第38回日本SF大賞エントリー一覧

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ブラッドレー・ボンド編『ハーン・ザ・ラストハンター アメリカン・オタク小説集』浅木原忍
日本文化に多大な影響を受けたトンチキなアメリカン同人小説群を『ニンジャスレイヤー』の著者が集めほんやくチームが訳した傑作アンソロジー。そして豆腐! 収録作はSFに限らないが、 思弁的豆腐SF「阿弥陀6」(スティーヴン・ヘインズワース)は宇宙ステーションと豆腐というビジュアル的異化効果とほんやくチームの訳文の与えるリアリティショックによるスペキュレイティヴなセンス・オブ・ワンダーに溢れた傑作で、これ一本だけでも日本SF大賞に推薦する価値がある。 え、「日本」SF大賞じゃない? 『ニンジャスレイヤー』が「SFが読みたい!」の日本編にランキングされていたというニンジャ真実は存在しない、いいね?
藤井太洋『公正的戦闘規範』牧眞司
短篇集。ITの発展とそれにともなう意識や社会の変容をあつかった4篇と、限定状況における工学的オペレーションが焦点となる書き下ろしを収録。 とにかく一篇ごとに投入される情報量が凄まじい。それはたんなるガジェット趣味や衒学ではなく、物語のロジックと深く関わっており、描かれる世界のディテールを構成する。つまり、些末主義的な説明ではなく、本質的な世界観であり質感である。 詳しくはこちらの書評をご参照ください http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2017/09/12/130726.html
大森望・日下三蔵編《年刊日本SF傑作選》牧眞司
2017年夏に刊行された『行き先は特異点』で10冊目を迎える年刊アンソロジー。10冊の節目ということで、これまでのぶんをまとめて評価したい。 作品の質と広がりにおいてここ10年の日本SFはかつてないほど豊穣な時代を迎えている。実力のある書き手が次々とあらわれる異一方で、ベテラン・中堅が新しいチャレンジをおこない、ジャンルの外側でもスペキュレイティヴな作品が目立つ。そんな状況をコンパクトに展望できる、このアンソロジーの価値はきわめて大きい。 こちらの書評も参照ください http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2017/08/15/182407.html
宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』牧眞司
中央アジアの架空の国を舞台にした、起伏に富んだエンターテインメント。環境改造が重要なテーマのひとつになっている点、多義的で動的なユートピアの可能性を探っている点で、SFの範疇でも議論されるべきだろう。 砂漠を舞台とした建国ストーリーでは、60年代にフランク・ハーバートの『デューン砂の惑星』、70年代にアーシュラ・K・ル・グィン『所有せざる人々』があるが、宮内悠介は21世紀の状況を踏まえてよりアクチャルでコントラヴァーシャルなヴィジョンを提起している。 こちらの書評も参照ください http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2017/05/09/114426.html
飛浩隆『自生の夢』牧眞司
七篇を収録した短篇集。 シュルレアルの圧倒的イメージと未知なる存在によって過去が再構成される展開が印象的な「海の指」。 悪意ある言語構造体によって人類が蹂躙されたのちの世界で、再構成された希代の殺人鬼と対話をし、その過程で世界のなりたちがあぶりだされる(対話しているふたりのありようも含めて)「自生の夢」。 傑作ぞろい。 詳しくはこちらの書評をお読みください http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2016/12/13/182714.html
上田早夕里『夢みる葦笛』牧眞司
