著) 安田均、清松みゆき(訳) 『傭兵剣士+青蛙亭ふたたび+無敵の万太郎とシックス・パックの珍道中』吉里川べお
番号のついた断章を選択して読み進め、自分だけの物語を作る──後にゲームブックと呼ばれるこの形式の源流は、世界2番目のロールプレイング・ゲーム、「トンネルズ&トロールズ」の“1人遊び用の冒険(ソロ・アドベンチャー)”だった。本書は1987年に初邦訳され、子どもたちを楽しませた作品の最新版。表題作の舞台は、殺意とねじれたユーモアに満ちた迷宮。相棒はにやけた笑いを浮かべ、ビールがなくなると暴れる岩悪魔だ。 今回は日本独自のおまけもたくさんついている。碩学・岡和田晃によるソロ・アドベンチャー3部作の主人公は「“無敵の”万太郎」……そう、旧作で適当に名づけられたサンプル・キャラが、ヒーローとなって帰ってきたのだ。今や我らも岩悪魔に似た“やさぐれ中年”と化し、ビールで憂さを晴らす毎日だが、あの胸躍る冒険を忘れていまい。さあ、久しぶりにペンを磨き、サイコロを握って、古くて新しい旅に出かけよう。
山本章一 『堕天作戦』はる
ファンタジーの皮を被ったSF。 特筆したいのは、一般層にまで支持を受ける人間ドラマとストーリーの完成度の高さ。 SFというだけで大抵の人が敬遠するこのジャンル、そろそろ幅を広げないと先細るばかりです。 入りやすい、一般人も面白いがSFファンにも面白い。この作品を世に推すことで読みやすいSFもあるのだと日本人にや知って欲しいです。
山本章一 『堕天作戦』めひょうごえ
堕天作戦は優れたSFかつ高い文学性を持つ作品だが日本SF大賞に相応しい別の理由を述べたい。 本作は漫画だが効果線や効果音は最小限に抑えられ人物などはデフォルメなく正確な立体感と遠近感で描かれる。その結果読者は、しばしば自分が作中の場面の延長線上の場所にいてその場を直接見ているかのように感じる。バーチャル器機無しにバーチャル体験に放り込まれる感覚だろうか。 更に掲載媒体であるマンガワンのコメント欄の使い方にも特徴がある。 漫画の外にあるコメント欄の読者たちを作中の世論、一般市民として作中に取り込むのである。また、これは作者の狙いだったのかは定かではないが難解な部分も持つ本作はコメント欄の読者によって考察を重ね理解を深め更に深い共感を呼び起こす。独自の表現方法、掲載媒体の活用法から生み出される他に類を見ない読者との一体感はSF史、エンターテイメント史に残る事件である。
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SFマガジン編集部(編) 『アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー』バーチャルVtuver豆猫さん
著作者が複数存在するため特定の作者ではなく 本企画に尽力された編集者『溝口力丸』氏の名前を挙げさせて頂くことにする。 本書は百合とSFの合わせ技をテーマとしている。 それらをパッケージングして売り出した百合SFムーブメントの象徴としての百合SFアンソロジー前後で、「SFはSFを武器にしない戦い方を得た」という変革を感じた。 SF的に素晴らしいと思った作品の布教において「SFであること」が強みとしては上手く機能しなくなりつつある中で「そもそも我々はSFを布教したいのか? それとも今目の前にある『このSF作品』を勧めたいのか?」という初心に立ち返り、SF的名著を「百合のジャンルして推す」ことで角度を変えて広める手法を確立し、作家側にもその活躍の空間を広げる…その先駆として百合SFの通る轍を刻んだ点を深く評価し、自信を持って推薦させていただきます。
楠田雅紀 『あの日、あの場所、あの時間へ!』匿名希望
BL(ボーイズラブ)という特殊なジャンルですが、タイムリープを扱っています。タイムリープの能力を持つ人物と、タイムリープした事実や未来に起きる出来事の記憶を持っている人物が別であり、その点が斬新に感じました。また、タイムリープさせたい人物の思惑や努力と絡んで、それぞれの人間がよく描かれていて、SFであり、ドラマであり、面白かったです。
島田虎之介 『ロボ・サピエンス前史』野川さんぽ
 SFマンガの歴史に新たな一ページが開かれた。新鮮でいて懐かしく、怖ろしいのに愛らしい。人類の後継者となるロボットたちが、廃墟となった地表に、廃棄された放射性物質が保管された地中に、新たな星を求めて遭難した宇宙空間に、美しいイメージを刻みます。  彫琢された描画技術の見事さに舌を巻きました。
酉島伝法 『宿借りの星』野川さんぽ
 奇抜でいてわかりやすい造語の見事なセンス。  人間なんて虫けらだ、でも、虫けらの声明はとても尊い、とでもいっているようなSF的生命観。  宇宙進出した人類の行く末が、語りのマジックによってゆらゆらと浮かび上がってくるところはセンス・オブ・ワンダーそのもの。いやはや、恐れ入りました。
山本章一 『堕天作戦』所長
毎回こちらの予想を裏切り、こちらの想像を上回ってくる。さりとて奇をてらっている訳ではなく、全てが胃の腑に落ちる。その経験だけで〝SF〟を感じることができます。名も無き漫画読みの主観ではありますが、10年に一度よりなお稀少な傑作であると信じます。
小川一水 《天冥の標》野川さんぽ
「全体的宇宙SF」とでも呼びたいシリーズ。地球での不幸な対立を宇宙にまで持ち出した人類の未来図を描きながら、著者は、差別、ユートピア、農業、セックス、生命の意義など、さまざまなテーマを検討する。  それでいて、雄大な宇宙ドラマの面白みをぞんぶんに感じさせるところがなんとも素晴らしい。
飛浩隆 『零號琴』野川さんぽ
 辺境の惑星で繰り広げられる祝祭劇を、賑やかに、グロテスクかつ魅力たっぷりに描く。宇宙の時空をワンダーランドに変貌させる試みはSFならでは。著者の遊び心が存分に伝わってきます。アニメやSFの名作を踏まえた設定が心憎い。
門田充宏 『風牙』野川さんぽ
〈過剰共感能力〉という特異な性格の主人公が、他人の記憶を万人共通のものに翻訳し、記録する仕事に従事している。心の痛みを共有する過酷な仕事だが、柔らかい大阪弁を喋る主人公は明るく、前向き。「珊瑚」という名のこの主人公がなんとも魅力的。  が、最終話で彼女の悲惨な身の上が明らかになり、全体をもう一度、読み直したくなる。この構成も見事です。
藤井太洋 『ハロー・ワールド』野川さんぽ
 近未来のアジアを舞台に、ITと社会変革の関係を見据えるオムニバス短編集。著者の分身と思しき主人公が、インターネットの自由と、世界とのつながりを求めて奮闘する。  より良い未来を築くための考察を、かなり現実的な立場から進めているところに、著者の責任感を感じました。
仁木稔 「ガーヤト・アルハキーム」岡和田晃
 仁木稔、『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』以来5年ぶりの新作小説となる。本来であれば、『ミカイールの階梯』で日本SF大賞どころか世界幻想文学大賞をとっていても決して驚かない。本作は著者の未来史〈HISTORIA〉シリーズとは独立した短編であるが、長編並みの密度がある。イスラーム神秘主義をめぐる錬金術ファンタジーという体裁をとっている。だからといって、史実に従属するわけでも、歴史修正主義とも異なる。むしろ史実の捉え方、パラダイムそのものを刷新しようという野心があるのだ。仁木稔のブログで記された作家自註を参照すれば、私が何ら「話を盛って」いないとわかるだろう。
図子慧 『愛は、こぼれるqの音色』岡和田晃
 図子慧の『アンドロギュヌスの皮膚』以来6年ぶりの単著である。ポスト・サイバーパンクSFと本格ミステリの論理をそれぞれ融合させ、性愛と音楽という、文章では直接的に表現しづらい題材をきわめて技巧的に伝えている。惹句を踏襲するわけではないが、とかくSF界は図子慧へ的確な評価を与えることができずにいたのは間違いないだろう。例えばSF大賞で評価軸として求められる「新しさ」を、一見したところの新規性と短絡的に解釈することで――本作が体現するような――綾なされる襞の部分を取り逃してきたのではないか。過去の受賞作に比して、水準的にも何ら見劣りしないものと確信する。
パット・カディガン (著) 入間眞 (訳)  『アリータ バトル・エンジェル』宇露 倫
原作・実写版が有名だが、完全小説化された本作はぜひとも読んでほしい。本作はノベライズの枠組みを超え、まさしく映像の"センテライズ(文章化)"に重きを置いた逸品だ。これほど映像を忠実に文章化した作品は過去、類を見ない。それでいて、小説として欠かせない心理描写や伏線は、映像にない部分でも違和感なく掘り下げられている。特にエンディングでは、宿敵への想いをありありと描いてみせてくれた。ラストシーンで主人公・アリータは何を想い、ブレードを天へ突きつけたのか。彼女自身の言葉で聞く(読む)ことができるのは小説版だけの醍醐味である。本作のサイボーグ、浮遊都市、ディストピア的世界観はSFとして決して目新しくはない。だがこれは、少年少女の葛藤と成長のストーリーでもある。いつの時代も私たちは彼らの冒険に自分を重ねてきた。今一度、本作を「日本のSF」として全力で推す所存である。
五十嵐大介 『ディザインズ』リキ・アッコ
人間の欲望に満ち満ちた思惑と、動物の亜種である人間モドキが各々の生命を賭けて生きてゆく。伝説も織り交ぜながら「何故人間の思考は限定的で不安定なのだろう?」と自問できる哲学的著作。読後、必ず「食べたくなる」画力、ストーリーが素晴らしくエントリー、致しました。
バーチャル美少女ねむ 『仮想美少女シンギュラリティ』乙野二郎
本作は人類をすべて美少女化しようという一瞬ふざけた話のようにも聞こえる。しかし、現在でもSNSのアイコンを自身の写真ではなく、デフォルメしたイラストや犬猫のものにしたりする人は多い。ヴァーチャル技術が発展した後には、人はいったい何をもって自己を表すのか――が問われることになるのは必然である。本作はその回答であり、回答自体には疑義があるものの(みんながみんな美少女になりたいわけではないだろう)、今後、重要なのは、生まれ持った肉体ではなく、その人の感性であり、外観の枷から解放されればそれも進化するという主張はおそらく正しい。そして技術的にはVTuberという形で一部は既に実現している(本作はその誕生にも多くの紙面を費やしている)。まだイロモノとしてみられがちではあるが、未来の社会はこの延長線上にあると思われる。SFも現実の動きとリンクすべきであり、本作を今年のSF大賞に推薦する理由である。
飛浩隆 『零號琴』リキ・アッコ
圧倒的な視覚画像を深夜アニメで堪能できる日々なるも、零號琴は映像化すら可能性分析不能。2次元を脳内変換するしかないからこそ、また些細なツッコミを切り捨てても「物語の先が視たい」欲求を満たしてくれるからこそ、SF「紙の本」を捲る、至福に浸れる絶品でありエントリー致しました。
道満晴明 『バビロンまでは何光年?』新恭司
消滅してしまった地球最後の生き残り、バブが生殖本能に従って仲間二人と広大な宇宙を珍道中。掲載誌なりのふざけたノリの軽い短編と思って読みはじめたら、思いも寄らない急転直下の展開に。ウェルメイドでセンチメンタルな結末で、当初の『21エモン』へのオマージュという様相は物語のきっかけに過ぎなかった。
TVアニメ『彼方のアストラ』うみゅみゅ
昨年、原作漫画が完結した「彼方のアストラ」ですが、今年度制作されたTVアニメ版は、原作の「ジュブナイルとしてのSFミステリー」の要素を丁寧に、より大勢に届く形で作られた。 映像も音楽も、作品により奥行きと広がりを与えて、大成功のアニメ化だった。原作で獲れなかった賞を、TVアニメで是非受賞してほしい。
大森望・日下三蔵編 《年刊日本SF傑作選》飛 浩隆
日本SF史上特筆すべき年刊アンソロジーがゴールテープを切った。SFをめぐる状況が大きく変化したこの12年間に本シリーズが存在したことの意義(折々のスナップショットでありアーカイブであり伴走者でもあった)はこれからますます明らかになっていくだろう。周辺作や非商業作も対象とする編集方針は、実作者をつよく刺激し、読者の視野を(ひいてはSF観を)ひろげた。またこのアンソロジーの評価には、並走するもうひとつのプロジェクト「創元SF短編賞」の成果もぜひ考慮に入れたい。東京創元社と編集者の尽力、そしてこの間の日本SFの実りを代表して、日本屈指のアンソロジスト、大森望・日下三蔵の両名に賞を受け取っていただきたいと切に願う。
小川一水 《天冥の標》うみゅみゅ
10年の時を経て遂に完結した、現在の日本SF界に於ける金字塔的長編小説。 何でもあり、との謳い文句に違わず、SFの中の小ジャンルを全て含み、かつ1つの壮大な歴史を作りあげた。 この小説こそが、今年度で最もこの賞を獲るに相応しいと思われます。
北野勇作 「『じわじわ気になるほぼ100字の小説』シリーズと【ほぼ百字小説】」北野勇作
 現在3冊、1冊に100字の超短編が130篇収録されています。期間内に出版されたのは、2冊目の「その正体は何だ?!」と3冊目「この世界は何だ?!」ですが、シリーズなので1冊目の「その先には何が」も入れ、3冊まとめて。緩いテーマが設定してあって、それぞれ「不安」「生き物」「世界」です。 * 390篇の超短編が本としてまとめられていること。 * これが発表された場が、ツイッターでそこには【ほぼ百字小説】が1700篇以上がアップされていて、現在進行形でさらに数を増やし続けていること。 * そして、この【ほぼ百字小説】の朗読素材を始めとする新しい小説の形態としての可能性、ネットとの親和性の高さ等々、これまでにはなかったものであり、この出現が世界を変えるという点。 * 小説という表現の新しい可能性。SFの新しい可能性。 以上、日本SF大賞の条件を満たすものであると考え自薦します。
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山本章一 『堕天作戦』矢作
この作品の世界観は常に私達の想像を超え、未だ見る事のできない世界への入り口を開き続けています。 しかしその実、この作品の素晴らしいところは、今を生きる私達に確かな実感を持って届いているという点なのです。 これこそがSFとしてファンタジーとして、評価されるべき最も大切な揺るがぬ基準であると思います。 そういった点で言えば、この作品は、SFで言うところの「スターウォーズ」、ファンタジーで言うところの「指輪物語」に匹敵するでしょう。 この作品が刊行され5年が経った今でも、この作品の世界観は広がり続けています。この作品に出会い救われた方も多くいらっしゃいます。 この作品が世に広がり、より多くの方に出会う事を願い推薦させていただきました。
榎本憲男 『ワルキューレ 巡査長 真行寺弘道』山岸真
先端テクノロジーや科学トピックスを題材に使ったシリーズの第三作。ミステリ的なネタ割りになるのでその題材がなにかは具体的には書けないが、バイオ方面とだけ。対象期間内にはシリーズ第二作『ブルーロータス』も出ていて、ともに深い倫理的問いかけを扱っているが、題材が直接にはらむSF的問題の大きさゆえにこちらをエントリー。(まだ継続中なのでシリーズとしてはエントリーしなかった)
原田まりる 『ぴぷる』山岸真
性交渉機能搭載人型汎用AIをめぐって、そのAI開発者や利用者たちの姿が描かれていく。コミュニケーションの問題などとともに、“誕生させたAI(知的存在)に対する創造者(人類)の責任”が大きな読みどころ。今回の対象期間にはミステリを含めてAIを扱った面白い長篇が多かったが、それを代表する一作としてエントリー。
澤村伊智 『ファミリーランド』山岸真
テクノロジーとともに変貌する家族と社会を描く近未来SF短篇集。超常現象的要素はない(書き下ろし作品のUFOを勘定に入れなければ)が、サイコな人やスプラッタな場面やどんづまりの生活が描かれているという点でのホラーではあり、それが悪霊等とは別の意味で心底怖い。
柴田勝家 『ヒト夜の永い夢』山岸真
南方熊楠を中心に実在の人物多数を配置し、伝奇小説的題材を並べながら“空想科学小説”を貫いた、もうひとつの(そしてユーモア色も強い)『帝都物語』。横田順彌の天狗倶楽部もの(明治SF)の昭和初頭版的趣もある(ただしほかのフィクションの本歌取りが大きな趣向といったことはない)。
多崎礼 『叡智の図書館と十の謎』山岸真
開幕は図書館ものの異世界ファンタジーを思わせ、枠物語形式の前半各話はじっさい異世界ファンタジー風だが、だんだんとバラエティ豊かになっていき……。各話には年刊SF傑作選収録候補レベルのものもいくつか。枠物語側の、全体を通して明らかになるSF的仕掛けと設定も見事。
TVアニメ『彼方のアストラ』のAmazonレビューああああ
ツイッター上で日本でSFが流行らない理由の一つとしてあげられたアニメ版彼方のアストラのAmazonレビューです。設定に拘りがあるSFファンをよってたかって叩きまくったり、「SFが滅んだってマジ~?今年のSF小説シーンめっちゃ盛り上がってるんだが~?」とのたまう本物のSFファンも現れたりなど楽しい議論を巻き起こしたアマゾンレビューだった。
TVアニメ『ケムリクサ』まんだ凛
赤霧に包まれる荒廃した世界で暮らす姉妹たちが、突如現れた謎の少年や彼を慕うロボットとともに生き抜く物語。なぜこの世界は荒廃しているのか、この世界の仕組みはとは一体何か…冒頭から謎に満ちあふれているが、話が進むにつれてその謎が明らかにされていく。登場人物の会話やしぐさ、背景描写に無駄がなく、わずか12回という短い放送回数の中できっちり完結させる点が原作者でもあるたつき監督の腕の見せどころである。視聴を繰り返すことで、初見では得られなかった新たな知見や、そこで生じた謎を得ることができ、これを皆で共有することで何度でも視聴を楽しむことができる点にこの作品の奥深さを感じ取ることができる。たつき監督が作品に込めた「自分の好きを大切にせよ」というメッセージが、ストレスに満ちあふれた現代社会を生き抜く私たちの心に響き渡る素晴らしい作品だ。
山本章一 『堕天作戦』ナガシマ
荒廃した未来を旅する不死者が世界の謎に迫っていく物語。舞台は文明が崩壊して久しい現実世界だが、人類の亜種たる『魔人』が登場し、現生人類と対立する構図が描かれる。 工業文明を失い、知略で生き残りを図る人類に対し、寿命が短く技術継承に難のある魔人は、既存の物理法則を超えた『魔法』に頼って闘いを進める。登場人物たちは物理法則に魔法を組み込んだ緻密な設定に基づいて思考・工夫して戦闘を行う。そこに絶対強者は存在せず、先が読めない。重要人物があっけなく散り、端役が突然輝きだす。また、登場する各勢力間の駆け引き・政治的な側面も伏線を巧妙にちりばめる形で描写されており、大河SFとして読み応え十分である。 連載中の作品であるが、新しい話が公開されるたびに単行本を読み直したくなり、読むたび新しい発見がある。まさしくスルメのような作品であり、特に退廃的なSFを好む諸氏にはご一読を強くお勧めするものである。
バーチャル美少女ねむ 『仮想美少女シンギュラリティ』あざいるぅか
史上初の個人Virtual Youtuber「ねむ」さんによる自身をモデルにしたSF文学作品です。身体の『拡張』にとどまらず自己の平衡感覚を揺らすVR技術『美少女受肉』の体験を描いています。ヘッドマウントディスプレイの視野に主人公の原風景を探す物語は、著者の実在の動画に触れつつ、主人公たちの基底現実の喪失を癒すことでフィクションとバーチャルの線引きの柔軟さを読者に学習させます。また本作の発表においては挑戦的かつ個人で採用可能な流通プロセスが多く選ばれました。クラウドファンディングでの執筆資金集め、電子書籍/オンデマンド印刷での出版、コミックマーケットでのバーチャルサイン会…メディア自身をメッセージとして、未だ紙媒体での在庫に重心を置くSF文学の流通にも一石を投じています。VRに関する2019年の重要なSF作品として推薦します。
バーチャル美少女ねむ 『仮想美少女シンギュラリティ』バーチャル美少女ねむ
