第41回日本SF大賞エントリー一覧

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林譲治 《星系出雲の兵站》YOUCHAN
ミリタリーハードSFシリーズが全9巻で堂々完結した。地球外生命体との接触やその文明や進化など、丁寧な描写でぐいぐい読者に迫りつつ、本を取り落しそうになるようなビックリ展開も仕掛けられていて、とにかく読んでいて楽しい。そして、わたしはこの作品は「人を描ききったSF」でもあると考えている。昔、とある方から「ジェンダーとは社会的性差である」と教えられた。このシリーズには、ジェンダーによる階級や役割の違いがない。第1巻で、女性上官の話し言葉に最初驚いたけど、これは階級の高い人の話し言葉だから性差のないのがあたりまえじゃないか!と気づく。描写はジェンダーだけではない。ひとりひとり得意なことや駄目なこと、人として弱いところも強いところも描かれている。まさに多様性を広く取り入れた作品だった。時代がこの物語世界の「あたりまえ」と同じ基準まで到達したとしても、何のてらいもなく読める強さのあるSFだと思う。
劇場アニメ『空の青さを知る人よ』ジュール
長井龍雪監督と脚本岡田麿里による青春SFの傑作。SFの定義によるけれど、私はSFだと言いたい。過去と現在が絡み合い、これまでに見たどんな青春恋愛作品よりもきれいなモノになっている。多くの人に見られるべき傑作だ。
酉島伝法 『オクトローグ』ジュール
皆勤の徒で鮮烈なデビュー、日本SF大賞を受賞した著者が送る異形SF短編集。なんとも言えない作品は文章からその在り方が感じられ、気持ち悪く、読んでいるだけでヌトヌトしてくる・・・・・・気がする。 いや、多分気のせいじゃない。酉島伝法はきっと、文章によって人の脳に何かを与えている。私たちを全く別の何かに変容させようとしている。そんな酉島伝法星からやってきた侵略文章だが、文章だけでなくしっかりと作品としても面白い。特に書き下ろしのクリプトプラズムはどこか切なく、モノ悲しいラスト。唐辺葉介、ドッペルゲンガーの恋人という作品を彷彿とさせ、これまでの酉島伝法とは一味違う作品に仕上がっている。 おかしい、気持ち悪かったはずなのに、不思議と読後感はスッキリと、どこか悲しい気分になっている。どうやら私はもう酉島伝法に侵略されてしまったようだ。
売野機子 『ルポルタージュ‐追悼記事‐』継堀雪見
恋愛無しの結婚が当たり前となった近未来の日本を舞台に、シェアハウス「非・恋愛コミューン」を狙ったテロ事件のルポ取材によって揺れ動く登場人物たちの感情を繊細に描いた群像劇。「恋愛する者がマイノリティとなった世界」というSF的設定によって「恋」と「愛」の様々なかたちと複雑さを克明に浮かび上がらせていく様は、読んでいて思わず息を詰まらせるほど真に迫っている。記者の葛藤や犯人の孤独と真摯に向き合い、被害者たちの人生を織り込んで畳み込む終盤の展開は圧巻。『ルポルタージュ』の続編として完結まで鮮やかに走り抜けた、恋愛SF漫画史上に残る屈指の傑作。
立原透耶氏の中華圏SF紹介者としての活躍YOUCHAN
もし立原透耶さんが中華圏SFを紹介しない世界だったら、今私達が楽しんでいる『三体』もケン・リュウの数々の珠玉作も、どこまで紹介が進んでいたかわかりません。彼女が10年以上の年月をかけて、日中SFの架け橋となって尽力されたからこそ、数々の中華圏SFアンソロジーがうまれました。と同時に、日本の優れたSFが中華圏で紹介され、相互交流が深まりました。今こそ、立原透耶さんの実績を讃えるときではないでしょうか。強くSF大賞に推したいと思います。
道満晴明 『バビロンまでは何光年?』継堀雪見
ぼんくら三人組の(下ネタ含む)ナンセンスな宇宙の旅が、あれよあれよと転がっていくうちに、世界の成り立ちが明かされ、家族愛にまとまっていくアクロバティックなSF放浪譚。奔放でオフビートなギャグやはっちゃけた小ネタ(例:カバー下の表紙イラスト!)をスマートに決めてみせたうえで、不意打ちみたいな抒情性もあるので全くもって油断ならない。宇宙規模のスケールの大きな奇想とセンス・オブ・ワンダーな小咄、職人芸的な伏線の回収がかっちり噛み合った無類に楽しいSF漫画。
五十嵐大介 『ディザインズ』匿名希望
時に細胞のように細かく織りなされた、時に踊るような描線に、不気味なまでの生命感が宿る。それと対峙する生命改変をめぐる人間の策謀もまたぞっとするほど残酷に現実的に描かれる。自然と人間、2つの「ディザイン」がからみあい、たどり着いた場所に背筋がすうっと寒くなる。キャラクター造形の魅力やアクションなどエンタテインメント性にもすぐれた、五十嵐大介以外にはなしえないSF表現だ。
動画『物理系研究室非公式VTuber固体量子のチャンネル』関竜司