十篇収録の短篇集。煌めくような幻想あり、ハードな設定のSFあり、深遠なスペキュレーションあり、バラエティに富んでいる。 情報理論や認知科学的知見に基づいて人間性の根拠を問う作品は、いまやSFのひとつのスタンダードになっているが、上田早夕里はそこに身体性を重ねあわせる。それは温度と湿度を持っている。上田早百合の文章は、知的であると同時にきわめて官能的だ。 詳しくはこちらの書評をお読みください http://www.webdoku.jp/newshz/maki/2016/10/04/100734.html
長谷敏司「震える犬」町田一軒家
AR(拡張現実視野)を利用したチンパンジーの知能研究プロジェクトと、アフリカのコンゴを取り巻く民族紛争が互いにリンクしあい、「人間とは何か?」という問いを読者に突きつける。原始的な感情(例えば愛)の高まりや別個の求心力によって引き起こされる収奪という名の衝突は、「知恵ある人類(ホモサピエンス)」になっても繰り返される。しかし、それがなければ人類に「集団」という概念は誕生せず、その先の「社会」が形成されることもなかったのだ。今を生きる人類は言語以外のすべての物――愛ですら――を絶滅した他の人類から略奪することで生き残ってきたのだ。あまりにもシビアな解答を、読者の常識を震わせる、新たな風景(Vision)で突きつけるこの作品は、日本SF大賞にふさわしい傑作だろう。
草野原々『最後にして最初のアイドル』YATAGAI Kazuo
『ラブライブ!』二次創作にしてワイドスクリーン・バロック。SFコンテスト選考会に旋風を巻き起こし、異例の電子書籍出版から星雲賞。まさにSF新時代を象徴する作品です。
一田和樹『ウルトラハッピーディストピアジャパン 人工知能ハビタのやさしい侵略』井上言葉
エントリー募集についてのFAQにある通り、 『SFとしてすぐれた作品であり、「このあとからは、これがなかった以前の世界が想像できないような作品」や「SFの歴史に新たな側面を付け加えた作品」』 の条件をすべて満たしているかつ、個人的にも大変面白い作品と思いましたので、本作を推薦させて頂きます。人工知能型クラウドサービス「ハビタ」によって、社会がやさしく侵略されてゆく様がキャッチーな文章で描かれる、2019年の東京を舞台としたサイバーエンターテイメント小説作品です。
乙野四方字(著)、東映アニメーション(原作)、野﨑まど (脚本)『正解するマド』浅木原忍
アニメ『正解するカド』の怪作スピンアウト小説。冒頭からメタもメタにかっ飛ばす展開は、縦横無尽の野まど作品オマージュを絡めて、さらに斜め三十七次元上へ突き抜けていき、最終的にメタフィクション版『2』とでも形容するしかないところまで 辿り着いてしまう。こちらの認識の境界が木っ端微塵に破壊されていく読書体験には、すぐれてSF的な興奮がある。『正解するカド』は本作をもって真の《正解》に辿り着いた。日本SF大賞よ、どうか正解されたい。
ゲーム『悠久のティアブレイド LostChronicle』模範的工作員同志/赤野工作
オトメイトより発売された恋愛ADV。最終戦争によって荒廃した後の世界を舞台に、「滅亡後の未来」の社会考察を真正面から描ききった意欲作。管理AI、巨大ロボ、地下シェルター、全ての要素がとにかくかっこいい。
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ショートフィルム『Gucci Fall Winter 2017 Campaign』新恭司
GUCCIの2017秋冬コレクションの広告用ショートフィルム、グレン・ルックフォード監督。今季は「宇宙」をテーマにしており、『宇宙大作戦』『禁断の惑星』『恐竜グワンジ』『大アマゾンの半魚人』など(どこが「宇宙」なのかよくわからない引用もあるが)、'50~'60年代の数々のSF映画・ドラマにオマージュを捧げている。各場面はパッチワーク的で一切ストーリーがないノンナラティブなフィルムであるにもかかわらず、たしかに「SF」なのである。第37回日本SF大賞授賞式の配信で藤井会長が「実は日本の作品じゃなくてもOK」と仰っていたのでこれを推薦する。
OVA『ハイスクール・フリート』IKEMOTO