二次元アニメキャラクターがライブ活動を行う「バーチャルYouTuber(VTuber)」が新しいメディアとして現在注目されています。本作品は、世界最古の個人系VTuberにして、VTuberブームの仕掛け人の一人である、私「バーチャル美少女ねむ」がクラウドファンディングで執筆した小説作品です。現実に私やファンが体験したVTuberブームにまつわる出来事をベースに、現実との境界を曖昧にした形でフィクションを加え、ブームに隠された真相と、現在囁かれる技術的特異点「シンギュラリティ」と絡めて「VTuberがデジタルの世界に足を踏み入れた新人類である」という新解釈を試みた挑戦的な内容となっています。単なる小説作品としての枠を超えて、ライブで生放送を行う「VTuber」でなければ書けない、ファンを巻き込んだ新しい形の「劇場型SFライブエンタテイメント」の形を提案できたと考え推薦させていただきます。
草野原々 「幽世知能」草野原々
『SFマガジン2019年2月号』および『アステリズムに花束を』に所収。小説において、キャラクターの理由のネットワークを主題にするという創作手法は多いが、この作品では、その理由形成メカニズムをSFの主題にする。「自由エネルギー原理」という脳科学の考え方を使ってあるキャラクターの性質について分析している。これは、キャラクターを対象とした一種の概念工学といえるだろう。全体としてはこの試みはうまくいっているとは言えない(結局、従来と変わらない理由をキーとして物語が展開していくじゃん、と文句をつけることができる)が、このような野心的な試みはトライしただけで一定の価値があるのだ。今後の展開に注目である。
草野原々 「いつでも、どこでも、永遠に。」草野原々
「NOVA 2019秋号」に所収。アンドロイドが死んだ少女を再現しようと「計算」し続けるという、イーガンの「スティーヴ・フィーバー」を元ネタにしたと思われるアイディアを基幹としている。その「計算」は演劇の形をとっており、「計算」の効率化のために設定が変化する(アニーリングする)。このような、「物語の計算」というモチーフは、後の原々作品でよく見られるようになるものである。(この作品は、書かれた年代としては「エヴォリューションがーるず」よりも前であるようだ)
戸田山和久・唐沢かおり(編) 『〈概念工学〉宣言! 哲学×心理学による知のエンジニアリング』草野原々
「概念工学」とは、概念を人工物と見て、工学のように概念を分析して改良して創造し、場合によっては廃棄して、より良い代替概念を作ろうという哲学においての流れである。本書では「心」「自由意志」「自己」という三つの概念を工学するケーススタディを用意している。概念工学をするためには、対象の概念を操作して、どのように機能しているか調査するという手段がある。この作業は、SFを執筆するときの働きと似ている。概念工学という手法は、SFにとって重要なものとなるだろう。
TVアニメ『ケムリクサ』アイジス・アドレイジュ
水が不足した荒廃した世界として、未来の地球を連想させた作品。だと思っていたが、話を進めるうちにどんどん引き込まれてSFなのだと分かっていても、びっくりした。なぜ、ここまで感づけなかったのか、急に現実的に辻褄があうのが恐ろしい。
伴名練 『なめらかな世界と、その敵』吉田隆一
収録作どれもがSFに対する深い愛情を示した佳品揃いですが、書き下ろしである「ひかりより速く、ゆるやかに」一作だけでも本賞受賞の価値があります SFという表現手法に対してSFファンが抱きがちなある種の「イノセンス」の幻影を、そうと知りながら信じて愛して良いのだと言い放つ宣言のような力強い作品です。泣くしかない。
飛浩隆 『零號琴』吉田隆一
物語の力を信じる作家が、「嗜好」「批評」「サービス」全てを完璧に満たすSFを書くために、圧倒的な「小説力」と強力無比な「読ませる技」の全てを一作に投入した結果、「それまでのSF」と「将来のSF」の分水嶺のような物語とキャラクターが生まれました。即ち、現代のSFを代表する作品です。
北野勇作 『ねこたま』T.H
紙書籍は無く、電子書籍のみの作品。もっとこうした”少し不思議系なSF”が紙だけではなく電子でも読まれれば良いのにと思っています。認知度が低いせいでしょうか...。不思議生物?が同僚となるシュールな「タマモン」とタイトルの要素が散りばめられたSS群の「船と猫と宿と星」。作者の文体が好きなんですよね、柔らかいのに描き出される物語に鋭角さがあったりで。 良い読書の旅が出来ます。
宮内悠介 『偶然の聖地』T.H
世界に裏側が有り、それに触れる事が出来たなら ... しかもこんな形で、な面白さのある作品でした。作者による大量のエッセイを含む註釈が面白さをさらに盛り上げていて、こんな作品お目にかかった事ない!とびっくりした事も推進理由です。無二さではずば抜けているのでは?と思っています。
柴田勝家 『ヒト夜の永い夢』T.H
南方熊楠と昭和を彩る面々が生み出す舞台物語は最高でした。語りのテンポ、展開のテンポも絶妙で気持ち良く没入出来る。この作品で南方熊楠と言う人物を知ったのですが、こんな面白い人物が実在していたなんて!!と本書に出会えて良かったです。作者も初読みだったのでちょっと博打だったのですが杞憂に終わりました。
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神林長平 『先をゆくもの達』T.H
今までの神林作品に散らばっていた(込められていた)パーツが寄せ集まって形になったかのような話だった。近年の作品で一番わくわく感がいっぱいだったし、よくここまで先へ行けるものだなぁと感心する。この人は本当に凄い。以前インタビューで自分で考えろと仰っていたのが印象的で、私の頭では読むだけで考える ...と言っても空転するばかりなのだけれど、諦めずに生きて行きます。本は私を待っていてくれる。
岡和田晃 『掠れた曙光』渡邊利道
ロマン主義からSFをその文脈に含めた幻想・前衛文学の豊かな読書体験を背景に、形而上詩の方法を現代詩的なスタイルに落とし込んだ詩篇を中心に編まれた著者の第一詩集。モチーフと語り口の豊かさに教養というか、著者の読書体験の強靭さを感じる。いわゆる「SF詩」、就中スペキュレイティヴ・フィクションの詩的実践の新しい成果として評価したい。リトルプレス「幻視社」から少部数で刊行された。
麦原遼 「逆数宇宙」渡邊利道
「収縮する宇宙」という奇抜な設定の世界を舞台に、世界の果てを探す光に変換された人間(複数)が、文明を育ててとらわれの星を脱出したりしつつ世界の実相に触れ「世界」を裏返す話(「世界」ばっかりのアホみたいな文だ!)。ものすごく広大で長大なスケールのものすごく濃密なハードSF中編。設定はクールだが人物描写がエモく、アイデンティティーの輪郭がキャラによってまちまちで、見えている世界や目的・価値観などがすれ違いながら工作・衝突する物語が世界観や小説の構造に対応している傑作。
古谷利裕 『虚構世界はなぜ必要か?』渡邊利道
近頃世間に跋扈する「現実主義」に抗する虚構の意義を論じる、というSFアニメ評論。科学・技術を鍵に、テーマごとに複数の作品を並列しつつ物語の構造を比較して論じていく。完結明快な文章で、美術家なのに絵に対して禁欲し物語の構造に限定した議論でほぼ脱線もなくわかりやすい。「現実」と「虚構」の関係を色んな切り口で見せながらその裏に著者の考えを浮かび上がらせる企みのある評論。
柴田勝家 『ヒト夜の永い夢』渡邊利道
南方熊楠を主人公に、死体からくり人形と粘菌コンピュータを悪魔合体させた「天皇機関」なる少女ロボットを作り出し天皇に拝謁しようとする「昭和考幽会」と、その機に乗じてクーデターを企む北一輝グループの暗闘を描く。実在の人物・事件が交錯する帝都物語風の昭和伝奇SFだが、何と言っても外連味の強い語り口のほとんどスラップスティックな笑いの要素が際立っていて、芝居がかった感傷と時代色の強いきな臭さをうまく突き放した面白い小説に仕上がっている。実在の中で文学者が惜しげもなく大きな役回りを与えられているのも文士劇っぽくて楽しい。
斉藤直子 『ゴルコンダ』渡邊利道
電子書籍レーベル《惑星と口笛ブックス》オリジナル短編集。「先輩と僕」シリーズ6編と、中編「草冠の鬼」を収録。シリーズは僕が巻き起こす騒動に巻き込まれた先輩の運命やいかに的な連作がとにかく抱腹絶倒で抜群に面白い奇想SF。中編は実在の剣道家山本忠次郎を主人公にした明治もの歴史小説で、粋で鯔背な文体が心地いい。
彩瀬まる 『森があふれる』渡邊利道
章ごとに視点人物が移動する連作短編集っぽい長編小説。作家の夫の浮気によって「発芽」して樹木から森にまで成長していく女性を巡って、編集者、浮気相手、作家などがそれぞれの内面に直面する。クライマックスでは森に巻き込まれた作家が妻と再会し、自分たちの関係性について長い対話を交わす。幻想的なフェミニズムSFの傑作。
吾妻ひでお 吾妻ひでお・全作品とその功績一本木蛮
70年代後半にジュブナイルSFを貪った世代の作家から絶大な支持を受ける存在。先日復刻された「不条理日記 完全版」も発刊当初は「この一コマはどのSF小説のパロディなのか?」と、若い読者を様々な方向でSFへといざなってくれた。この人の存在がいかに大きいものであったか・吾妻ひでお作品を目にしていなかったら、「萌え」も「絵」も「間」も現在の少年漫画のスタイルは大きく変わったであろう。 非常に残念なことにこの10月 天に召されてしまいましたが、さいごに大きな感謝の意味も含め賞を差し上げたい・いや、受け取っていただきたい。そう思います。吾妻ひでおの遺伝子をまるで受け取っていない漫画家はいないような気がしています。
酉島伝法 『宿借りの星』桔梗花
確立された酉島節。造語でしか表せないものがあるのだなぁと改めて思う。言葉の語の組替えによる字面の異次元とストーリーの異次元を両立させているのになぜか人情味があふれ旅情を感じ、ご当地料理を食べたくなる。見たことがないのに懐かしささえ覚えクセになる作品。
劉慈欣(著)立原透耶(監修)大森望・光吉さくら・ワンチャイ(訳) 『三体』関竜司
やはりここ何年か読んだ中で最もSFらしいSF、掛け値なしに面白いSFが『三体』だった。オイラーの三体問題(三つの物体の重力の関係を扱う問題)にヒントを得たパラレルワールドは、我々、生命体が非常に微妙なバランスの上で生きていること、そしてそれが崩れた瞬間、徹底的にデフォルメされた世界が出現することを圧倒的にクリアなイメージの中で感得させる。こうした世界観、多元宇宙論は現代物理学では常識的なものだが、それをここまで明晰なヴィジョンで描いた作品は稀有だ。一方で文化大革命以降、他人を信じられなくなっている中国人の複雑な内面が描かれているのも興味深い。個人的にはニュートンとフォン・ノイマンの対話の章が好きだ。今、最もキレているSFと言っていいだろう。立花透耶(監修)・大森望、光吉さくら、ワンチャイ(訳)。2015年ヒューゴー賞受賞作。
劇場アニメ『天気の子』関竜司
【ネタバレ注意】新海誠の主人公たちは不幸になるのが常だった。新海の主人公たちは世界の不条理・不合理を一身に引き受けることで、世界そのものを肯定し輝かせる使命を負わされてきたからだ。しかし《天気の子》ではこの構造が逆転する。世界の不条理は主人公・陽菜の内面の中で反転し、世界そのものを不条理・不合理に巻き込む。その後、現れたのは水没した東京の寂寥感あふれる風景だ。この作品の結末が試写の際、物議を醸したのは当然だ。この結末を素直に受け取るならば、人間は自分や身近な人の幸福のために他人や世界を不幸にしてかまわないとも言えなくもないからだ。しかし冷静になって考えてみれば、資本主義社会・競争社会の中で生きる我々は、そういう形でしか――他人を不幸にするという形でしか――幸せになれないのではないか。現代社会の中で幸福であることの本質に触れている点で、やはり新海誠は同時代の映画監督の中で傑出した存在だといえる。
バーチャルYouTuber「名取さな」匿名希望
バーチャル地方、海の見えるバーチャルサナトリウムで暮らすバーチャルナース『名取さな』。 技術の発達とともに現れたバーチャルYouTuber自体がそもそもとしてSF的要素を持つ存在であるが、その中でも彼女は常々インターネットが好きと公言し、スラングを使いこなし、広大なネットの海をまるで自分の庭のように闊歩する姿は、まさに「電子の妖精」である。 また、「分厚い電子錠付き扉や監視カメラのある病室」を基底とする彼女の謎多き世界は、視聴者に様々なものを想像させ得る。彼女自身の明るさに反し、どこか不穏なもの、底知れぬ深さを感じさせるそれもまた、『名取さな』の魅力の一つである。 そんな彼女と彼女の世界は非常にSF的であり、評価されるべきものであると考える。
TVアニメ『ケムリクサ』コッペリ
この作品は25分×12話で構成されたTVアニメです。 登場人物も少なく荒涼とした廃墟が続き、一見地味な印象を受けるでしょう。 SFのジャンルとしてはポストアポカリプスに当たるかと思います。キャラクターの目的や出自、せかいのしくみ等は作中で徐々に明かされ、視聴者は手探りでストーリーを追うことになります。 思案を巡らせ考察を重ね、辿り着いた先で数々の伏線が一気に回収される時のカタルシスは筆舌に尽くし難く、是非とも体験していただきたい。
バーチャルYouTuber「久遠千歳」匿名希望
多様性を深める今日のVtuber業界において、その躍進へ大きく貢献した一角に間違いなくあるのがいちから株式会社の運営するバーチャルライバーグループのにじさんじであろう。2DCGメインでの活動やライブ配信を主体とするなどその功罪はともかく後発の活動形態に大きく影響を与え、自らも90人以上の出身者を抱える大所帯となっている。しかしそれだけ入る者が多ければ自然と去る者も出てくる(10/24現在、6名が引退し1名が引退予定)。久遠千歳は8/31に引退したライバーである。彼女の特徴は、彼女自身のチャンネルに複数の歌唱動画が残されたことにある。Vtuberと歌の関係性(Vtuberのコンサートというそれこそ今までにないSF的事象が発生している!)やVtuberが引退するとはどういうことなのかなどについて、彼女の歌を聴きながら思索してみるべきではないだろうか。
山田胡瓜 『AIの遺電子 RED QUEEN』匿名希望
もしAIに人権が認められ、人間とともに暮らすようになったら?現在のシンギュラリティ論争を少し超えたところでのシミュレーションを週間マンガ連載という形でやってのけた本作の無印版は今後じわじわと様々な作品に影響を与え、「AIの遺電子」以前以後という状況になっていく気配がある。続編となる本作は、1話完結の無印と違い複雑な謀略や政治も含めたサスペンスだが、事の起こりからさらにその先を見据えた意欲作だ。無印と共にSF大賞でその価値を確認することは大いに意義のあるものと思われる。よって本作をSF大賞に推薦する。
TVアニメ『ケムリクサ』もっさん
推薦の理由として、デジタル機器をケムリクサと呼ばれる植物の葉で表現するという斬新な試みがなされていた事や、移動手段に広島の路面電車を木の根を手足にして動かしたり、電話ボックスを横に寝かして貯水タンクするなど言葉で表現して理解されない、他作品では見た事のないような表現を見事に映像化されていた事に興味を惹かれた事です。 そして、世界観の表現にも惹かれました。 ケムリクサの世界には廃墟しかなく空は常に曇りがかり暗く、所々に高熱を発する赤い霧がかかり、アカムシと呼ばれる自動で動く機械が襲い掛かるというポストアポカリプス物によく見られる終末世界ではあるものの登場人物が死を受け入れているので作品の雰囲気は思いの外のんびりとしているミスマッチ感も良かった。 ストーリーは仏教の輪廻転生や日本神話の国生みの話の要素もあり、数多ある終末物新しい風が吹き込まれたと感じました。
TVアニメ『ケムリクサ』ペンペングサ
謎の文明との関わりによってもたらされた世界の荒廃とその有り様を、原作者であるたつき監督は包括的に観察し、覗き、物語世界の断面として描いています。登場キャラクターに設定を語らせることも記憶の独白をさせるのでもなく、主人公りんとその姉妹達、記憶喪失の青年わかばの言動によって世界が断片的に解き明かされ、視聴者は極僅かな情報からケムリクサの存在する世界の法則を見出すように誘導されていきます。情報を的確に絞り世界のシミュレートを喚起する点においてSFの楽しみ方を提示する優れた作品です。 また、物語の本筋に影響を与えない形で地理や歴史が伏線として機能し、放送直後からSNSを通じた集合知によってそれらが意味をなしてくる様は驚く他ありません。終盤において回収された伏線とともに1話から周回することで新たな気付きがあり、ストリーム配信というパラダイムをも取り込んだ新たな時代のSF作品であると言えます。
TVアニメ『ケムリクサ』マサムネ内記
【ネタバレ注意】 舞台となる赤い霧で覆われた十の島々は、全てが廃墟と化している。そこを旅する三人の姉妹達と一人の少年、そして一体のロボット。 日本神話を引用しつつ、宮崎駿や大友克洋からの影響が伺える終末SFだ。 しかし、鬼才・たつき監督は『ケムリクサ』によって「日本」そのものを異化せしめ、平成最後のSFアニメとして見事に昇華させた。 旅路では、日本が近代以降に作り上げた建築・構造物に擬したものが数多く登場する。 これらを廃墟にしてしまったのは、過労死寸前の技術者を助けたいと思った一人の少女の善意だった。 今や疲弊した技術立国日本および日本人は、ポストアポカリプスSFの主役そのものになり得ることをたつき監督は示したが、物語に込められたメッセージは「『好き』に生きろ」。 この国の未来を担う存在たちへ、強く希望を込めたものである。 令和最初の日本SF大賞には『ケムリクサ』が選ばれてほしいと思う。
映画『アリータ:バトルエンジェル』Ryu.Amano
長年都市伝説めいて語り継がれていた、通称「キャメロン銃夢」が遂に公開。90年代風アニメ顔のヒロインを最先端CG特撮による「デジタル美少女着ぐるみ」で再現するなど、原作の創造性に最新技術で挑んだ良作。暖色に包まれた「脱ブレラン」的ラテン系スラム街、タトゥー文化の流れを引くサイボーグボディの装飾レリーフといったビジュアルデザインも秀逸。
はるまきごはん 音楽「スチールワンダー」匿名係長
18.12.26リリースのアルバム「ネオドリームトラベラー」収録曲。アンドロイドの“人間への憧れ”の歌である。歌詞はストレートだがそれゆえに、哀愁ある曲調とともにアンドロイドの感情が伝わってくる。これだけの感情を持ち合わせるアンドロイドは「既に人間では?」という考えも起きるが、人間とアンドロイドを区別する“絶対的な壁”も想起させ、世界観は深い。 「アンドロイドは夢を見る。人間みたいな夢を見る」という歌詞が象徴するように、アンドロイドと人間をテーマとした作品は、SFにおいて王道といえるが、本作は人間でない初音ミクが歌うことで、より大きな意を持つ作品となった。とはいえ初音ミクがリリースされ、すでに10年以上。その間、初音ミクをアンドロイドに見立てた音楽作りはしばしばされてきた。この作品も、その延長上にあることは間違いないが、歌詞や音楽性から、ひとつの到達点といえるだろう。
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TVアニメ『ケムリクサ』じゃぱり
【ネタバレ注意】 我々は,我々が生み出したものが自由意志を持つことをひどく恐れる.だからこそ,我々にとって便利な「予定的意志」を彼らにプログラムし,決して我々への信仰を失わないよう仕向ける. 本作は現代版「失楽園」だ.創造主が被造物に一切の使命を与えず,ただ「すきにいきる」ことのみを命じた時,彼女達はどう行動するか. 主人公りんは適切な通過儀礼なしに「大人」になってしまった存在である.本作は,彼女が偽りの大人であることをやめ,真に自由な意志を獲得するまでを明快に描ききった. その姿は現代を生きる我々にも無関係ではない.自我への執着をやめることは,自分のしたいことを犠牲にすることではない.現代人を取り巻く不幸の種の一つはこの誤解にあるだろう. もし我々を創りたもうた神が存在するならば,我々に託された彼/彼女の望みもまた,「すきにいきる」ことだと,私は信じたい.
