『火守』

2021年12月20日発売 | 劉慈欣(著) 池澤春菜(訳) 西村ツチカ(絵) | KADOKAWA

中国SF『三体』の劉慈欣が放つ、星探しの物語。 人はそれぞれの星を持っている。病気の少女のため、地の果てに棲む火守の許を訪れたサシャは、火守の老人と共に少女の星を探す過酷な旅に出る--。世界的SF作家が放つ、心に沁みるハートウォーミングストーリー。

『火守』カバー

(本文より)サシャは東の孤島に立っていた。彼をこの世界の果てに放り出した帆船が、海と空の境界線に消えていく。最東端の島は、海に露出した錆さびた鉄片のようだった。周囲には命の気配すらない。
 サシャは島の奥に向かって歩き出した。何日も船酔いに苦しみ、いまだに足下がおぼつかなかったが、小さな島は中心に辿たどり着くのもすぐだった。低い丘に、彼を見つめる怪しい目のような黒い穴が開いている。穴の周りには黒い石炭の層があって、ここが炭坑であることを示していた。坑道の側の開けた場所には石窯がそびえ立ち、見たこともないほど大きな鉄鍋が載せられている。ひっくり返せば、サシャが今まで見た中で一番大きな屋根にもなりそうだ。
 といっても、サシャはこれまで遠出をしたことがなかった。大きな家を目したことだってない。ヒオリと恋に落ちたサシャにとって、大事なのは世界を見ることではなかった。だけど、彼は意を決し、彼女のために世界の最果てまで旅をしてきた。
 石窯の火は消え、巨大な鉄鍋から独特の油臭いにおいが立ち上り、辺りに漂っている。
(公式サイトより)

書誌データ

  • 書籍名:『火守』
  • 著者:劉慈欣
  • 訳者:池澤春菜
  • 絵:西村ツチカ
  • 出版社:KADOKAWA
  • 発売日:2021年12月20日
  • 判型/ページ数:新書変形判/80ページ
  • 価格:本体1500円+税
  • ISBNコード:9784041114889
  • Webサイト:『火守』 | KADOKAWA