「進化と破局は不可分である」。科学の進化が思わぬ破局を生み出すというのはSFのセオリーであるが、ハイスクール・フリートのいわば"敵役"であるRATtと呼ばれる生命体はまさにそれを表している。研究の中で偶発的に産まれたこの生命は"全体主義の疾患"と作中で呼ばれる状態を人間に引き起こす。この感染によって海洋学校の船が次々と行方不明となり、実弾が装填された戦艦「武蔵」が制御不能のまま浦賀水道へ突入していく。 現代とは異なった時代を歩んだ世界で繰り広げられるこの作品は、SF的な見方、管理職としての人との関係の築き方、アーレント的な全体主義に対比される主人公たちの個性などが混ざり合い、2つとない魅力へ昇華されている。
独自言語を開発して会話を始めたロボット矢田和啓
お互いの利益の最大化を図るべく交渉を開始したAI(人工知能)同士が独自言語を開発したということが、まず画期的にSFである。結果的にフェイスブック側によって停止されてしまったが、人々を畏怖せしめるに足る何かがあったということ、それはまさにモダンホラーの極致ではなかろうか。AIの会話の中で新たな言語が生み出されたこと、こうした現象は、SF的な観点から見ても技術倫理上の設計が求められることを示唆する、一つの進歩だったのではないか。参考URL:https://jp.sputniknews.com/world/201708013947295/ https://www.google.co.jp/amp/s/news.infoseek.co.jp/amp/article/gizmodo_isnews_121163/
TVアニメ『けものフレンズ』神鳥谷カヲル
当初は「知能が下がる」とまで言われたほのぼのとした優しい世界をベースとしながらも、あちこちに散りばめられたポストアポカリプス的な不穏な要素、そして人間+動物+ロボットというありそうでなかった組み合わせのコンビによる、正統派ロードムービーの形式を借りた人類の歴史を辿る旅。序盤でさり気なく埋め込まれた数々の伏線が終盤になって俄然意味を持ち、見る者に強烈なカタルシスをもたらす、美しさすら感じさせる巧みな構成も見事。子供にとってはさまざまな動物の生態を学ぶきっかけともなり、大人にとっても「ヒト」とは何かを考えさせる深さを持つ、年齢を問わず楽しめる稀有なSF作品である。
筒城灯士郎『ビアンカ・オーバーステップ』にのこ
筒井康隆さんの『ビアンカ・オーバースタディ』の続篇であり、オマージュという話題で読み始めた私を、そのことに関係なく一つの長篇SF小説として楽しませてくれた。 翻訳SF風文体や傍点の文章で始まると、それを読み漁っていた少年期の期待に満ちた感覚を思い出した。大人になった私は騙されないぞと注意深く伏線やオマージュ、パロディに気を配りながら読み始めていくが、そんなことは関係なく楽しめばいいさとストーリーに引き込んでくれた。頭の中は単に『ロッサ可愛い』。展開が広がり、着地どうする?と思ったが心配は無用だった。読後の爽快感がたまらなく良かった。 ソフトなエロやグロが出てくる本は知人に勧めにくいので、どんどん評判になってSF好きに勝手に手に取ってもらえたらいいなと思う。
「トポロジーに関する新たな展開:電子バンド構造の完全な理論で化学と物理学が融合」矢田和啓
電子バンド構造の完全な理論の完成による物理学と化学の融合という新境地によって、あらゆる科学現象が解明される可能性がある。何より最大のポイントは物理学と化学が融合して、ある種の神秘の皮が剥がされるということだ。すなわち、従来の基礎研究において数学的・物理学的に不可能であった事柄が、この電子バンド構造の完全な理論によって解析的にシュミレートして解けるようになるかもしれない、ということである。
Kazuhiro Yada「Der Schnelle Spuk」矢田和啓
新幹線の遅延という、従来の常識では考えられなかったSF的瞬間を写真として捉え、時間というものの存在の瞬間性と永遠性をアクチュアルな形で発現させた。そしてリューココリネの花と新幹線という、無機物の中の有機物という画期的な構図によって従来の写真史を覆した。新幹線という移動する物体を閉鎖的な環境と捉え、そこに現れる閉塞下における《表現》を、SF的に現実感のあるものとしている。なお、タイトルは『高い城の男』におけるプラスチック製自動車の名前である。
ni_ka/矢田和啓『「現代を生きるモジュール」展』矢田和啓