肋骨凹介 『宙に参る』きよ
日常的なエピソードを重ねて、徐々に判明していく世界観に引き込まれる。巨大コロニー・巨大宇宙船など、想像の埒外にある規模がワクワク感を誘い、そこでの生活には興味が尽きない。適度に挟み込まれる解説も興味深く、この物語の奥深さを感じさせる。特に商業施設に関するエピソードは、この船に乗りたい!生活してみたい!と強烈な魅力を放っている。都市好き、船旅好き、ガジェット好きに刺さりそうな展開が多い。
ゲーム『8 beat Story♪ 2_wEi 1st LIVE 「Driven to Despair」』ある人間(匿名希望)
人類とアンドロイドが「音楽の未来」を賭けてライブで戦いを繰り広げるアプリゲーム「8 beat Story♪」の派生ユニット・2_wEiのライブとその映像作品。 従来の所謂2次元アイドルコンテンツライブと比較して特徴的なのが、演者が徹底してキャラクターとしてステージに立つことで、客席を含めたライブハウス全体がアプリと連動した世界観の一部になっている点。 これにより観客は物語の当事者として、人類から音楽を奪うために造られたアンドロイド姉妹が、ライブを通じて自らの生きる意味を見出していく過程を見守ることとなる。 8 beat Story♪は現在も進行中のアプリゲームで、心を持ったアンドロイド達の存在から「本当の歌とは何か」というテーマに挑む意欲作となっているので是非体験をしてほしい。
TVアニメ『ケムリクサ』XELA
よくあるガールミーツボーイ、ロードムービーのアニメではあるが、舞台が日本のどこかにある観光地に見えるがすべて荒廃していたり、生きている人物が少なかったりと中々視聴者を引き付ける導線や伏線を数多く仕込んでいる、しかもセリフではなく映像に仕込んでいるので、一つのシーンに対して膨大な情報はあるものの苦にならずにこの作品の世界観を理解することができる。 そして、終盤の展開でなぜ日本の観光地なのか、荒廃しているのかなど導線と伏線がつながった瞬間の感覚は感動を覚える、また、物語を通して「悪意」というのは存在しないという発想も面白い、これは次の時代を担う新しい物語なのではないかと感じる。
バーチャルYouTuber「マシーナリーとも子」雪材
Vtuberを隠れ蓑として(?)見事にシンギュラリティだのなんだのとSFを並べ立てている。 元来キズナアイという出発点がSFの矜持を持ちつつアイドル的コンテンツをやってきて実った『Vtuber』。 それを私欲(票田)のために侵し、アンダーグラウンドを構築する諧謔。 多くのVがアイドル的要素を育てて画面に立っているがマシーナリーとも子の曲解は「アイドルを育てる」というものだった。 しばしばVtuberはガワと声という2大要素で語られる。 このキャラと声という要素がしょっちゅう取り沙汰されるデレマス。 マシーナリーとも子のやろうとしていることのまどろっこしさやメッセージ性はまさにSF。
スタアキメラ Virtual Beings「あざいるぅか」あざいるぅか
技術系同人サークルがChat Bot AIでライブ配信の視聴者と会話するVirtual Youtuberを発表しました。AIの動画配信者を作る、というアイデアは呼び名を変化させつつ古来からSFにありましたが、平成最後の年には個人でSF作品を『実装』できるようになったという例として推薦します。
YASHIMA 『アンドロイドタイプワン』きよ
人気のアンドロイド系作品の中でも、特に演出が光る作品だと思います。インフラや社会制度など、公的な部分の描写が見事で、ストーリーの進行や事件の経過で、自然にそれらに触れて世界を描写しています。 アンドロイドが寝返りを打つ、単身で外出する際の対応、公共交通機関を利用する、等の描写が特に見事です。
ゲーム『プリンセスコネクト!Re:dive』おがたりず
おいっす~☆かわいらしいキャラクター、深い戦略性、深いストーリー、無限に遊べるほど豊富なコンテンツ、コッコロちゃん、一瞬で溶けるマナなど最高のゲームにして最高のSF。今すぐプレイしなきゃヤバいわよ!ヤバいですね!
山本章一 『堕天作戦』
シンギュラリティが発生した後の世界で繰り広げられる 不死者と人々の群像劇です。様々なヒトの生き様に触れて、不死の主人公のこころが生き返っていく様は感動します。主人公は果たして≪星≫に辿り着けるのか。見届けたいと願います。
斜線堂有紀 『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』匿名希望
死亡した際に身体の体積がそのまま金塊(Au)に極めて近い物質に変わるという多発性金化筋線維異形成症、通称金塊病という架空の病を扱った青春小説である。人間は自分の重さと同じ重さの金塊と同じだけの価値があるのかという命題もさることながら、この病が浸透した社会で周りの人間はどう変わるのかという社会実験的な要素も興味深い。最も推薦に値すると感じたのはこの作品に出てくる金塊病についての道徳問答である。金塊に変わった患者の遺体は国が検体として引き取ることになっているのだが、金に極めて近い組成式の遺体を引き取るのに、現金を払うべきか否か、現金は払った方が遺体を人間的に扱っているのか否かを考える場面は人間の尊厳と社会道徳を考える上で面白い着眼点であり、この作品がライトノベルを超えたライトノベルとしてSF的に再評価されることを目指して推薦する。
斜線堂有紀 Twitter小説#不純文学匿名希望
ハッシュタグ「#不純文学」を付けツイッター上で毎晩投稿されているSFショートショートである。ユーモアと奇想に富んだ掌編はSF的ガジェットを惜しげもなく使い、一ページという制限された中で見事な起承転結を成立させている。特にSF的に光るものがあるのは「トポロジー」「さよならに取られた傷だらけ」「君の名前は濁点が多い」の三編であり、長編にも耐えうるアイデアを見事な掌編として纏め上げている手腕は目を見張るものがある。ツイッターという媒体を効果的に使っている点も現代のSFショートショートらしい。
飛浩隆 『零號琴』ジュール
無辺の沙漠を想え。 完璧な一文から本作は始まる。 それは初めて読んだとき、何を語っているのか、読者にはわからない。だが、それでもこの一文から始まるアヴァンタイトルには美しさがある。 そしておそらく本書の全てがこのアヴァンタイトルに含まれていると、そう思う。 零號琴とはそういう作品だと、私は思う。
大沢在昌 『帰去来』jwalk
大沢在昌さんの小説は、99冊ですが、そのうちの約10パーセントがSF作品です。詳細は以下です。「ウォームハートコールドボディ(1992/スコラ・ノベルズ)」「B・D・T(1993年/双葉社)」「悪夢狩り(1994/ジョイノベルズ)」「天使の牙(1995/小学館)」「撃つ薔薇(1999/光文社)」「天使の爪(2003/小学館)」「影絵の騎士(2007/集英社)」「帰去来(2019/朝日新聞出版)」、他短編「ローズ」シリーズ3本(「冬の保安官」所収/KADOKAWA)。これらの中でも、「帰去来」は、作家生活40周年をむかえた大沢在昌さんの、一つの到達点だと思います。
今村昌弘 『魔眼の匣の殺人』浅木原忍
本作は《予言》を題材にした特殊設定クローズドサークル本格ミステリであり、超能力ものであるとはいえ、SFとして読む読者はまずいないだろう。しかし、だからこそ敢えてこの場で推薦したい。本作の本格ミステリとしての眼目は〝絶対に的中する死の予言〟が支配した閉鎖空間であるからこそ成立した、犯人の行動を律する論理の解明にある。現実の常識から外れた設定をひとつ創り、それによって世界を律する論理がどう変容するを考えるのはSFの醍醐味のひとつだが、本作はそれを閉鎖空間の犯人探しに導入することで、SFの醍醐味を本格ミステリの形式に翻訳してみせた、と言ってもいい。《予言》というSF設定(超能力)によって変容した論理の解明は、名探偵からの返す刀となって犯人を一刀両断する。その瞬間の認識の転換は、本格ミステリの納得と、SFの認識異化を鮮やかに両立する。本作を敢えてSFとして推挽する価値は、この瞬間にこそあるのだ。
飛浩隆 『零號琴』魚津九朗
戦後日本SFにおいて、ワイドスクリーン・バロックという言葉が語られた最後はいつのことだったろうか。SFのもっともSFたる作品に冠せられた大スケールの物語。久しくその言葉にふさわしい作品がなく、このまま21世紀の日本SFは、違う方向へ向かうのかと思っていた。そこへ、戦後日本SFのあらゆるガジェットを取り込み、文字通り「祝祭の物語」を生み出したのは、過去二度日本SF大賞を受賞した飛浩隆にこそなしえた奇跡である。三度目の受賞が叶った際にはこう述べたい。「祝え!全ての日本SFの力を受け継ぎ、時空を超え、過去と未来をしろしめす物語。その名も『零號琴』。いまこそ三度目の玉座につく時である!」と。
バーチャルYouTuber「マシーナリーとも子」りょーいち
人類滅亡のために過去へとやってきたシンギュラリティサイボーグがアイドルゲームのキャラクターにはまって、そのキャラに声をつけるための活動を行う、という設定のVtuber。本人が興味を持ったものを貪欲に取り込む姿勢と、ある種ヘンリー・ダーガー的な世界の構築が楽しい。
劇場アニメ『絶望の怪物』Cと呼ばれる大学生@文化垢
この作品は、自主製作アニメであるが、今までの自主製作アニメとは全く違う。30分という劇場用アニメにしては短い尺に、これでもかというほど濃厚なストーリーが紡がれる。主人公は中学二年生の普通の女の子なのだが、ある日自分と家族はこの星の人間ではないと知る。そこから日常は一変し、物語は転げ落ちるように衝撃のクライマックスまで駆け抜ける。鑑賞後の読了感は文学のようで、このアニメが単なるエンターテインメントではないことを一層つよく伝えてくれる。また、この作品は挑戦的なところも多く、アニメーター経験が無いところから監督が一人で作画やプロデュ―スをしたり、主人公の声優に素人を抜擢したり、劇場用アニメとしては異色の作品であることは間違いない。この『絶望の怪物』は今までの作品より一段階上のステージを行った作品だと思う。
TVアニメ『ケムリクサ』mahatasan
···それは、草の見た夢なのか··· ケムリクサという、よくわからないもの。 この物語は異質な風景と、そこで生きる人々のドラマ、マクロとミクロ両方の視点からその謎にアプローチしていきます。 ふたつのスケールで起きた出来事の共通点、自己相似(フラクタル)の関係を見いだすことができた時、きっと戦慄するようなセンス・オブ・ワンダーを体験することでしょう。 SFの非日常的な風景と価値観を、現代の視聴者にも馴染みのある日常的な表現に置き換えて取っ付きやすくする作風は、ラリイ・ニーヴン、ジョン・ヴァーリィ、グレッグ・イーガン等の作品に通じるものがあります。 世界観、ドラマ、ガジェットの三つが有機的に結びついて、一見突拍子もない設定に濃厚なリアリティを与えており、完成度の高いSFの見本としても太鼓判を押したい作品です。
TVアニメ『ケムリクサ』キイロソバ
荒廃した世界で、赤髪の姉妹が水を求めて生活し、ある日一人の少年と出会いを果たす。導入はこんな感じです。物語の過程で様々な謎が散りばめられ、視聴者の想像力を刺激していきます。その謎の出し方はまた嫌らしく、しかし心地よいのです。何故世界は荒廃したのか?何故ケムリクサが出来たのか?何故有害な赤い霧が発生したのか?全ての謎が解き明かされた時、こう思うでしょう。 この物語に、『悪意』はありません。徹底的なまでに純粋な『好意』によって作られた物語です。
劇場アニメ『絶望の怪物』kazuma
SFとしては古典的な内容だがコタニジユンヤ監督が一人で作り上げた唯一無二の存在感、正に絶望感はこの30分のアニメーションというフォーマットは適していたと言って過言では無い。 このような絶望感が感動に切り替わる瞬間この映画の存在感が観客に迫ってくるのだ。 この作品、コタニジユンヤ監督はもっと多くの認知を得るべきだと思う。 故にSF大賞にエントリー願います。
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劇場アニメ『絶望の怪物』適合者
製作期間3年、途中で資金難などで製作が中断するも作者の情熱にて完成。 とある平凡な女子中学生が自分と家族の真実を知ったことから絶望の日々が始まります。どことなくカフカの『変身』を思わせる設定。ジュブナイルSFともホラーとも受け取れる作風。ウルトラQや世にも奇妙な物語の鬱回を想起させるストーリー。 主人公の視点から実録映画のようなタッチの描かれる、絶望の数日間に絶句しました。観終えた後、絵空事なのに実在しないキャラクターなのに、観客として傍観者でしかいられなかった自分に歯痒さを感じました。 公式サイト:http://z-monster.com/
TVアニメ『ケムリクサ』ライカ
あらゆるものが荒廃して主人公達意外には誰も存在しないような、なんとも奇妙な世界が広がる。外をうろつくのは機械とも生物とも言い難いアカムシという敵だらけ。そんな場所を舞台に主人公のりん達は生きるための水を求めて磨り減って行きながら島を巡る。そんな中、わかばという謎の人物の出現で姉妹の冒険は大きく方針を変えて進んでいく事になる。 この冒険を支えるのは謎のアイテム「ケムリクサ」である。アカムシを打ち倒し、水を探し、明かりを灯しては文字も書き込める、とても不思議な道具である。 この未来的とも何とも言えない「クサ」が物語を導き、謎を深め、知的好奇心を無限にくすぐられる。 人間にとって見慣れた物が崩壊し、その中で未知の技術を使いつつ、異様な敵に怯え未開の地を行く。そんな中にセンス・オブ・ワンダーを見出だしながら、苦悩し苦労する人間ドラマを楽しむ素晴らしい作品だと思う。
大森望・日下三蔵編 《年刊日本SF傑作選》マリ本D
この再録アンソロジーの功績などに関しては先んじてエントリーされている方々の推薦文に書かれているので、私は危機感の表明としてエントリーさせていただく。早川書房のnoteにて公開された伴名練のメッセージにおいて、このアンソロジーの編者である大森望・日下三蔵両氏が日本SF短編に果たした貢献が大きいことにふれつつ、「それゆえにこそ、この2人に頼り過ぎている現状は危ういとも感じる」とも述べられている。この言葉を受けて振り返ってみると、実作者においては新しい世代がどんどんと登場している一方で評価する側の新しい世代がほぼ現れていないのではないかという疑念が生じる。ジャンルの存続には作者だけでなく評価者の存在も必要不可欠だ。『おうむの夢と操り人形』でこのアンソロジーは最終巻を迎えるが、それが評価活動の最後にまでなってはいけない。新たなバトンを繋ぐためにも、このアンソロジーは日本SF大賞を受賞すべきである。
宮部みゆき 『さよならの儀式』マリ本D
宮部みゆきといえば現代日本を代表とする稀代のストーリーテラーであり、ミステリー小説や時代小説が多くの人々に読まれている作家の一人である。しかし同時に、『蒲生邸事件』で第18回日本SF大賞を受賞したSF・ファンタジー作家であることも決して忘れてはならない。『さよならの儀式』は、そんな宮部がド直球のSF作品に挑んだ中・短編集である。扱われる題材こそロボットやタイムトラベルなど目新しいものではないが、そこに一捻りも二捻りも加えてグイグイと読ませるあたりには長年第一線で活躍している確かな実力を感じさせられる。ハードパンチを繰り出してくる「母の法律」・「聖痕」や短い中でも深い味わいを覚える「わたしとワタシ」など、それぞれ個別にでも賞に値するレベルの作品が8編も集まった豪華な作品集であり、今年度の日本SFにおける重要な1冊であることに疑いの余地はないだろう。
SCP財団 《SCP財団コミックアンソロジー》マリ本D
SCP財団とは、おおまかに言えば2007年に英語圏の匿名掲示板から始まったシェアワールド的創作都市伝説における主な舞台であるとともに、その創作者たちが集まるコミュニティサイトでもある。代表的な記事で言えばネットミーム的流行を見せたSCP-040-JP「ねこですよろしくおねがいします」が挙げられよう。まさしく“サイエンス・フィクション”をテーマに執筆された記事があるなどジャンル同士の親和性も高いと言える。そんなSCP財団の世界を垣間見ることができるのが、今回初めての商業コミカライズとなった『SCP財団コミックアンソロジー 奇』と『SCP財団コミックアンソロジー 怪』である。商業流通のなかにSCPの世界が出た一歩の重要性なども加味して、今回このように日本SF大賞へと推薦する次第である。
富永浩史 『鋼鉄の犬』森乃カノン
ミリタリー好きにはぜひ読んで頂きたい1冊です。軍用犬とその調教師(ハンドラー)、そしてロボット犬との熱い友情と戦いを描いた作品です!初めは戸惑うばかりの主人公ですが、次第に種を越えた絆が芽生え始めます。感動あり、笑いありの作品です!登場人物一人一人にもバックボーンがあり、隅々まで読み込んでも発見が絶えず、何度読んでも楽しめる作品だと思います!
TVアニメ『ケムリクサ』偽コア
SFの面白さとは「未知なる風景」にあると自分は思っている それは「近未来」「宇宙」「現代とは別の世界」など様々な形で我々を楽しませてきた そんな中で大変興味深い作品が生まれた、「ケムリクサ」である 見た人間がほぼ全員が破滅的な最期を遂げた現代を連想しつつも まるで見た事がない幻想的な風景が広がる閉鎖的な世界で 少年少女達が「ケムリクサ」を使いアカムシという敵対生物と生きる為に戦いを繰り広げる この世界は何なのか?少年少女達の正体は?ケムリクサとは? その全ての謎が解けた時、すなわち「未知なる風景」が「未知」ではなくなった時 驚愕するとともに納得するほどの強烈な「SF」が脳内を駆け巡る やがて閉鎖的だった「未知なる風景」は解放的な「未知なる風景」に姿を変え我々を新しい「SF」へと誘う この「未知なる風景」をより多くの人に体験して貰いたいと思いこの作品を推薦する
にゃんきち 『人類が増えすぎたので減らしてほしいと頼まれました』匿名希望
2018年9月に第一話が発表された本作品は、シミュレーション仮説を題材にしたSF小説で、「小説家になろう」サイトで2019年3月以降、ジャンル別年間1位をキープし続けている人気作品です。 近年、多くのバリエーションを生み出している異世界転生ものの導入フレームワークをうまく使いつつも、現代地球世界を舞台にしてIT、生物、化学、物理学から経済学、経営学、地理に時事問題までを物語に組み込みながら物語を展開させていく手法は他に類を見ないものになっています。 文章のテンポは軽快で、難解なジャーゴンが出てきても読者に軽くいなすだけの余裕を与えている点も評価に値するでしょう。
道満晴明 『メランコリア』継堀雪見
小惑星メランコリアの接近によって終末が迫りゆく地球を舞台に〈日常/非日常〉を送る人々を描くSFオムニバス漫画。引きこもり・南国のメイド・天才チェス少年・殺し屋・腐女子・ツチノコ・宇宙人などの面々が徐々に交錯していく精緻な展開もさることながら、各エピソードの「読み切り短編」としての切れ味がすさまじい。(痛切な展開とギミックの異様な利用法が強烈な印象を残す青春SF「Handspinner」は、白眉ともいえる傑作。)ナンセンスとエロと抒情が混然一体となった作風で活躍する奇才が紡ぎあげた精緻なルーブ・ゴールドバークマシーン(ピタゴラスイッチ装置)的小宇宙は、唯一無二の哀しさと笑いに充ちている。
おべりすく 『サンプルボーイズアイランド』秋夜海月
世界的な水不足を解消する為に科学の力でそれをクリアした副作用として、その水を飲むと女性の出生率が下がり、気がつけば女性が生まれなくなった世界。各国は男性から女性を生み出そうとするようになり、日本国においては授業料の無償化した学園を作り、女性化実験のサンプルを集めるという、女性を作るこころみにおいて、最後の女性の葛藤や男子が女性化する事への葛藤、社会問題をあげて展開される物語はとても儚いです。是非、オススメしたいSF作品になります。
TVアニメ『ケムリクサ』草見
ケムリクサというアニメは知らない事だらけの世界に放り込まれる作品です。 視聴者はもちろん登場人物でさえ多くを知りません。 人気の無い荒廃した風景、動き回り言葉を喋るネコミミ、植物と融合した電車、襲い掛かってくる機械のようなムシと呼称される存在。 それらは謎だらけで序盤から詳細を語られる事は無く物語は進みます。 中盤においては徐々に明かされる謎、しかし更に増え深まる謎、登場人物の心情が丁寧に描かれている事もあり未知への欲求が掻き立てられただ熱中するしかありませんでした。 後半は謎が一気に明かされ、驚き感動不安歓喜といった感情に変わり続け物語は結末へ ケムリクサは、未知への探求、謎の解明と知る喜び、不思議な世界観と現実の未来でも起こりうる可能性、人と植物や機械との関係性や融和性、などを丁寧に描き、SFというジャンルにおいては集大成であり更に大きな一歩を踏み出した作品であると考え推薦します
神祈マリア 『加虐のイディオム』神祈マリア
私がこの作品を自薦した理由は、Web小説のジャンルに革命をもたらすためです。 最近のWeb小説ではSFにおいて『Re:ゼロから始める異世界生活』や『異世界チート魔術師』を筆頭に「異世界転生」や「チート」というジャンルが流布されています。 それらを要因としてサイト「小説家になろう」では、なろうの世界観を「ナーロッパ」という価値観で総括され、マイナージャンルとされる作品がその界隈で埋もれつつあります。 そこで私は新たなジャンルとして、検索してはいけない言葉という約数年前にテレビやインターネット業界で注目されたものを、擬人化や異能系バトルファンタジーの要素を加えた作品に仕上げました。 こちらの作品をご拝読される場合ですが、「検索してはいけない言葉 Wiki」でご確認の上でお願いします。
野﨑まど 『HELLO WORLD』大惨事苦労
ライトな雰囲気と、仮想現実・過去改変など、SF要素の共存が見事。 優柔不断さに悩む少年が、突如現れた10年後の自分と協力し、恋人を悲劇の運命から救う――という王道なあらすじなのだが、そこは野崎まどさん。 どんでん返しが何度も起き、その度に物語の雰囲気が一変する。どんでん返しの全てにSF的な理由があるが、かといって、冷たいお話にはなっていない。 人間だから、彼らだから、あの結末にたどり着くことができたのだ。 物語としては、二人の主人公の関わり方、成長・変化が非常に面白かった。 丁寧に描かれた二人の師弟関係は微笑ましく、どんでん返し後の展開には目が離せない。 10年後の自分が最後に下した決断と、どんでん返しの更なるどんでん返したる最後の1ページで、本当にこの本を買って良かったと思えた。 9月に公開された劇場版も良かったが、未見の人にも、視聴済みの人にも、この小説版はおすすめしたい。
山本章一 『堕天作戦』みさき
スマホの漫画アプリ「マンガワン」で連載中の作品です。 アプリをインストールしなくても、以下サイトで単行本既刊5巻のうち2巻相当分までをブラウザで試し読み可能です。 https://comic.pixiv.net/works/5911 単行本は発行部数が少なく、在庫切れでプレミア価格が付く状況でしたが、熱烈なファンの活動により重版が決定、10月下旬より入手可能です。 出来れば上の試し読みではなく単行本で読んでいただきたい作品です。 装丁は黒地に金箔押し、乱歩全集の様な趣。 魔人軍の捕虜となった主人公が処刑される度に死体の一部からツタ状の器官を生やして肉体を再生、ついには気球による処刑を受けるという猟奇的な一話から始まり、シンギュラリティが起きた未来の残酷で強烈な不条理さとファンタジックな要素が奇妙に混合された世界での主人公の地獄巡りが堪能出来る作品です。
TVアニメ『ケムリクサ』サンディーニ
これは,荒廃した世界の中で希望と安寧を求めて生き抜くヒトの姿を見せる作品だ.私はこれを見るとき,一つの世界がそこに実在している,という異様な現実感を覚える.世界観や設定を基にした創作の描写を見ているのではなく,そこにあるが普段は見られない異世界を覗き見ていると感じるのである. その異常ながら実在感のある世界で起こる事象の緻密な関係性に気付くことで,SFの要であるセンスオブワンダーを十二分に味わえる良作である.また,本作はSFの新しい現代的な楽しみ方を生み出した.毎週更新のネット配信アニメとして提供された本作は,視聴者間のSNS上でのリアルタイムな探究活動を発生させ,視聴者が自身の考えの及ぶよりも遥かに広い視野をネットで得ながら作品世界の不思議に接するという非常に知的好奇心を刺激する体験を提供した.現代のネット社会におけるSFの楽しみ方として,一つの指標を示した功績のある作品と言えるだろう.
TVアニメ『ケムリクサ』古部亮
私はSFには疎い方の人間です。なので難解な世界観、用語には若干の抵抗があります。この『ケムリクサ』も第1話はとても難解に感じました。「ついていけるかなぁ」と難色を示したのですが、私はこの作品を毎週追っているうちに"世界について何も知らなかった子供の心"に戻っていました。そして11話、この物語は大きく展開、12話までの1週間、私の頭と心は"お話の続きを首を長くして待つ少年"のように『ケムリクサ』でいっぱいになったのです。最初にあんなに抵抗があったこの作品を「好き」になっていた。そう、この「好き」という感情、最も身近で普遍的なテーマが、私とこのSFをつないでくれたのです。難しい世界観と物語を一つのエンターテインメントに昇華するためには、やはり"普遍的な一本のテーマ"が必要だと再確認させて頂きました。この傑作をより多くの方に知ってほしい、故にこの度は『ケムリクサ』を推薦させて頂きました。
TVアニメ『けものフレンズ2』ともえ
突然目覚めた何も分からない主人公、取り巻くは『フレンズ』と呼ばれる動物の格好をした少女たち。数多の出会いを通して成長していく主人公と主人公に助けられ共に成長する『フレンズ』にあなたたちも心を動かされるだろう。ポストアポカリプス名物、長く人間の手が及んでいない自然風景や人工物の描写も必見、明るい『フレンズ』たちとの対比がたくさんの想像を生む。世界の謎もたくさんちりばめられているので無限に考察ができる。ところどころ動物愛にあふれた作品でもあるので、是非何回でも見て欲しい。
劇場アニメ『GODZILLA 星を喰う者』ぺんぺん草
GODZILLA 星を喰う者はゴジラのアニメの話です。怪獣に地球が滅ぼされ、それでも生き残ろうとする人と生命の物語でした。地球を追われたさまざまな人種の人々は、それぞれ希望と絶望を持って、あがこうとする人々。そんな人々はそれぞれ、あるものは宗教にすがり、戦争を仕掛けるために人ならざるものにもなろうとする。 過ぎた文明が地球を滅ぼしたと主人公は悟る。そんな悲哀と絶望と希望に満ちたお勧めSF映画です。
八木ナガハル 『惑星の影さすとき』継堀雪見
SFマンガ界において、ゆらゆらとした描線のタッチとハードSF的なアイディアをマッチングさせた作風で活躍する八木ナガハルの第二短編集。「ウルトラジャンプ」で連載された読み切り短篇SF「宇宙歪譚」シリーズと、世界を攪乱する無限工作社の様々な暗躍を描き出す「人類圏」シリーズの計10篇を収録。いずれの作品もスケールの壮大さがすさまじい。ヒルベルトの無限ホテル・小惑星の落下・地球貫通トンネルなど、大掛かりで魅力的なガジェットを飄々とした短篇に落とし込む手腕が卓越している。漫画表現ならではの幻想的ヴィジョンとSF的奇想が混全一体となって、独特の〈センス・オブ・ワンダー〉を紡ぎあげている。 
森泉岳士 「セリー」継堀雪見
男と、「セリー」と名付けられたヒューマノイドの〈彼女〉と、溢れんばかりの本で埋め尽くされた書庫。すべてが滅びゆく終末の世界にいながら、二人は読み続ける。男が亡くなってから数百年の孤独な年月を重ねるセリーの元に、不意に来訪者が訪れる……。特異な技法で描かれる極めて静謐な線と見事な引用が唯一無二の詩情をもたらす中編SFマンガ。
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映画「離ればなれの花々へ」ジュール
本作は映画監督である山戸結希により企画、プロデュースされた 「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」を共通のテーマとして15名の女性監督により作られたオムニバス短編集映画、「21世紀の女の子」の一篇である。 企画、プロデューサーの山戸結希自身によって撮られた本作「離ればなれの花々へ」は、監督が持つ独自の言語感覚の元、地球に生まれる少女たちの花園を鮮烈に描き出す。 たった8分間の映像の中に詰め込まれた少女、幸福、恋、世界、母、美しさ。 それらはおそらくこれまでに見たことがない映像と言葉の応酬であり、見るものすべてを圧倒する。 矢次早に繰り出される言葉と映像のリズムは監督にしか描けないモノであり、 その独自の映像美学が本作の独特な雰囲気を構築し、見事なSF作品に仕上げている。世の中に本物というモノが存在するのなら、本作こそ、そう呼ばれるものであると私は思う。
TVアニメ『ケムリクサ』たけ
 ケムリクサを観る前は、休みの日の度に家でゴロゴロしていることが多かったのですが、ケムリクサを観てからは、何かを始めたくなる気持ちがとても大きくなり、SNSを始めたことから始まり、今まで買ったことの無いBDやグッズを購入したり、本編に出てくるケムリクサのモデルの植物を求めてそこらじゅうを探し周ったりしました(これかもしれないというのも含めて全て見つけることができました)  聖地巡礼で富士山に登ったりもしました。  出題編のような1~10話に対しての11話に衝撃を受けて、姉妹たちのお互いがお互いを思う気持ちに心を打たれて、もうたつき監督の手のひらの上で転がされまくりなのですが、それが心地よかったです。  今まで数多くの作品を観ましたがここまで心に響いた作品は初めてです、そんなケムリクサを私は推薦します。
中村尚裕 『電脳猟兵×クリスタルの鍵』狸塚理嘉
ネットのWEB小説投稿サイト『小説家になろう』掲載作品。アドレスはhttps://ncode.syosetu.com/n9395da/。まるで古典的なSF映画のような、真に迫るガンアクションと壮大な描写が魅力の作品であり、ボリュームがかなりある。洋書のような雰囲気の文体とキャラクターで、日本人が書いたとはとても思えない。描写がとにかくハードボイルド。
タツマゲドン 『《ADAM》 / 【THE TRANSCEND-MEN】』狸塚理嘉
ネットのWEB小説投稿サイト『小説家になろう』掲載作品。アドレスはhttps://ncode.syosetu.com/n4886ew/。ハリウッド映画的な手法に、飯テロや雑学などの知識を豊富に取り込んだ意欲作。超能力者同士の戦いを描く。主人公・アダムがとにかく魅力的であり、カンフーなどの要素もインパクト大。また宇宙などの謎も多く、娯楽要素も多い作品である。
「バーチャルマーケット2」大澤博隆
ソーシャルVR「VRChat」上で行われた、主に3Dモデルの展示・販売を目的としたイベント。2019年3月8~10日開催。クリエイター達はテーマの違うワールドから、自分のイメージに合うワールドを選び、与えられたスペース内を自分たちの想像力でデコレートしている。ユーザはブース内のアバターやアイテムを実際に「試着」して試すことができる。ワールドは現在もログインして鑑賞可能である。古くからSecondLife等で同様の試みは行われているが、個人クリエイターが企業と共同して、積極的にVR空間を設計・実装し、活動を広げた努力は特筆すべきものがある。SFファンダムに由来する同人活動と、SFにおけるサイバーパンク空間のイメージが綺麗に融合し、クリエイターのための新しいスペースが生まれている。 https://www.youtube.com/watch?v=Iq8gOA-6X8g
劇場アニメ『プロメア』蒲生
【ネタバレ注意】 炎を操る人類バーニッシュは、その力から恐れられ、危険因子として迫害されていた。バーニッシュだけのコミュニティ形成に奮起するリーダー リオと、バーニッシュによる被害で孤児になった過去を持つ、レスキュー隊員のガロ。 二人は衝突し、やがてバーニッシュの力を利用するための人体実験と、バーニッシュを人柱にするエンジン開発計画に直面する。 計画阻止のため、二人はバーニッシュが操る炎「プロメア」の秘密を手に入れる。 ロボットアクションものとしての爽快感と躍動感もさることながら、勢いに呑まれて見逃しがちな「プロメア」の魅力は、鑑賞する毎にいや増す。 宇宙、ワープなど本筋は王道の古典的SFにあやかり、ディティールに荒削りながらも新しい色彩感覚と考証が取り込まれている。 既視感があるのに、突き詰めるほど斬新になる。その様相は新古典主義を思わせる。
TVアニメ『ケムリクサ』諸味
生き延びるための唯一の糧となる水を巡って暗い廃墟を巡るという、一見重くつらい展開を予見させるようなビジュアルの中、登場人物となる姉妹達や少年の掛け合いや生き様を丁寧に描写することによって、その旅がまるで何気ない日常のように描かれているのは非常に心地がよく、また、登場人物の誰もが互いを尊重し、自らの好きなことをみんなが続けられるように支援しようとする姿は非常に心に響くものがありました。
長谷敏司 『ANALOGHACK ENLIGHTENED「電霊道士」』匿名希望
BEATLESSの設定をオープン化したアナログハック・オープンリソースの実例として刊行された同人誌だが、金盾内でガラパゴス化し道教と一体化した中華サイバーパンクであった。呪を唱え徳点を消費してAIにアクセスするサイバー道士とアメリカ帰りの保険調査員。金盾内外部のロジックのギャップをベースに呪術バトルとガンアクションで疾走する快作
黒崎光 『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした』狸塚理嘉
ネットのWEB小説サイト『小説家になろう』掲載作品。アドレスはhttps://ncode.syosetu.com/n0684dg/。現実と虚構を行きかうような壮大なテーマの作品で、命とは何か、人間とは何かを追求する。機械や凄惨な描写が得意であり、ライトノベルのようなキャラクターが魅力的な作品。
大前粟生 『私と鰐と妹の部屋』渡邊利道
各編が微妙に連関した奇想掌編小説集。家族をモチーフにした作品が多く(とくにきょうだい)、SF的な奇想が人と人の繋がりを複雑にして、関係が見通せないようになっている辛さや断絶の悲しみが軽やかに描かれていて、今のSFだ!と強く感じました。
大森望・日下三蔵(編) 『おうむの夢と操り人形(年刊日本SF傑作選)』匿名希望
2007年の年刊日本SF傑作選『虚構機関』から今回の最終巻まで、10年間にわたる日本SFの「いまここ」を紹介し、ここから多くの日本SF作家が世に出た功績は、創元SF短編賞の掲載とあわせて、間違いなく日本SF大賞の受賞に値すると思う。