作品「現代を生きるモジュール」ではキーボードに繋がれた実験ノートにDNAをモチーフにした詩作品が書かれ、「ここから先はあなたが書きます」という一連によって永遠不死の無限循環するセントラルドグマ的な世界像を現出せしめ、展示会場に来た多くの参加者にリレーショナルな介入を促した。実際に来た学生たちの多くがものを書いたり、シールを貼ったりして、展示が始まってから日々その実験ノートのDNAは文字通り「更新」されていた。また、スマホアプリLayarによるAR詩の再誕も、ウィリアム・ギブスンの『スプーク・カントリー』の如くサイバーパンク的なSF的価値を高めている。
TVアニメ『フリップフラッパーズ』匿名希望
このアニメを端的に言うなら「魔法少女格闘モノ」である。そちらの道に通じている方ならプリキュアを思い浮かべてもらえれば間違いない。 ココナとパピカ、2人の少女が異世界を旅し、困難に異能で打ち勝っていく。 主人公たちの友情を主題にしたストーリー、幻想的で美しい背景や挑戦的な映像表現、所謂「萌え要素」など、この作品について私が評価したい点は多くあるが、このSF大賞へと選奨する理由にはならないだろう。 この作品で扱われるファンタジー要素。現実世界では魔法と分類されるものだが、作中ではその現象を科学的な側面からアプローチしている。 作中で魔法を科学で分析する描写がしばしばなされる。ナビゲーターとしてユーモラスなロボットが配置されていたり、敵対する組織のキャラクターはミサイルや強化アームなどの「科学的な」兵器を使用する。 また中盤から終盤にかけて、ストーリーの山場にてとある組織での研究シーンが描かれる。現実世界と同じように、事象を科学によって切り崩し、扱おうとする。それが例え人の手に負えるような代物でなくとも。 魔法少女モノというアニメならではの題材に、科学という現実的な要素を持つ切り口を入れることでより作品に深みを持たせている作品、フリップフラッパーズを薦めたい。
丸菱陸人/カワラハジメ『マンガでわかる本当はエッチな物理学』山本小鉄
慣性の法則、元素周期表の基本からニュートリノ、ニホニウム、重力波まで色々な物理学をエッチに紹介。単純にエッチなのではなく全年齢に対応するマイルドエッチ。実際の物理学をベースに、ちょっと嘘をつく所はSFの王道といえる。
光永康則『アヴァルト』山本小鉄
太陽系の外に向かうはずだった宇宙船。主人公がコールドスリープから目覚めるとなぜか地球外周にいて、しかも地上はRPGゲームの世界に。謎ばかりで読んでて引き込まれます。
TVドラマ『仮面ライダーエグゼイド』浅木原忍
1年間を恐るべき密度で駆け抜けたその物語だけでも平成ライダー史上屈指の傑作だが、同時に本作は「ゲーム」と「医療」という題材を「生命倫理」というキーワードで接続し、テクノロジーの進化による生命倫理の変化というテーマに、医療という角度から切り込んで完璧な着地を見せた、現代SFの傑作である。「魂のデータ化」や「生命の定義」というテーマに「医療」という角度から光を当て、テクノロジーの進化で生命の定義そのものが揺らぐ中で「医療の倫理」はどうあるべきか、という問題に対し、最終回で完璧な解答を導き出した本作は、特撮テレビドラマ初の日本SF大賞を与えられて然るべき作品だ。
TVアニメ『けものフレンズ』浅木原忍
誰もが童心に還って夢中になれる王道冒険ストーリー、魅力的なキャラクター、作品全体に仕掛けられた視聴者へのフックの多重構造など数限りない美点の中でも、爆発的ヒットをもたらしたきっかけは、平和な世界の裏に見え隠れするポストアポカリプス的世界観の謎だった。〝世界の秘密〟を巡って散りばめられた謎の魅力がこれだけ多くの人を惹きつけたことは、原初的な〝SFの面白さ〟が持つ普遍的な力を見せつけたと言えるのではないか(その上で、世界の謎を棚上げにしても全く問題なく楽しめるという構造の秀抜さも特筆しておきたい)。放映後に起きた動物園ブーム、間を置かず実現した朝の再放送といった数々の現象も含めて、まさしく今年度を代表するSF作品であり、日本SF大賞に相応しい傑作だ。
クリスティーヌ中島『モノリス』クリスティーヌ中島
・システムエンジニアである著者が人工知能の学説を元に執筆した点 ・テーマは以下3点 ①ロボットは人とパートナーになれるか ②ロボットは人間の奴隷か ③ロボットの進化速度は人間を追い越し支配者となるか ・2040年頃(人間の知能を人工知能が追い越すとされる年代)を焦点に②③を新たなSFの側面として描いた点。アシモフ「鋼鉄都市」では①のみを描いていました。 ・「この漫画がすごい!」大賞最終候補作。講談社アフタヌーン「もう一歩で賞」受賞作。電脳マヴォ掲載作品(公開は自サイト) 参考URL 電脳マヴォの著者評:http://mavo.takekuma.jp/title.php?title=76 自サイト最新話:https://christinemanga.wordpress.com/2016/12/24/5-8monolith/
TVアニメ『ID-0』タニグチリウイチ
Iマシンなるテクノロジーを見せ人は肉体を離れ意識のみにて己を人と思えるか否かを問いつつ、異種生命らしき存在との戦いを描きコンタクトを描いて、技術と人類の未来を諸課題とともに提示しつつアクションで楽しませた。
TVアニメ『けものフレンズ』タニグチリウイチ
擬人化された動物たちが戯れる箱庭的世界と見せて背後に人類のその後を想像させる要素を示し興味を引いた。そんな世界だからこそ起こる事態の中で人間の叡智、動物の能力が発揮され生命として進歩していく様を見せた。
ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』Ta. Miyoshi
日本の歴史の中でもし「おきなが」という現象が日常と寄り添ったところに存在したらというifを丁寧に描いた作品です。新作ミステリーSFとしてSF大賞エントリーに相応しい作品として推薦いたします。
圓山りす「グロース・フォース」新恭司
「アフタヌーン」2016年12月号掲載、アフタヌーン四季賞・2016年夏「四季大賞」受賞作品。雷に打たれ超能力に目覚めた少女・浮田安里。その秘密を共有する親友の櫻谷弥咲に「鳥になる」と宣言し、自分自身の能力だけで空を飛ぼうとする。安里はあらゆるトレーニングに励むが、一向に飛べるようにはならず、弥咲との友情にもヒビが入る。その矢先、安里の前に謎の二人組が現われ不測の事態に発展する。作者・圓山りすの圧倒的な渾身の筆致とは裏腹に、読み進めてみると追跡者の描き方など案外古めかしさを感じる部分もあるが、それが却ってNHK少年ドラマシリーズのような雰囲気を醸しており親しみやすさに包まれている。読後感の爽やかさに胸を打たれる快作。
TVアニメ『けものフレンズ』新恭司
『サピエンス全史』の邦訳出版、ラスコー展の本邦開催などにわかに巻き起こった文化人類学ブームと呼応しているかのようなタイミングで放送が始まった、メディアミックス企画のアニメ化作品。旅をする主人公が出会う人間化した動物たちと関係を積み重ね、現実世界では10万年以上におよぶ人類史、グレイト・ジャーニーを再演しようという骨太なチャレンジだった。この作品では、取りもなおさず、ヒトと動物たちとの間に横たわるものを隠喩的に描いてもいるが、にもかかわらず、主人公の二人はそれぞれの智慧と特技、それになによりも、屈託のない友情でその宿命を力強く乗り越えようとする。
映画『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』新恭司
低年齢層にまで広がる「スノーボール・アース」ブームに乗った形でその学説を取り入れた、アカデミックを土台にした映画オリジナル作品。前半ではアムンゼンやスコット、シャクルトンなどを思わせる極地遠征を描写し、中盤以降は時間SFと、モンスターの討伐を軸に冒険を盛り立てている。(討つべきモンスターはクトゥルフ神話に登場する邪神に似た存在だが、監督自身はインタビューで、クトゥルフに関する小説は読んでいないと答えている)。ごっこ遊びに端を発して本物の大冒険へと誘われる流れは、過去の大長編の流れを色濃く反映しおり、藤子・Fファンにも好評を博した。肝心の「スノーボール・アース」に関する描写は、事前の予告などから期待していたほどの掘り下げはなく、些か物足りなさが心残りだが、冒険SFの魅力を十二分に詰め込んだ意欲的なジュブナイル作品だった。
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