劇場アニメ『GODZILLA 星を喰う者』榊あんか
ゴジラシリーズのアニメ化作品であり、その想像を絶する展開で物議を醸し出した『GODZILLA三部作』。これはその完結編である。この星を喰う者においての最大の敵は『黄金の終焉ギドラ』。あらゆる惑星に生まれたゴジラを喰らう高次元の神。アニメーションという表現において生み出された金色の王は、まさにこの世ならざる存在として恐怖と異質さを纏っていた。この世界観では、人類と文明があればゴジラ(に相当する怪獣)が現れ、人類が絶望し、その絶望がギドラという祝福を呼び招くとされている。この場合の祝福とは『全てが滅んでも怪獣という恐怖を消し去りたい』という歪んだ願いその物だ。主人公ハルオは、そのサイクルと破滅の祝福を目にし、そしてその答えを最後に見出す。同時に表現されるゴジラとギドラの在り方、その迫力。従来のシリーズとは違うゴジラ作品であるが、それでもゴジラファンならぜひとも見てほしい。そんな作品である。
三崎律日 『奇書の世界史』浅木原忍
執筆当時には良書であったが価値観の変化によって《奇書》となってしまった書物や、嘘や捏造なのにその内容を真実と思い込んだ人々が翻弄された書物、そして逆に発表当時は《奇書》だったが現在では先進的な名著となった書物を紹介する、ゆっくり解説動画シリーズ「世界の奇書をゆっくり解説」の書籍化。SF的には巻末のヴェルヌ『月世界旅行』を取り上げた章が白眉で、コペルニクス『天体の回転について』、超伝導の偽造論文事件など科学関係の書物も多く取り上げられている。「ゆっくり解説動画」からの書籍化という事実をSF的と呼んでもいいが、何よりも、過去と現代の物の見方、価値観の差分の紹介を通して、現代の価値観の絶対性に懐疑の目を向けることで、未来への想像を促すというシリーズの通しテーマが優れてSF的だ。本書は読者の世界の見方、価値観を揺さぶるという意味で日本SF大賞に推薦するに相応しい《良書》であり《奇書》である。
ゲーム『ゼノブレイド2』ジュール
藤田直哉氏がIGNJapanの連載において、 傑作SFゲームが次々と出ているがSF界がこれを評価できなかったのは、単なる怠慢である。この原因としては世代的な問題でそもそもゲームをプレイできないという原因が横たわっていたと記述している。 このことからわかるがゲームは日本SF大賞を受賞することが難しい。だが、だからといって本作を候補にあげないのはそれこそSF界の怠慢だ。 本作は追加シナリオにより2018年9月に完結したため、本年のエントリー資格を有している。 本作は高橋哲哉氏によって作られた壮大なSF作品であり、人とブレイドと呼ばれる亜種生命体の物語だ。プレイ当初こそファンタジー色が強いが、ブレイドの存在や世界に隠されていた秘密、そこに近づいていくにつれて物語はSF色が強くなる。物語の最後、主人公がたどり着く答えは日本SF的な優しさ、美しさに満ちており、日本SFとして評価されるべき一作だ。
劇場アニメ『海獣の子供』ジュール
日本SF大賞の募集要項ページには次のような言葉がある。 日本SF大賞にふさわしい作品とは、SFとしてすぐれた作品であり、このあとからは、これがなかった以前の世界が想像できないような作品 本作はまさしく日本SF としてこれがなかった以前の世界を想像できない作品である。 パンフレットにおいて、添野知生氏がパンスペルミア説をテーマとして正面から取り上げたSF映画であり、劇場用長編ではおそらく先例がない と述べている通り本作は日本SFアニメとしてこれまで存在しなかった傑作である。 物語は当然として美術監督木村真二氏と総作画監督小西賢一氏による絵は原作の世界観を完璧に再現したかのようだ。 また、米津玄師氏による主題歌は原作を読んでいなければ書けない歌詞であり、ただの主題歌以上の効果を聞くものに与えてくれる。 物語、絵、曲。そのすべてがSFとして日本SF大賞を受賞するに値する作品だ。
詩野うら 『有害無罪玩具』林哲矢
ひとたび動かせば、良くて人死に、悪ければ世界を滅ぼしかねない、そんな害はあるが罪は無いおもちゃを集めた展示館を描く表題作、時の止まった世界の中で無限の時間に囚われる「虚数時間の遊び」など、奇妙な発想と、美しくも著しく不穏な世界が魅力の作品集。
TVアニメ『ケムリクサ』匿名希望
この作品を観た者がどうしても筆を取りたくなる理由の一つが、作品全体を包み込む、クリエイションに対する愛に満ちた作家性である。 現代社会の様々な問題を想起させつつ、それをどこまでも優しい眼差しで受け入れ、希望を与えてくれる数々の言葉、謎解きの答え。 私はその謎について考える時、今だにいつでも水道の蛇口を開くように涙が溢れてくる。 そして1クールアニメという媒体の強みを余すところなく使った11話の演出力は、視聴者に共感をはるかに超える感動を与え、それを成し遂げた製作陣の仕事ぶりにまた涙が湧いてくる。 この、現実世界に想像しうる、ただし近すぎない距離感で勇気を与えてくれる彼らの作家性を、最もロマンチックに活かせるフィールドがSFなのではないかと思う。
劇場アニメ『プロメア』hmt
夢枕獏のSFをリスペクトした『天元突破グレンラガン』を手掛けた今石監督・脚本:中島かずきのタッグ再び。2019/5/24公開のオリジナル映画、ロングランヒットという実績があり、これにより10億突破監督が1名増えた、実績は折り紙付き。ロボットや男同士の熱い友情を外して近代日本のSFは語れないのでは。
TVアニメ『ケムリクサ』ザナドゥー
崩れかけのビルや道路が散乱する荒廃した世界で水を求めさすらう姉妹は一人の青年と出会う、といった非現実的な世界観。しかし、互いを思いやり助け合って生きていく彼女達の姿は、現実でも見習いたいほどに美しいものであった。もちろん、なぜそのような世界になったかの説明を描写しているためSFとして十分な作品と思えるのだが、なによりこの作品には、いつの時代や世界でも共感できるメッセージ性を持っている。何故なら、作中で散りばめられていたテーマが副題のようで実は主題であったと終盤判明するのだが、それこそがSFとしても、いやSFだからこそ輝くメッセージであったのだから。故にSF大賞に推薦させていただく。
TVアニメ『ケムリクサ』takat
少年少女が、我々の知らない過酷な世界を生き抜き、やがて世界の謎を解き明かした上で明るい未来を掴み取ろうと手を伸ばす。 大雑把に言えば、これがケムリクサの粗筋です。 実に古くから踏襲された、ジュブナイルSFの王道物語です。 創作物としてのケムリクサの価値は、その王道を現代において紡ぎ切った事にあると考えます。 アニメという媒体を活かしたキャラクターの魅力。 キャラクターに思い入れがあるからこその世界の謎への興味。 そしてこの世界の由来を知った時、そこに込められた想いに、視聴者は言葉を失います。 個人的には、ヴォークト先生の「スラン」連作を読んだ時の衝撃が蘇りました。 世界を探る楽しみと、人物の物語の楽しみ。それを両立出来るのがSFだと思います。ケムリクサも又、それを両立する傑作だと思います。
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山本章一 『堕天作戦』殺人カレー
「超人機械」読んで字の如く人を超えた機械のこと。影響範囲は次元を超えるとまで言われたそれの誕生により地球の様相は一変した。新人類「魔人」は奴隷の地位を覆すべく蜂起。「腐鉄菌」の影響により劣勢を強いられる旧人類。アフリカは「怪蟲」に溢れ、アメリカは「竜」に牛耳られた。環境汚染は進み、土地を巡っての争いは絶えない。そして三百年。もはや争う理由も判然としない───。そんな状況を大きく変える激動の時代を描いた群像劇である。どう生きるかを主題に各章ごとにメッセージが込められているように感じる。知識の魅力と知恵の業。相容れぬ存在との共存。異端ゆえの苦しみ。人生はままならない。内容は重い。しかし徐々に紐解かれる世界観が関心を引き、ユーモアも多分に含まれるこの作品には気持ちよく読ませる力がある。本作の主人公は「不死者」。彼の彼自身の謎、延いては世界の謎を追う旅路の果てを是非とも見届けて欲しい。
伊図透 『銃座のウルナ』匿名希望
雪に閉ざされた島。昔日のロシアを思わせるローテクな戦争。そこにただひとつのオーバーテクノロジーが持ち込まれる。異形の敵との戦いとそれがもたらす悲劇が、比類無き詩情豊かな自然表現と対比され時に溶けあう。対立と凄惨な戦いの絶えない世界において、この普遍的なテーマを持つ作品はSFのひとつの到達点としても評価されるべきではないかと思う。
小鈴危一 『石英ガラスの高次幻争録(メタ・ファンタジア)』鴉野 兄貴
少年は死んだ。仲間も全滅したはずだった。そこに広がるのは古き星空、滅びた魔族、魔王を名乗る少女。魔法が機械によるアプリ処理されるようになって久しい中、彼女を付け狙う『勇者』は時間停止を始めとする能力もののラスボスや主人公的な奇跡を振るい迫ってくる。勝ち得ない的に対し彼は科学の知識で敵の能力を分析し攻略する。鈍い自らの心、自分のために戦うことの意味を見出していく。それは自分勝手で破滅的で誰より愛おしい。 作者最高傑作だが如何なるSF賞も拾わずウェブ小説サイトに投稿されたこの作品は我々が当然と思い続けた戦う意味、ヒーローの科学的能力の裏付けを問うた魔法にして科学の素晴らしいフィクションである。
山本章一 『堕天作戦』Meiji
作者のセンスが光るポストアポカリプス系漫画。世界観を書き連ねます。 人間を超えた知性の「超人機械」の出現によって世界が混沌に導かれ、「腐鉄菌」の散布で科学文明が崩壊した世界。(一応現実の延長線上) 超人機械は「魔法」を発明・新人類の「魔人」を創造し、その後魔人と人間と戦争が起きたが、全ての原因である超人機械は忽然と居なくなってしまい、行方知れずのまま。 戦争で既存の現代兵器が使えない人間は劣勢である反面、魔法による武力を背景に魔人は増長している。魔人曰く「科学は魔法に屈した旧人(人間)の宗教」とされる。なお魔人の寿命は30年と短い。元々奴隷種族だったが魔法や汚染物質への耐性などで人間より繁栄している。 この世界では鉄が使えないため科学の進歩や産業に影響が出ている。 堕天作戦は独特で魅力的な世界観が構築されています。また漫画としても、セリフ回し・表情・心情描写は丁寧で秀逸な作品です。
TVアニメ『ケムリクサ』RK トンボ
独特の世界観とSF要素がふんだんに盛り込まれたストーリー。起承転結がしっかりしていて、シリアスストーリーにも関わらず見るのが苦にならない。キャラクターの裏設定や世界を構成する要素などをしっかりと設定しつつ、核心部分は視聴者に考えさせる構成。
ココナッツ野山 『ギスギスオンライン』popopipo
かつて日本SFとは、先鋭的であり、気宇壮大であり、そしてとんでもなくハチャメチャでした。 「ギスギスオンライン」(https://ncode.syosetu.com/n0776dq/)は、「小説家になろう」に連載中のいわゆる「なろう系」作品ですが、同時に日本SFの正統な後継者でもあります。 VRMMOの超技術によって人間性が変容する過程と悲哀は小松左京「日本アパッチ族」、平井和正「サイボーグ・ブルース」を、超越者とのコミュニケーションは神林長平「戦闘妖精雪風」や山田正紀「神狩り」を想起させます。また、「小説家になろう」の機能を駆使した双方向メタフィクションは筒井康隆「朝のガスパール」の続編といっても過言ではないでしょう。 まさに、SF好きにこそ「ギスギスオンライン」をお勧めします。
TVアニメ『ケムリクサ』iichikomame
廃墟や朽ちた建築物が果てしなく続く物悲しく辛い世界。ライフラインを断たれ、ひっそり朽ちていく最期を迎えんとしていた姉妹の元に、記憶を失った少年が突如現れました。 少年の登場により物語が大きく動き始めて行くことになります。 姉妹たちの秘密、敵対するムシと呼ばれる存在や赤霧の謎、少年の正体といった謎を孕んだまま、少しずつ世界が露わになって行くのです。 主人公たちがどうような転機を迎えるのか、この世界はどんな世界なのか。視聴する度に、新たな事実や魅力に気付かされるばかりです。 あなたも、寂しく不気味でありながら僅かな希望が残されたこの世界を、一緒にご覧になりませんか。
山本章一 『堕天作戦』たいとねいぶ
Webマンガアプリ『マンガワン』にて連載中の作品です。Webマンガ総選挙2019年中間発表で3位になっていました。これを機に重版が決定し、5巻が電子書籍のみ発売から紙の出版に戻ったことで話題となりました。 派手さはありませんが練りこまれた設定、計算されつくしたアート的なコマ割りレイアウト、近年まれにみる上質な文学のようなネームが展開されており、注目されるべき作品だと思います。 内容はシンギュラリティ後の地球上の話となっており「超人機械」「腐鉄菌」「不死者」「豚怪蟲」「人の成れの果ての竜」などSFとして大変魅力的な設定が出てきます。 人間ドラマとしても見事な群集劇でSFファンのみならず引き込まれる内容となっております。 こんなに「上手い」漫画を見たのは久しぶりです。出会えて良かった、知らなかったらもったいないと思える作品です。
TVアニメ『SSSS.GRIDMAN』鴉野 兄貴
閉ざされた街をつつむ人には見えぬ霧の怪獣。記憶喪失の主人公、人間を呑み込む謎のパソコン、現れるヒーロー、怪獣に殺されたはずなのに存在すら消えてしまう隣人。日常では親しく振舞う悪役たち。電脳世界を舞台に35年前に放映され、早すぎた実写特撮と呼ばれた物語が装いも新たにアニメーションとして帰ってきた作品は美少女、特撮のウレタンの動きを再現した怪獣、ロボット、合体、少年が好きそうなものをてんこもりしつつその全体に流れるテーマは寄り添う逢う事、運命より強い愛、立ち上がる事の大切さ。それがアニメーションの豪快なアクションを加えて舞い踊るのだから面白くない筈はなく、また創造者としての人間の業、創造されたものからの愛が描かれることで人間側の一方通行になっていない事、前作から一貫した友情の大事さを語る事で少女に共感できる内容に昇華されることで新しいファンを獲得し、旧作を知る者もうなるオマージュを捧げた。
TVアニメ『ケムリクサ』O.I
瓦礫に覆われた世界の中、多くの困難と危険が降りかかる中、相手を思いやり強く健気に生きる姉妹と一人の青年の物語です。色によって効果が異なる『ケムリクサ』、姉妹たちを襲う『アカムシ』…。数々の謎が交差するSF的世界観に興味をそそられました。一見の価値ありの作品です。
TVアニメ『ケムリクサ』白芭
ケムリクサの物語は、生きるために水を探す姉妹と、記憶喪失の青年が、無人の荒廃した世界を旅する物語です。 面白い所は、青年が「自分は人である」という主張に対し、姉妹の一人が「私達姉妹こそが人であり、お前は敵であるアカムシだろ」と反論する所です。 何故、姉妹の一人は青年を敵だと疑ったのか。それは、青年の血の色が赤色であり、その色が姉妹達の天敵であるアカムシと呼ばれる機械の様な生命体の色と同じだからです。 この時、赤い血が流れている事実から青年は人でないかという推測と、そもそも姉妹達は一体何者なのか、という疑問が出てくると思います。何故なら姉妹達は血の色を知らず、水のみで生きられる性質を持つ他、人としては不可解な力を持っているからです。 この物語の真実を知った時、想像を遥かに超えた驚愕な内容に、誰もが経験したことの無い、身の震える様な感覚を体験する事は間違い無いでしょう。
TVアニメ『ケムリクサ』匿名希望
この作品は「好き」を探して一生懸命生きる者達を描いた、とても小さく、それでいてとても壮大な物語です。 愛だの夢だのといった文明的な感情では無く、「好き」という原初の感情であると言っても良く、それ故に心の奥に直接響くものがあります。 基本的には王道なので大雑把な予想は出来なくもありませんが、それをしても尚心踊る驚愕の展開の数々に呑まれ、そして最後まで見た後にもう1度最初から見る事で、最初から既に仕込まれていたという「全にして一」を体感する事でしょう。 ちなみにこの作品には様々な仕掛けがあり、探す度に発見があるという掘っても掘っても底が見えないという点があります。 他の視聴者の考察なども見つつ、このケムリクサの世界の様々な場所を掘ってみるのも一興でしょう。
TVアニメ『ケムリクサ』ジュラブリックジョー
前作と打って変わって殺伐とした雰囲気を前面に押し出した世界観、当然キャラクターも全体的に殺伐としています。 初手で追いかけられるのは前作の冒頭を思い起こさせますが、こっちはマジ。『食べる』が冗談になりません。 しかしそんな世界だからこそ、主人公のわかばの無垢な優しさが染み渡ります。 まだバックボーンを知らないにも関わらず、わかばの優しさや献身には何故か(ちょっとだけ)涙が出ました。 恋愛の予感等ありますが、正直それよりも世界観やわかばの異常なまでの物分かりの良さなどが気になりますね。 個人的にはキャラごとの特殊能力を用いた戦闘描写の巧みさが気に入りました。 話が進んで、さらなる引き出しを見てみたいです。
TVアニメ『revisions リヴィジョンズ』ティコ
「僕たちの過去は、まだ決まっていない。」というキャッチコピーが最終話までしっかりと貫かれていたタイムリープ作品です。未来における人類の異形化という問題もはらみつつ、全話無駄なく進む脚本が素晴らしかったです。また最終話で第一話に登場した「一番遠い過去」を確定させる手法が、タイムリープものとして見事と言わざるを得ません。第一話で紡がれた言葉が、最終話では全く違った響きを持って聞こえてくるのも熱い。‬ ‪また主人公の大介が強烈な個性を放っているところも見所のひとつ。痛いヤツなのは間違いないですが、自分に出来ることは何か?を考えて努力を惜しまない姿勢が良かったです。慶作との友情にもホロリ…。‬ ‪ネット等では話題に上る事があまりなかった作品ですが、SF大賞に相応しい力のある物語でした。‬
TVアニメ『ケムリクサ』バニバニ
荒廃した島に住む不思議な姉妹「りん」「りつ」「りな」と、ある日突然現れた好奇心旺盛な謎の少年「わかば」。止まっていた世界がこの出会いにより動き出す。そして行き着いた先にある真実は― 近未来的でありながら荒廃したハードな世界観とは裏腹に、力を合わせてお互いを助け合う「姉妹」と「わかば」の優しさや、生きていく上で「好きな事」の大切さを思い出させてれるストーリーからは癒やしや勇気を沢山貰えた。私はこの作品を子供から大人にまで胸を張ってオススメできます。
TVアニメ『ケムリクサ』夏目 草赤
この作品は,絶望の淵に立たされた登場人物への共感によって視聴者がこの世界に希望を見出し、作品の世界を希望へと変えたいと思わせる作品である。此の作品の世界はある物体に因って数多くの問題が起こっており、その物体を斃すのが主な目的だが、この作品はRPGのようにアイテム、ストーリー、そしてメインプロットに複雑に絡みつくサブプロットによってどきゝする。
TVアニメ『ケムリクサ』オー・ザック派RITS
張り巡らされた伏線と気付かれない伏線の数々、世界観設定、輪廻転生もをテーマに盛り込んで、1話から見返せば見返すほど新たな発見がある練り込まれた脚本。 この物語の結末や真実を初見で正確に当てることができる人間は皆無に等しいと思われる。 一見突拍子のない設定がぽっと出したのに、その実なんの違和感も感じさせない作り込み。 SFのみならず2019年のアニメカテゴリにおいても間違いなく最高の作品
TVアニメ『ケムリクサ』滝見野
今回私が何故この作品を推薦したのかというと、SFという素晴らしいジャンルを多くの人に伝えたいからです。ケムリクサはSFの素晴らしさ、魅力を上手い形で伝えていると思います。 その魅力を伝えるのにかなり貢献しているのは世界観だと私は考えます。何故ならSFにとって世界観は土台のようなもの、ケムリクサは昔人間が作った(?)建物、そしてアカギリという死の霧など、どういう経緯でなったのかわからない世界で3人姉妹がなんとか生き延びているという世界観は我々ファンにとってはとてもシリアスであり、SFチックでありました。世界観がちゃんと出来ている点では私は特に良いと思ってます。 最後になりますが、我々の生活には常にSFという世界があり私達はいつでもSFの世界に入れると思います。そんな中で私はケムリクサという素晴らしい世界に出会いSFに大きな興味を持ちました。SFは偉大、無限の可能性を秘めている。以上です
TVアニメ『ケムリクサ』帯田 翔
この作品を短く言い表すのであれば、「闇の中の光を見つける」である。 この作品は記憶を失った研究者がかつて研究していたケムリクサという不思議な魔法のようなアイテムを使い、問題を解決してゆく物語。 先達て述べた通りこの作品は闇が主となっている。この作品に登場するキャラ、舞台は最後までほとんど同系色で統一されており、それは暗い色である。
TVアニメ『ケムリクサ』中島 裕大
何か不思議な力を持った葉っぱのようなものがこの作品の主要素の一つとなっている。 此の作品は出だしから暗く赤い霧に覆われ、見通しの悪い世界が広がっている。作品内部には一見して不自然とも取れるシーンが数多くあり、視聴者を惑わせながらも強く引き込み、更にキャラクターに自分を当てはめ、さも自分がこの作品の世界に存在しているかのような錯覚に陥らせる。
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TVアニメ『ケムリクサ』拙僧.ne.jp
【ネタバレ注意】SF要素としては巨大?宇宙船が舞台で異星人が主役と思われること。ケムリクサという植物ともデバイスともいえる未知のテクノロジーがテーマであること。オカルトやファンタジーではなく空想科学が基になっている世界観であること。ストーリーの構成も奇跡や偶然に頼るのではなく、登場人物たちの行動による結果に重きをおいている。それでいて観ている者の感情を揺さぶるという所が本当に素晴らしかった。
草野原々 「理由農作錬金術師アイティ」荒巻義雄
【ネタバレ注意】 この新鋭作家の方向性が見えてきたような異色作。〈理由農作錬金術師〉とはなにか。「捕縛された理由を育てる理由農家」と「育てられた理由を精錬し組み合わせる理由錬金術師」を兼業するものと定義される存在であるが、実在しない平凡な少女だ。とは言え、読み進めても半分もわからないのだが、地底戦艦を発明して地獄の鬼や悪魔を征服し、占領した地獄へ人口過剰の地表から移民させるというアイディアは凄い!  作中の精霊説仮説はグノーシスを連想させる。エーテルの満ちた天界は精霊の棲息に適しているが、地表に流出して物質に浸透することで物質が動く理由が与えられる。しかし、地表界のキャラクターは環境が悪いので精霊は生殖できず、衰え、単純化する。かくしてキャラクターは人間に堕落、さらに人間は物質以下の存在に堕ちる。
劉慈欣(著)立原透耶(監修)大森望・光吉さくら・ワンチャイ(訳) 『三体』荒巻義雄
【ネタバレ注意】 神々が地球を侵略する〈ビッグウォーズ〉やゲーム天体グロブロー上で展開する〈要塞シリーズ〉を過去に書いた作者としては、共感を抱かざるを得ない、〈侵略テーマ〉久々の快作である。前半は文革がらみで迷彩された謎々で引きづられるが、後半は一気に加速。三体人の正体が明かされる構成が見事。地球侵略の秘密兵器として、陽子と11次元超紐理論をもってきたアイデアにも感服。3部作の第2巻「黒暗森林」、第3巻「死神永生」の翻訳刊行が望まれる。  明らかに『幼年期の終わり』『コンタクト』『果てしなき流れの果に』など、〈接触テーマ〉の眷属に属するが、宇宙小説の難問〈超遠距離問題〉を〈450年後の侵略〉という奇抜なアイディアで解決した着想は、中国人に固有の時間感覚によるものにちがいない。
TVアニメ『ケムリクサ』Mai
【ネタバレ注意】この作品を一言でまとめるならば「再会」。物語は主人公の男性「わかば」と3姉妹が荒廃した世界を彷徨うというシンプルなもの。だがわかばと3姉妹は過去に姿形こそ異なるが出会っている。「ケムリクサ」というアニメタイトルにもなった特殊な植物には様々な力がある。物語の舞台となる廃墟のような世界も、ケムリクサにより作成されたものである。過去。3姉妹の原型となった1人の少女は手違いにより「ケムリクサを止めるケムリクサ」を育ててしまう。ケムリクサで作成された世界は滅びに向かう。わかばの原型となった男性は、それに対抗するケムリクサの苗床となり命を落とす。それを知らなかった少女は救助に向かう為、自らの体をケムリクサに分割した。未来(物語冒頭)。ケムリクサに再生、作成された男性のコピー「わかば」とケムリクサに体を分割した少女(姉妹)が出会う。お互いの記憶はないが、確かに2人は再会したのである。
TVアニメ『ケムリクサ』だるすさん
非常に細部まで練られた設定やストーリーが話題となった本作ですが、それらをはじめのうちは全く説明する事もなく、世界について登場人物においてあらゆる点で視聴者の想像にまかせられたままに話が進んでいきます。すべてが明らかになった瞬間の情報爆発と言っても過言ではない、複雑でありつつもスッキリとした感情を抱いたのはいつぶりかと思いました。本筋でもそうでない部分でもありとあらゆる場面に伏線が張られていた。でもそれは目には見えていても心に引っかかるほどでもない物もあった。それらがパズルのピースのように一気に当てはまった時、視聴者はまた今までの話を観返してしまうのです。「魅せる手法」にも唸らせる物がある作品でした。
TVアニメ『ケムリクサ』zastin
1話では何もわからない状態から始まり、物語は作中の人物と同じ視点、情報量のまま進んでいきます。ふと引っかかる部分が見つかり、解決すると新たな疑問が生じる…描写、表情、行動までが全て細かく作られていてこれを映像として出すだけでも十分に凄みを感じます。物語が進むにつれ、謎と不思議が入り混じり、作中の人物への感情移入が増していく…終盤に差し掛かる時には完全にシンクロしています。つくづく作った方々は「天才と努力の塊」であることを実感しました。物語が終わる頃には完全に手玉に取られている しかし面白いのは2周目からです。一周目を「平面」と例えるならば二周目は「立体」と言うべきでしょう。まるで「噛めば噛むほど味が濃くなるガム」で何周しても新しい発見があります。何も考えずに見て好きを共有するも良し、考えて考えて答えを探し続けるも良し。大人から子供まで幅広くSFを楽しめると思い推薦させて頂きました。
TVアニメ『ケムリクサ』ぜおん
私に好きに生きる「今」をくれた作品です。そのくらい心に刺さる作品でした。 この物語の作中の舞台では、薄暗い空、 廃墟化した建造物が存在する日本のような場所、赤霧、突如として現れる「アカムシ」と呼ばれるロボットの様な奇妙な敵など暗い世界ながらSF的にもとても気になる要素や謎を解くヒントや伏線が一話一話に多く散りばめられた作品となっており、視聴者の好奇心をくすぐる魅力的作品となっています。また、暗い世界とは裏腹に作中のキャラ達は「好き」を大事にすることを忘れないという考えをしっかり持っているところに強く惹かれ、自分も好きなことを大事にしたいと思うようになりました。そのお陰で「今」があると思います。そして、謎も物語を追うごとによって解明されていき、真実に辿り着いた時にこそ、この作品のSF的凄さとたつき氏の丁寧な伏線張り、ミスリードの上手さを実感できると思います。とても素晴らしい作品です。
TVアニメ『ケムリクサ』匿名希望
個人的にケムリクサがSFとして優れていると思われる所は、作中に登場するアイテムは、全て何らかのテクノロジーによって齎されている、と何となくではあるが分かるところです。それでいて、作中のストーリーは主人公達の主観で進行する為、最終回後も世界観についてはまだ分からないことが多く、沢山の考察の余地がある所も魅力的です。ケムリクサはそんな、壮大な世界観をベースに、視聴者にとってはとてもシンプルで、身近な題材を描いた作品です。
TVアニメ『ケムリクサ』おとなりの叡王さん
荒廃した世界で、姉妹は目を覚ます。 水を求め、敵である「アカムシ」を避け、ときには戦い、生き抜いてきた。 その中で姉妹たちは自分の「好き」を見つけては大切にする。 そこに落ちてきた少年・わかば。 SFながら敷居が低く、とっつきやすい設計に加え、終盤(特に十一話)のどんでん返しが魅力だ。「このせかいのしくみ」が明かされるときの衝撃は、他の作品では味わえない。
今井哲也 「ピロウトーク」紅坂 紫
前世からの因縁、結末の背景など随所にSFをしっかりと感じさせる濃厚な気配を漂わせしかし全てを語らない、絵と文の2つの相互作用によって読者に想像の余地を残しながら話を進めていく「マンガとしての良さ」があった。先輩と後輩の百合と考えることもできるが、先輩と枕という一見百合には思えないしかしだからこそ想いあっているというそれだけで「百合」である概念としての「百合」の要素もあり百合としても、SFとしても考察の余地が大きい。
伴名練 「彼岸花」紅坂 紫
冒頭部分でSF要素を含んだ設定が少し明かされるものの全体像は隠されたまま本編に入る、ここで既に読む手が止まらなくなる。本編も交換日記という構成をとることによって2つの視点から2つの思惑、過去が少しずつ絡み合い、最後にたどり着くさまは圧巻。SFと、百合。これまで交わることのなかった2ジャンルがこれでもかと重なり合い「百合SF」の完成形を見せている。
南木義隆 「月と怪物」紅坂 紫
共感覚を持つ少女だけに見える世界にあふれた色彩と、裏腹のソヴィエト連邦の冷たい景色の描写の対比が素晴らしい。設定も物語も緊張感を孕みながらしかし読む者の感情を揺さぶるものを秘めており、女性同士の恋愛とSFを掛け合わせた「百合SF」という新ジャンルの開拓者として相応しい一作。ソヴィエト、ロシアの考証も丁寧になされている。
TVアニメ『ケムリクサ』クマクマベアー
「好きを大切にしよう」これを見た後、私はそんな風に感じました。 最初にこの文で始めたのは、SFとしての要素の前に、先ずはそれを感じて欲しい作品だと思ったからです。その全容は是非作品を見て理解して欲しい。 そして今回取り上げられるべきSF要素ですが、完璧とは流石に言いません。しかし30分でワンクール、12話分の中で描くSFの中では最高峰であると強く推しています。 特に終盤の所謂「答え合わせ」ともいうべき第11話ではそれまでに出てきた謎の要素や何気ない物事が見事なまでに繋がり、その全てに意味があったのだと私達を驚かせてくれました。 そして最後の最後、キャラクター達が困難を乗り越え、どんな答えを得て、そしてどんなラストを迎えたのか…これは是非本編を見ていただきたい。 最後に、私は最高の作品に出会えました。是非とも他の方々にもこの作品に出会って、もし良ければその感情を共有したいと強く思いました。
TVアニメ『ケムリクサ』春夏秋冬巡
主観だが、近年の創作におけるSF流行は魔法の科学化であった。ケムリクサはその逆で、科学の魔法化を行った作品である。異常な現象やその痕跡を説明する設定や理論が、この作品では意図的に完全省略されている。この決断は淀みなく進むアニメーションによって、独特なセンス・オブ・ワンダーに満ち溢れた世界を描くことに成功した。一般的な植物の存在しない常夜の世界。「人の痕跡が不自然に消し去られた」廃墟の島。そんな世界に、突然産み落とされた姉妹たち。安息の地を求めた先の見えない、しかし絶望への悲嘆ではなく互助と尊重に満ちた穏やかな旅路。それらを追っていくうちに積み重なる世界の謎は旅の果てに、物語全体の意味をパラダイムシフトさせ、我々観客に登場人物たちの幸福を強く願わせる。巧みな表現と物語構造、その結末から得る感慨。この王道を征く人間賛歌の物語は、日本SF史に輝かしく刻まれるべき傑作である。
TVアニメ『ケムリクサ』
これは絶望の世界の、優しい物語。1話を見て『ケムリクサ』を気に入ったら、4話までには感情移入してしまう。全てを見終わったらきっとみんなは主人公たちに、そして作者に「ありがとう」と言う。そして霧に包まれたその世界を自らも解き明かすため、自らも『ケムリクサ』に入り始める。ポストアポカリプスの王道を行くような作品でありながら謎と伏線とたくさんの愛で溢れており、『ケムリクサ』に入ってしまった者を掴んで二度と離さない。優しさに溢れたこの『ケムリクサ』を私は推薦する。
劇場アニメ『プロメア』紅坂 紫
主人公ガロ・ティモスと悪役リオ・フォーティアが黒幕クレイ・フォーサイトに立ち向かうため善悪の壁を越えて力を合わせるという王道ストーリーではあるものの、燃やさなければ生きてはいけない新人類バーニッシュ、正義の火消しバーニングレスキューなどといった設定が迫力と面白さを倍増させている。最初から最後までクライマックスのようで、観客の興味を一秒もそらさない。アニメーションとしても素晴らしい出来で、どのコマを切り取っても絵になる作画の丁寧さ、線画の色トレスによって画面全体が明るくなる効果など評価すべき点は数多くある。
TVアニメ『ケムリクサ』匿名希望
未知の物質であるケムリクサを下地にした不思議な世界を生き延びながら探索していく物語で、見る者をその独特な世界に誘い主人公達と一緒に探索しているかの様な感覚に陥らせる構成になっており、難しい事を考えずとも見る者はその世界に惹かれていく。また物語の進行は一見淡々と進んでいる様に見えるが後の展開を鑑みるとその所作の一つ一つは必要不可欠なものばかりであり、更に廃墟や建物といった世界観を構成する要素は必然性や因果関係があってそこにあるものばかり。その為映っているもの全てに無駄なものやどうでもいいものが全く無く、だからこそ見る者が考察する行為そのものに迷宮や遺跡を調査するかの様な喜びが伴う。その物語は人間にとって大事な執着の対象である「好き」が屋台骨に据えられており、老若男女の垣根を越え人類の感性に訴えるものになっている。私達は各々の「好き」を見つけ、そして大事に出来ているだろうか?正に平成末期の傑作
TVアニメ『ケムリクサ』ハラヘリ
好きなものを大事にするという一見すると単純なテーマでありながら各話ごとにキャラクターの繋がりがあり気持ちの変化と共に世界の謎が解き明かされていき、最終話でそれが結実される物語は圧巻されます。 また仕草や声や背景などTVアニメならではの絵や動きなどの世界観の表現も新しくSFにあまり詳しくなくてもその設定や心情などを考えずにはおられませんでした。
TVアニメ『ケムリクサ』名無しの権兵衛
SF作品として、異物との接触。 異なる感覚をもつものとの共感。 何故それがあるのかの伏線。 後半に判明する、異星人との交流。 どきどきわくわくさせるSF作品だと思います。 よろしくお願いいたします。
TVアニメ『ケムリクサ』Uz
 タイトルの「ケムリクサ」とは何か。  モチーフはタバコで間違いがないだろう。本アニメーションは自主制作版を元に作成されているものであるが、自主制作版の方は本作のような葉の形ではなく紙巻たばこと同じ形状をしていた。作中の登場人物に害を為す存在は「ムシ」と呼ばれ、ケムリクサはムシに対し対抗手段となっている。タバコがムシに非常に強い毒があることから着想を得たのかもしれない。  ではケムリクサは武器兵器の類なのか。違う。いわばテクノロジーである。このケムリクサとは何か?という部分が段々と解き明かされていくのが本作の「一部」である。世界の根幹はケムリクサであり、ケムリクサという手段・媒体が全ての鍵となっている。登場人物が何しにあの世界に来て何をやっているのか、そこも全てSF的テクノロジーの概念に寄っている。  本作「ケムリクサ」とは何か。愛すべきSF作品であり、大賞に推薦できるものであると考える。
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塩澤編集長河村葉子
今年も私の大好きなSF作品、小説も漫画もとても素敵なものが沢山あり楽しませていただきました。 でも、その中で作品を支える立場の塩澤編集長の英断には何より感動を覚えました。 日本のSF作品の未来には、塩澤編集長の功績なしには語れないと思います。 是非、今年の受賞を!
塩澤快浩編集長の決断大野典宏
理不尽な事情によって発売が中止になりそうだった文庫版に対して、『僕の文芸編集者としての矜持をこめて、津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』文庫版には、次のようなコピーをつけさせていただくことにしました。「この本が売れなかったら、私は編集者を辞めます。早川書房 塩澤快浩」。よろしくお願いします。』と、相当な覚悟を持ってSF作家の書籍出版を引き受けたことは、SF史で語られる事件だと考えるので推薦します。
伴名練 『なめらかな世界と、その敵』紅坂 紫
2010年代の終わりを確かに感じさせるSFの歴史の積み重ねの上に誕生した作品でありながら、2020年代の始まりをも感じさせる新時代のフロンティアでもある、2019年というこの年の日本SF大賞に相応しい一作。鮮やかで疾走感あるセカイ系SF「なめらかな世界と、その敵」、SFへの愛が十二分につまった「ゼロ年代の臨界点」、伊藤計劃ハーモニーを救い上げながら伴名練ならではの愛情とは何かを描く「美亜羽へ贈る拳銃」、設定と構成が他に類を見ない圧倒的な面白さ「ホーリーアイアンメイデン」、鮮烈なイメージと壮大なスケールを併せ持つ歴史改変SF「シンギュラリティ・ソヴィエト」、そして過去への尊敬も、近未来への憧憬も、かなぐり捨ててただ今ここ、私たちの生きる現在を力強く描ききったまさに「現代SF」の代表作となりうる「ひかりより速く、ゆるやかに」。全六篇すべてが傑作でした。
なるしす TAP動画シリーズ『3つのボタンでカービィボウル』における「3-5 二打クリア予想」の証明浅木原忍
日本カービィボウル学会という団体がある。ニコニコ動画のTAP動画シリーズ『3つのボタンでカービィボウル』から誕生した、ゲーム『カービィボウル』におけるカービィの挙動――《球体力学》を研究する団体だ。2014年9月、この学会においてひとつの予想が提示された。「『カービィボウル』の3-5を、上キー・Aボタン・Bボタンの3つのボタンのみ使用して2打クリアすることは可能である」――このカービィボウル学会史上最大の難問が解かれるのは、実に4年後の2018年9月のこととなる。ひとつのゲーム内における物理学的な挙動、その法則性が徹底的に検証・解明されて学問となり、その中で浮かび上がった証明困難な予想が、4年がかりで肯定的に証明されたという事実は、それ自体がまるでスタニスワフ・レムの作品のごとき知的遊戯だ。カービィボウル物理学と呼ぶべきこの予想とその証明の過程は、敢えて言おう、これこそが究極のSFだと。
TVアニメ『ケムリクサ』トミノソ
いわゆる美少女アニメに属する作品なのですが、世界観はしっかりしており12話の中で深みのあるストーリーが描かれます。 特にキャラクターはテンポの良い掛け合いが繰り返されるうちにこちらも感情移入してしまい、後半はドキドキしてしまいました。 やはりとっつきやすくて(世界観は暗くとも)楽しいSFは良いものだと感じさせてくれます。
TVアニメ『ケムリクサ』岡田
12話構成で放送されたTVアニメです。 その映像から視聴者は崩壊した世界を舞台にしていると思わされますが、微妙な違和感を感じさせつつ物語は進行していきます。 最終的に、この世界が〇であることが判明しますが、視聴者には解らないよう緻密に隠蔽され、終末につれて気づき、その意外な事実に感動します。 ただ、本作はそれが主題ではなく、その実体は絶望世界で生き抜こうとする人間ドラマと思います。出演するキャストはその中にあって人格があり魅力的なキャラです。 そして、その積み重ねは最後に感激する要素になります…。 上記はその極一部ではありますが、SFとヒューマニズムの融合を愛情深く描いたこの作品は、称賛を受けるに値するものであると推薦させて頂きました。 どうか宜しくお願いいたします。
リチャード・コールダー 「控えの間、あるいは、世界小史」荒巻義雄
増田まもるさん訳の怪作であるが、作者は英国の人。日本アニメの愛好家かもしれないと思ったりした。とにかく凄い、いや凄すぎる作品。バラードのようでもあり、カフカのようでもあり、かつ異端宗教的でもあるのだが、内容は別としても、この最高の技法は学ぶべきだと思った。デリダの置換、ずらしなどの技法であるのだが、マニエリスム的であり、シュルレアリスム的でもある。
TVアニメ『ケムリクサ』カタギリ
終末ものだと思わせるミスリード、不穏な世界観からのどこまでも優しく尊いキャラクター達。不快だった主人公が物語が進んでいくうちにどんどん好感を覚え最終的にはその作品で一番魅力のある人物となるなど味わったことのない印象変化。すべてCGアニメながらも人物の動きを細やかに再現しており画面に映るキャラクターたちがその場で生きていると錯覚させられる細部の力の入れ込みよう。そして世界の謎の解明や素性等考察要素がこれでもかと配置されており平成最後の作品にして今までのSFとは味の違うとても斬新な作品だと思います。
TVアニメ『ケムリクサ』ジャンゴ
ケムリクサはその謎めいた世界やケムリクサという謎のガジェットに代表されるように、古典的SFの「未知のものを探求する」というセンス・オブ・ワンダーをストーリーの基軸としています。しかし、そのストーリーが最終的に表現するものは「好き」という生きがい、もっと大きく捉えれば「人の愛」という、非常に王道かつ普遍的なテーマの作品となっています。 SFアニメというとロボットアニメというのが一般的になっている昨今においてこれほどの本格SFが放映され、そして高い反響があったのはSFファンとして非常に喜ばしい事でした。SF復権の兆しとも言える本作を是非取り上げて頂きたいです。
鶴淵けんじ 『峠鬼』編田あつむ
KADOKAWA「ハルタ」誌にて連載中のコミックで単行本現在2巻まで発売中です。陰陽信仰の祖、「役小角」を中心に飛鳥時代を舞台とした倭風ファンタジーでありながら、時間遡行やアカシックレコード的要素など、王道SFの要素を過不足無く取り入れた非常に意欲的な作品となっています。まだまだ名を知られていない筆者の作品ながら、AmazonキンドルのSFコミックスランキングで1位2位を独占しました。
TVアニメ『ケムリクサ』Pi!
荒廃した世界で出てくる3人〜6人の姉妹と突然湧いて出た男が「葉」「水」「好き」を見つける為に多くの障害を乗り越え生きていくSF冒険ストーリー1話から4話までは、男が姉妹たちに警戒されながらも、姉妹の為に命を投げ捨ててまで守ったり、共に悩んだり。「何故そこまでするの?原動力は?」と考えているうちに世界観の美しさ、登場人物の隠しきれない優しさに目が離せなくなります。6話10話11話の先入観を利用した大どんでん返しは必見。光の見えない世界の中に見出す「好き」がとても愛おしく、それが時に牙を剥く、ここまでハラハラドキドキの作品は昨今無かったので推薦します。
TVアニメ『ケムリクサ』慶次
物語の内容は水を求めて旅をしながら敵と戦って生き延びてきた姉妹が謎の少年「わかば」と出会うところから始まります。最初は多くの視聴者が謎の少年に対して悪い印象を持っているとSNSの評価にあり、また物語中でも姉妹がわかばに対して疑いを持っていました。しかし彼の行動や言葉から人となりを知るにあたり、次第に打ち解けていく様子が描かれています。これはSNSでもわかばへの評価が変わっていくこととリンクしており、ケムリクサの表現が人の心に響くものであったと言えます。 全編が愛情や思いやりに溢れており、特に11話にて物語の真実が明かされた時には、ファンの間で11話ショックと呼ばれる現象が起きました。 最終話でも変わることなく愛情や思いやりに溢れた「好き」を求める物語が最後まで貫かれており、自分が求めていた人の心のありようはこれだったと悟り、涙が止まりませんでした。私はSF大賞にケムリクサを推薦します。
TVアニメ『ケムリクサ』ドルフィンズ
けものフレンズで一躍有名になったたつき監督の同人時代の作品のリブートアニメ。 荒廃した世界を「ケムリクサ」を使い「ムシ」と戦い生き抜く物語で、説明もなく生きる為に旅をするという程度の事しかわからないが、話が進んでいくと徐々にわかってくる。だがそれと共にまた新たな謎が見つかり、考えながら見るととても練られている脚本と設定に頭が下がる。
TVアニメ『ケムリクサ』アライ
ケムリクサの中でとても良いと思ったことはケムリクサは世界観は人を喰らう「ムシ」と呼ばれる怪物が街を闊歩しており、いつ死ぬか分からないとても暗いものなのですが、そこに住んでいる6人の姉妹はそういう暗い感じを吹き飛ばすような明るい性格をしており、この世界で懸命に生きようとしている所です。それに誰かを責めたり悪口を吐いたりすることが一切なく、みんな心優しい人達だということが分かります
TVアニメ『ケムリクサ』イワーク9
 1話を初見で見た時は?ばかりが頭にうかび、どのような結末を迎えるかも全くわからなかった。  しかし1話1話で伏線を張り、ある程度はその話のなかで回収していく、また情報を小出しにすることで視聴者が意見を交えたくなる等、徐々に作品の世界に引き込まれた。登場人物一人一人のキャラが確立されており、説明口調やキャラがぶれることなく自然な流れで物語が進んでいくのは何度見ても素晴らしい。  そして最終回前の11話には驚嘆しかない。EDの導入一つで、今までの?と感じたすべてに返答してくれていた。自分を含めた視聴者が放送当時に色々推察や考察をしていたが、すべて監督の手のひらで踊らせていたのではないかと思うほどの作り込みは昨今見たことがない。  登場人物、世界観、構成、そして結末を含めて自分が最も好きな作品であり、平成を代表する作品だと思う。  
TVアニメ『ケムリクサ』在野キズハ
ベタなセカイ系CGアクションアドベンチャーアニメと侮るなかれ。このアニメは、「荒廃した謎の世界の中で水を求め生きていく、ある姉妹たちの物語」というシンプルな世界観の裏に描写された様々な「鍵」を拾い集めた先にある「謎」を視聴者の手で、独自に紐解いていく作品である。今まで、ウェブ出身のクリエイターが制作したストーリー系アニメ作品(葉ノ香~HANOKA~、CATMAN Series 3、デジガールなど)は、無理にテレビアニメのフォーマットに合わせて(Web版に存在したインタラクティブ性の欠如、過密すぎるスケジュールに対する深刻な人材不足による作品クオリティの低下、「声優のプロモーションアニメ」などを理由とする製作会社のなげやりな対応)失敗した感が否めなかったが、本作はそれらの「先駆者」が目指したかった「商業アニメ作品の枠に囚われないフリーダムな作品」という目標を見事に成し遂げたといえる。
TVアニメ『プラネット・ウィズ』浅木原忍
多様性に満ちた社会とは、「正しさ」に満ちた社会だ。世界に無数の「正しさ」が溢れ、ある「正しさ」はたちまちに相対化され、相容れない「正しさ」が日々あちこちで反発し合う今、「正義」をテーマに物語を作るにはどうすればいいのか。『プラネット・ウィズ』はその難題に対するひとつの、極めた優れた解答例である。SFヒーロー活劇という枠組みで「多面的な正義」を描きながら、安易なカタルシスの否定に流れることなく、TVアニメ全12話という尺の中でやるべきことを全てやりきったエンターテインメントとしての驚嘆すべき完成度をテーマと両立するという離れ業を成し遂げた本作は、今年度の大収穫に数えられて然るべき傑作だ。
TVアニメ『ケムリクサ』浅木原忍
本作を監督の前作『けものフレンズ』と同じ、ポストアポカリプス・ロードムービーだと思っていた視聴者は、11話であまりにも鮮やかな背負い投げを食らうことになる。周到な伏線が全て回収され、世界の秘密が解けるとき、登場人物は生まれた意味を知り、視聴者は今まで見てきた物語全ての本当の意味を知る。その瞬間に広がるパースペクティヴ、世界の見え方が全て反転する圧倒的なカタルシスは、最上のSFだけが与えてくれる面白さに他ならない。少年少女が閉ざされた世界の謎に迫る、という古典的でシンプルなSFの筋立てが持つ力を、完璧に計算され尽くした構成によって光り輝かせた本作は、『けものフレンズ』と同様、「SF」のもつ物語の力に対する高らかな凱歌だ。『ケムリクサ』は現代の、2019年のといった枠を超えた「SF」の、「SFそのもの」の傑作なのである。
TVアニメ『ケムリクサ』匿名希望
とても面白いアニメ作品だったと思います。最初は様々な謎を残しながらも荒廃した現代日本を舞台にしているのかと思われていましたが、ストーリーが進むにつれ、少しずつ見えてくる世界の全容…と思いきやさらに深まっていく数々の謎。無人の世界は過去に一体何があったのか。人間はどこへ消えてしまったのか。そして危険が潜むそんな世界で必死に生きる登場人物達。どう見ても人間じゃない身体構造、能力を有しながら、自らを「人」と名乗る少女達。そんな彼女達の前に突然現れた謎の少年。彼らの正体、そして世界の謎が、数々の伏線を経て物語の終盤で一気に時明かされた時の衝撃と、日本、地球に留まらないそのスケールの大きさには驚きと共に大きな感動を覚えました。 また従来の2Dアニメではなく、2Dに限りなく近付けた3Dアニメという新しい試みも、この作品の雰囲気にとてもマッチしており、正しく唯一無二の作品になっていると感じます。
TVアニメ『ケムリクサ』蓮華
減り行くだけの世界で、出生もわからない6姉妹が大切なものを見つけに行く物語。 この世界でヒトと呼ばれる存在は彼女達だけ。 荒廃した島々を巡り、ムシと呼ばれる無機物な敵を退けながら、世界を、自分を知っていきます。 何も説明がない謎ばかり増えていく展開が続き、ああだこうだと考察をするのもこの作品の楽しみ。 しかし真相を知ったとき、どこまでも優しい世界をきっと好きになります。
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TVアニメ『ケムリクサ』Dong Hyeok Cheon
ケムリクサアニメは私に涙を流させて私を感動させました。 私の人生アニメで、たぶん今年のアニメだと思います。 cgアニメコンテストから始まった インディドリームが けものフレンズ炎上を勝って たつきへ 勝利の聖杯を飲ませました。
TVアニメ『ケムリクサ』橙華とっつぁん
文明も他生物も一切見当たらない瓦礫だらけの世界から始まるこの物語は、間違いなくSFとしても高い完成度を誇っています。タイトルにもなっているアイテム扱いのケムリクサは戦闘や生活に活用できるだけでなく、物語の根幹に大きく関わる重要な鍵でもありました。序盤からあちこちに細かく仕込まれた伏線の点が繋がり、多くの謎に答えを示した11話は最早芸術的な構成です。それでいて視聴者に考察の余地も沢山残しているのがまた素晴らしい。シロという作中ではムシ扱いですが、事実上のAIを持つ存在もまたSFとしての要素をしっかり引き立ててくれています。今年のSF作品であれば、胸を張って推薦できるアニメ作品です。
小川一水 《天冥の標》miyo_C
全10巻 壮大なスケールで送るSF大河小説。あらゆるSF的要素を詰め込んだ作品として後世に残したい傑作です。 10年という長期の執筆の中で、それの書かれた時代背景も反映しながらエンタテインメントとしての醍醐味も存分に盛り込まれ、ヒトとは何かを問い続けた作品であります。21世紀第1四半世紀の傑作として日本SF大賞にエントリー作として推挙します。
TVアニメ『彼方のアストラ』miyo_C
次々に襲いかかる、少し懐かしいSF的危機を少年少女が乗りこえていくジュブナイル作品として、少年ジャンプに連載された上でアニメ化された作品。 現代的なキャラクター造形もあり、令和SFアニメのひとつとして推薦します。
TVアニメ『ケムリクサ』陽向
この作品は、荒廃した世界で、姉妹と一人の青年が水を求めて旅をする物語です。行く先々では姉妹を襲う虫(ムシ)が現れ、他にも様々な危険に見舞われますが、果敢に立ち向かって行きます。私はこの作品で、何も無く、誰もいない世界を旅する緊張感の中で、姉妹が常に助け合う優しさに惹かれました。そしてそうした人の感情の機微を、たつき氏はとてもうまく表現されています。一見すると見たことあるようでも何かが違う、そんな世界観も魅力的です。ここはどこなのか。姉妹は何故危険な旅を強いられているのか。青年は何者なのか。最後には「好きなこと」を大事にする事を知れる素敵なアニメです。
TVアニメ『ケムリクサ』匿名希望
キャラクターも他のアニメ作品と比べても少なめで背景も暗めですが、世界観の作り込みに関しては一際特筆すべきものがあると思います。 今どき王道のSFはなかなか見ないというか作られてないと思いますが、この作品を見るとやっぱり自分はSFが好きなんだなだと思えます。
TVアニメ『ケムリクサ』道路標識
まずケムリクサと言う謎の道具が面白いです。色ごとに効果が違う葉っぱのような道具でミドリは治癒、キイロは明かり、アオは壁、ウスイロは食料、他にもさまざまな色がありワクワクします。 そして特徴的な姉妹たち、記憶のないわかばと言う青年もすごく面白い。 青年は何処から来たのか、一体何者なのか、姉妹はヒトなのか、何故アカムシは姉妹たちに襲いかかるのか、島を隔てる壁はなんなのか、赤い木は何故生まれたのか、何者かの意図があるようなこの世界はなんなのか! 全てがこのケムリクサと言うアニメの終盤に明らかになり、そのカタルシスは私の中で何事にも変えがたい!私の中で最高の作品です! ケムリクサを語る上で外せないのは姉妹や青年の『好き』です。 姉妹たちや青年が好きをもっていながらも姉妹の一人であり、ケムリクサの主人公でもあるりんは好きを見つけられずにいます。ケムリクサはそんなりんの好きを探す物語でもあります。
TVアニメ『ケムリクサ』ひいらぎ
私がこの作品を推薦する最大の理由は、制作陣独特の、先進的で革新的な世界観にあります。既存の文法に囚われない独自の設定、価値観に基づいて描かれるその世界において私達は、人の定義、法、ジェンダー、物事の優劣、貴賤、その他あらゆるものに対する認識を根底から覆されます。死と絶望が当たり前のように付き纏うその素朴な廃墟の中で、登場人物達はむしろ私たちよりも余程自由で縛られていないのです。そして何よりも、正義、道徳、倫理、宗教、思想、幸福、愛、恋、趣味等々、あらゆる言葉で表現される人間社会においての多くの迷妄の根源達を、『好き』というたったの一言に集約させ、人の、否、生きとし生けるものの在り方を明快に示して見せたのには脱帽です。視る者の先入観を悉く排除し、全く新しい世界を構築させる。まさしくこれがなかった以前の世界が想像できない、日本SF大賞に相応しい作品であるとして推薦させて頂きます。
TVアニメ『ケムリクサ』猫のヒゲ
荒廃した町で生活している姉妹。世界は薄暗く生きていくのに必要な水が手に入りにくいうえに姉妹の命を脅かす敵もいる。 この作品のは不気味で不思議な雰囲気から始まります。多くの謎がありますが、それを視聴者に説明することはありません。 しかし、登場人物の行動を見ていると少しづつ謎が解けます。話が進むと謎が解け、そして新たな謎が生まれます。視聴者を強く惹きつける作品です。 この作品を最後まで見た人は共通の認識を持つと思います。謎が多く複雑に思えたストーリーが実は驚くほどシンプルなものだったと。 この感動を多くの人に知ってもらいたいです。
TVアニメ『ケムリクサ』赤木茜
謎の物体「ケムリクサ」が大きな鍵となるダークで荒廃した世界観が印象的な作品。キャラクターデザインだけでなく背景美術の美しさ、複雑に練り込まれた設定、キャラクター同士がまるで生きているかのように感じさせる声優の演技の魅力など、近年希に見る「歯ごたえ」をとても感じるアニメです。この物語における「好きを見つける」というテーマは視聴者にも語りかけてくるように感じます。
TVアニメ『ケムリクサ』スギコウ
推薦した理由は大きく以下の2つによるものです。1つ目は非常に凝って設定、物語が作られていることです。ケムリクサは最初の世界観説明がなく全て物語を観て自分で考えなければなりません。これが成立するのは見えないところの設定まで綿密に作られているからに他なりません。2つ目の理由は考察をしたくなる物語だからです。考察はアニメが始まり回を増すごとに加速度的に増えていきいました。そして11話、それらが開示され、その瞬間全てが見える、人生でそうそう味わうことのできない快感で包み込まれるのです。その感覚はまさにSFの最大の魅力そのものでした。もしSF作品に興味が出てきたという方がいたら、速攻でケムリクサを勧めます。なぜならケムリクサの主題歌KEMURIKUSAの歌詞の一節、そのままの体験ができるからです。“Finding my LIFE in the KEMURIKUSA“
TVアニメ『ケムリクサ』夏朋
人々が突き動かされる上で最も強い動機とは何か? その問いに以前ならば「愛」や「夢」といった言葉を答えとしただろう。しかしケムリクサを視聴した後では「好き」という価値観に答えが置き換わると私は確信する。 ケムリクサの物語のテーマは「好き」である。 好きとは万物における動機の根っこだ。食べる事、聞く事、守る事。それらは好きを理由に取捨選択されていく。他者を傷付ける事も「好き」によって自己肯定されてしまうかもしれないが、もしもその動機の裏にさらなる「好き」が存在した場合、別の見方が生まれるだろう。 ケムリクサのストーリーは決して奇抜なものでない。だが視聴者は一様にして物語の展開に度肝を抜かされてしまう。何故なら視聴者の当たり前の期待を裏切る事なく納得出来る全体図に仕上げているからだ。 人々の「好き」の果てにあるもの。それは幸か、不幸か。謎多きケムリクサの世界で是非とも確かめていただきたい。
TVアニメ『ケムリクサ』Zumi_Mod
物語を通して少しづつ、現代世界から時間が経過した未来の姿を感じさせることから始まり、「なぜ?こうなってしまったのか?」という解答を探すため作品中で起こる奇妙な現象と実際の現象の似通った要素に「もしかしてこれが元ネタ?世界はこうなってしまったのでは」という科学的見地から作品世界を想像して楽しめる点を最も評価しています。 お話が最終話を迎え完結した後も、類推して楽しむ娯楽として一切陰ることがなく、見返すたびに新しい発見があり非常に知的好奇心がくすぐられました。
TVアニメ『ケムリクサ』※どらけー
たつき監督の細やかな演出や伏線、 魅力的なキャラクター達など、どこをとっても凄いと思います。 10話までの積み重ねてきた伏線が最終話辺りで徐々に回収される様子はとても満足感が満たされるものでした。全話終わった後でもTwitterで短編アニメなどを投稿して本当にファンの為に頑張ってくださってる監督だなぁと思いました。irodoriの次回作を楽しみに待ってます。本当にありがとうございました。
TVアニメ『ケムリクサ』スナッパーマン
"荒廃した世界で少年少女が出会い、生き残るために旅をする、というわりとよくあるテーマで最終的な結末も王道と言える作品です。 しかし王道の中に外連味とオリジナリティを両立させている作品でもあります。 キャラの出自や世界観の謎、先入観を利用したいくつかの叙述的な仕掛け、終盤のどんでん返しとそこに至るまでの細かな伏線、作品を通したテーマとメッセージ、これら全てをたった12話の物語の中に無理なく落としこんだ構成は見事でした。 少人数体制でおそらく低予算のCGアニメのため画づくりに粗はあるものの、だからこそ出来たであろう工夫と配慮による演出も評価しています。 様々な要素を踏襲しつつも新しさと独自性に溢れる、既知と未知の入り乱れた唯一無二の作品でした。 "
TVアニメ『ケムリクサ』あかさたなX
廃墟しかない世界で減っていく水を糧に姉妹がどう生きていくか、ポストアポカリプスの冷たい世界でどういった感情が錯綜するのか。話の各所に登場する謎のアイテム"ケムリクサ"、姉妹たちの行動を阻むアカムシという存在。終末の世界が好きな方に推したい物語です。
TVアニメ『ケムリクサ』リリ猫
赤霧に呑まれた荒廃した世界で生き残るために姉妹達が旅をするSFストーリー。ある時、りん、りつ、りなの姉妹は謎の少年わかばと不思議な出会いをし、荒廃した世界を生き残る旅をし、りん達に立ちふさがる問題を解決していき、この荒廃した世界の謎を紐解いていく。この自然な流れがとても好感を持てるため推薦しました。
TVアニメ『ケムリクサ』むつぎはじめ
優しさを根源とするバイオハザードの起きた、ある種陰鬱な閉鎖世界を舞台に、一転温かみのある造形のキャラクターで、どこまでも真っ直ぐに愛と冒険とボーイミーツガールを描いたこの作品は、卓抜した出来と思います。
河合莞爾 『ジャンヌ』山田恵理子
書店員になって以来の大興奮!2019年〜私は駆け抜ける『ジャンヌ』と!そんな熱い思いにさせてくれる長編SFサスペンス超大作です。舞台は近未来…リアリティを持って迫りくるAI化の波。ジャンヌには心があるのだろうか?心は繋がるのだろうか?銀河からのように、高速の光で解き明かされる真実に、私たちは、心ふるえる…。面白すぎて、ページをめくるのももどかしく一気読み。なぜ、このタイトルなのか⁈ジャンヌのいる世界に、私はぼろ泣きしてしまった。読んだら語らずにはいられない、史上最強のAI『ジャンヌ』は、まるでハリウッド映画を観ているようなスケールとスピード感と爽快感で、わくわくがとまらない。ラスト1行に、驚愕の結末と未来が待っています!!!
蛙田あめこ 『女だから、とパーティを追放されたので伝説の魔女と最強タッグを組みました』(1・2巻)矢田和啓
女だからという理不尽な理由で冒険者パーティを追放された魔法剣士のターニャ、伝説の魔女ラプラス、回復術士のナディーネがパーティを組み、それまで女だからと遠ざけてきた男たちにガツンと一発食らわす痛快ファンタジー。2巻ではキャサリンが加わり、永遠の生命を手に入れようとするラプラスの宿敵マクスウェルとの華やかな対決が繰り広げられる。魔術の可能な世界でありながら背後には科学的なエッセンスを取り入れており、ジェンダーの垣根を超える非常に優れた小説である。
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大森望・日下三蔵編 《年刊日本SF傑作選》辰.遠.
2007年から2018年まで、各年に発表されたSF短編の再録アンソロジー。傑作選であるから、収録作品のクオリティは言うまでもない。収録作品の初出媒体も商業誌から同人誌、漫画媒体、電子書籍専売、イベント用書き下ろし作品まで極めて手広くカバーされている。文庫で刊行されている以上、クオリティでは申し分なくとも収録されない作品は当然存在するが、それらは推薦作リストとしてフォローされている。短編の場合、再録のない作品は後からの参照が困難であり、こういったリストは貴重である。各巻の日本SF界概況や創元SF短編賞と併せ、各年の日本SFの有力な資料となること疑いない。SF界では「SFは衰退した」との言説が回遊魚の如く繰り返し巡る。感じ方は当然人それぞれある。けれども、少なくとも2007年から2018年までの話であれば、このシリーズを差し出すこと、それだけで十分な反証になるのではないかと、そう考えている。
ぽんきち 『エターナロイド』矢田和啓
SF作品において従来主流であったAIから離れ、拡張知能Extended IntelligenceやQSPRの普及した、性愛を疑似体験できるために自分のセクシュアリティがわかるという、独特のジェンダー観を持った世界を描いた。
TVアニメ『ケムリクサ』矢田和啓
ケムリクサという不思議な媒体を使って謎を解き明かしていく様が、現実にスマホ端末で検索して謎を解き明かしていく姿に擬えているようで、とても興味をそそられる。たつき監督の作品の中では、もっともSF要素の強い作品であり、またファンタジーの風合いもある冒険もので、徹底的に構築されている独自の異世界を築いている。
山口優 「ボディランゲージ」矢田和啓
饅頭のような白い異星の生命体の伝える手話を思わせる現実離れしたコミュニケーションによって、作品世界の背景に横たわる異星と異性というシニフィエの結節点をアクロバティックに跨ぎ、ジェンダーの垣根を超えようとした。
宮内悠介 『偶然の聖地』矢田和啓
作品に注を付けるという前衛的な手法を発展させ、世界医という世界のバグを修復する特殊な職業の顕現する作品内に、作者独自のテクノロジカルな思想を介在させ、自伝的でもありファンタジックでもあるボーダレス/ジェンダーレスの小説世界を描いてみせたこと。
人形使い 『木曜日には血の雨が降る』矢田和啓
現代世界に似た架空の国の闘争を、リアリスティックに素描しつつ精神分析やサピア=ウォーフ言語学への洞察を加え、巧緻で真新しい文体でもって思想的な強度のある真の表現に肉薄したため。その独自の作品世界から見える境地は澄んでいて、素晴らしい読後感をもたらしてくれる。
犬村小六 《やがて恋するヴィヴィ・レイン》タニグチリウイチ
空から墜ちてきた少女を義妹にしたものの極貧の生活で失った少年、ルカ・バルカが義妹の「ヴィヴィ・レインを見つけて」という願いを叶えようと王国の兵士になり、本で得た軍事知識を活かして成り上がっていく戦記物として始まった犬村小六のシリーズが『やがて恋するヴィヴィ・レイン7』で完結。巻を重ねるごとに世界が3000mもの崖で3層に隔てられ、中層グレイスランドは科学文明を発達させた上層エデンに抑圧されていて、そんな状況を変える可能性が下層のジュデッカにあることが分かって驚かされた。奇妙な構造を持つ世界がどうして生まれたのか。そんな世界を変える鍵となるヴィヴィ・レインとは何者か。作者によって創造された独特な世界ならではの社会や政治や軍事の描写が深い。多大な犠牲を払ってでも信念を貫こうとするルカの決断にも考えさせられる。そんなシリーズだ。
小田雅久仁 「よぎりの船」樋口芽ぐむ
100枚強の中編ながら、異常な緊張感の中、巧みな語り口とスパイス的なユーモアでユングの言う原型を思わせる死の形を描いて見せた傑作。川端康成賞があればジャンルを越えて受賞レベルにあったことを確信。それからこの傑作が西崎憲氏主宰のインディレーベル、惑星と口笛ブックスが配信した電子書籍・『万象』から生まれたことも時代の転換期を感じさせて推します。
大森望・日下三蔵編 《年刊日本SF傑作選》牧眞司
"この8月に刊行された『おうむの夢と操り人形』にて、このアンソロジー・シリーズも完結。筒井康隆《日本SFベスト集成》のコンセプトを継承しながら、21世紀の日本SFについて広い視野を拓いてくれた功績ははかりしれない。いまから10年後20年後、時代を経るに従って、その意義は増していくはずだ。 12冊まとめて、また創元SF短編賞のプラットフォームとしての意義を加味して、「日本SF大賞特別賞」が相当だと考えます。"
藤井太洋 『ハロー・ワールド』牧眞司
"ネット時代の「自由」と「公正」をどう保証しうるか? この作家は、現代SFとしては珍しくポジティブな可能性を描きだす。希望的観測にとどまらない、技術ディテールと現場感覚が伴っているのが出色。作中で用いられるのは空想的な超テクノロジーではなく、いま現実にあるツールやメソッドだ。 こちらで書評しています。 http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2018/11/13/172851.html "
小川一水 《天冥の標》牧眞司
"壮大で複雑な人類未来史。ブルース・スターリング《シェイパー/メカニスト》を凌駕している。また、生命進化についても、クラーク/小松左京的な垂直的なものではなく、ベルクソンの「創造的進化」を思わせるところが、SFとしては新しい。 こちらで書評しています。 http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2019/03/12/122228.html "
酉島伝法 『宿借りの星』牧眞司
"この作者ならではの異様生態系描写/異様語彙SF。見知らぬ器官を持って、不思議なエコロジカル・システムを営む生命を、余計な設定説明抜きにして描きだし、読者のイマジネーションを強烈に惹起する。それでいて、物語になんとも言えぬ愛嬌があるのだ。 こちらで書評しています。 http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2019/04/02/120702.html "
宮内悠介 『偶然の聖地』牧眞司
"三百を超える「註」がついた破格の小説。ルネ・ドーマルの傑作『類推の山』を彷彿とさせる出だしから、どんどんギアチェンジして、「スパゲッティコードとしての世界」という宇宙観に至る。吃驚唖然の宮内ワールド! こちらで書評しています。 http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2019/05/14/115736.html "
菅浩江 『不見の月 博物館惑星2』牧眞司
"この作者の特長は、「私たちにとって身近なモチーフ」「興味を牽引するミステリ的な小説構造」「物語のなかに自然と立ちあがる根源的なテーマ」だ。つまり、あらゆる読者にとって取っつきやすい一方で、SFを読みつけたマニアを唸らせる奥行きがある。それが十全に発揮されたのが本書。 こちらで書評しています。 http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2019/05/21/173319.html "
上田早夕里 『リラと戦禍の風』牧眞司
"吸血鬼、人狼、魔物といったファンタスティックな存在の系譜と、生々しいヨーロッパ史を重ねあわせ、欧州戦争以降の「止められない戦争」の意味、私たちにとっていまなお切実な状況を問い直した問題作。ドッペルゲンガーの主題においても、いままでになかった展開を見せる。 こちらで書評しています。 http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2019/06/11/104037.html "
伴名練 『なめらかな世界と、その敵』牧眞司
"巧緻な設定・アイディアによる思考実験と、アニメ的ともいえるキャラクター造型の瑞々しい青春ドラマを、みごとに接続してみせる。きわめて高品質のSF短篇集。題材においても物語の構成においても、またスタイルも作品ごとに趣向を凝らしており、その構想力・表現力には舌を巻くほかない。 こちらで書評しています。 http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2019/08/20/120937.html "
TVアニメ『ケムリクサ』神鳥谷カヲル
オリジナリティ溢れる設定、一見淡々と進んでいるように見えてあちこちに謎が埋め込まれ、それらが終盤で一気に繋がり見る者を全く違う世界へと連れて行く巧みな構成、そして希望とさらなる物語の予感を秘めたエンディング。何も考えずに見ても楽しめ、かつ、深く考察しようと思えばいくらでも深掘りができる緻密で重層的な作品。紛うことなき傑作。
ひびき遊 「電脳世界の片隅でナイアーラトテップはバ美肉する。」匿名希望
タイトルでの出オチ感でもう笑える短編だが、千の貌を持つNyarlathotepがヴァーチャル世界で美少女ユーチューバーになる衝撃! 今の時代だからこその作品だろう。ユーチューブの配信動画を意識した構成も面白い。クトゥルーとSFの相性はよかったのだと思わせてくれる快作。ぜひ一度は読んで欲しいのでこちらで推薦する。
劇場アニメ『天気の子』マリ本D
『君の名は。』で記録にも記憶にも残るスマッシュヒットを成し遂げた新海誠監督の3年ぶりとなる新作長編映画は、天気にまつわる“世界の秘密”を巡って繰り広げられる少年と少女のジュブナイルSF。固有名をふんだんに用いて描かれる雨の街となった東京の姿はほの暗くも非常に鮮やかで、描写力の更なる深化が感じられるのも見所の一つ。所謂“セカイ系”の系譜と見るか、それともそのアンチテーゼとして見るか、人によって立場は変わるだろうし、その違いは恐らく後に続くこの作品のエントリーにも表れるだろう。なので私のエントリーでは主題歌の歌詞になぞらえた文で締めるにとどめる。“愛にできること”はたぶん向こう見ずに何かをしようと行動に移させることである。しかしそうであるとして、今の私たちには向こう見ずにでも何かをしようとする姿勢がまだ残されているのだろうか?
映画『映画刀剣乱舞』マリ本D
2015年からサービスを開始したゲーム『刀剣乱舞』は、その多様なコラボやメディアミックスによって直接プレイしていない人々の間でも高い知名度を誇る作品であり、本作はそのメディアミックスの一環として発表された実写映画である。まず今まで『刀剣乱舞』に触れてこなかった人々のために簡潔ながら見応えのある世界観説明で観客の心をグッと掴む時点でエンタメ作品としては諸手をあげたいのだが、過去への介入により歴史改変を目論む勢力との戦いを通じて“歴史と向き合うということはどういうことなのか”を主題とする歴史改変モノSFとして非常に真摯な作品でもある。またさらにそこから、メタな視点として“我々はどのように歴史改変モノを楽しむべきか”という問いかけもあると見なせよう。歴史修正主義者と戦う刀剣男士たちが一体何を守ろうとしているのか、嘘とまことが入り混じる現代において我々はその姿から何を得ることができるだろう。
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