コケティッシュでキュートな物理系研究室非公式Vtuber:固体量子(こたいりょうこ)の運営するチャンネル。「1分ノーベル物理学賞解説」「物理学の世界地図かいてみた」「物理学70の不思議」など簡潔、かつ的確な関西弁の解説は、物理学にうとい筆者のような人間にとって非常に参考になる。その一方で「超電導ベイブレード」「超電導3分クッキング」「ガウス加速器ビーダマンつくってみた」など魔改造系の動画も魅力的で人気を集めている。専門性の高さと分かりやすさ、遊びの要素が絶妙に組み合わされたチェンネルは一見の価値がある。個人的には量子コンピュータの基礎になるトポロジカル物質・マヨナラ粒子の話が面白かった。やっぱり《愛は研究室にある》ようだ。
ゲーム『Factorio』匿名希望
2020年8月に満を持して正式リリースされたSFサンドボックスゲーム。 主人公は宇宙飛行士。不時着した惑星にて資源を集め、工業ラインを引き、原住民(虫)の攻撃から身を守りつつ脱出ロケットを作って打ち上げる。 古典的かつ王道SFの舞台設定だがストーリーらしいストーリーは無い。自動生成マップとプレイヤーが自由に物語を紡ぐのだ。 チュートリアルを終える頃には時間の相対性という現実のSFを『心』で理解してもらえるだろう。
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『オラファー・エリアソン ときに川は橋となる』展青の零号
一抱えほどもある凹面鏡の前に、茶と白に塗り分けられた小石が吊られている。 横から見たとき、それはただの小石にしか見えない。しかし凹面鏡の正面に立った時、あなたの視界は荒れ果てた小惑星の表面と見まがう光景に覆いつくされる。 逡巡の後にあなたはそれが鏡によって拡大された小石の表面だと気づくが、それまでの瞬間に自分の意識がどこか知らない場所へと連れ去られていた感覚は鮮やかに残っているはずだ。それこそがセンス・オブ・ワンダーなのだと思う。 エリアソンの作品はどれもがこうした驚異と美しさに満ちている。光・風・水のもたらす視覚的効果を取り込んで自然の美を再現した展示は、鑑賞者の動きが作品に与える影響まで想定したものである。 SFの魅力とは現実を揺さぶる力、あるいはそれを見る者の精神を書き換える力だと考える自分にとって、エリアソン展はその力を十二分に感じられる、まさにSF的な体験だった。
配信ライブ『リモートライブでしかできないことをしろ!「現実では不可能なライブ第1弾〜竜宮城編〜」』Takahiro Maeda
新型コロナ禍に時空を超えたSFライブ演出で全宇宙のアーティストを置き去りにして煽るスタイル。眉村ちあきさんらしいファンへの愛と世界へ音楽を届けられる幸せに溢れるSFなライブだった。公園に集合してファンと戯れられない彼女のうっぷんを晴らす様な元気溢れる演奏やファンを巻き込んだ企画を「今」の枠を取り払ってもっともっと未来へと加速して手作りした新しい世界で世界中のマユムラーと共に弾け回ってくれたライブは最高でした。オンラインで身近にSF演出しちゃう彼女のエネルギーはなんでも有りのSFなら受け止めきれないかもしれないし、SFは身近になっていると教えてくれている。
樋口恭介 『すべて名もなき未来』継堀雪見
未来論や書評、批評的創作などが収められた評論集は、あり得たかもしれない過去への追悼文でもあり、現在を再編成するルポルタージュでもあり、まだ見ぬ未来のために差し出された投壜通信でもある。過去・現在・未来の様々な分岐点を探索し、見定め、創り上げるテキストが次々と重ねられていく。(とりわけ、〈特定の名を持つ過去〉の追憶を記しながら〈すべて名もなき未来〉を描き出す離れ業を決めた「亡霊の場所」が出色の出来。)SFと批評と詩情が手を取り合い、別の選択肢を指し示す様を次々と提示するコンセプト・アルバムのような味わいは、奇妙でなかなかに得難い。
Webサイト『きみを死なせないための物語 宇宙考証の解説』なつき
SF少女漫画『きみを死なせないための物語』(著者:吟鳥子)の考証者が、身近な例えや平易な文章で宇宙考証の解説をしているサイト。 本編は、人々が宇宙コロニーで暮らす近未来SFである他、長命種「ネオテニイ」と光合成が出来る短命種「ダフネ―」という人類の亜種の存在、社会的契約により他者との交流や「誕生」「死」も制限されるディストピアものでもある。 本サイトは考証者の研究のアウトリーチとして専門的知識の一般提供の側面を持つ。また、研究室や学会の様子や研究者の日常やこぼれ話、『セクハラ数式』といったお遊び的な本編の確からしさを補完する要素にも触れる等、「考証」についての興味深い読み物となっている。 本編の連載終了は、2020年9月で単行本最終巻は未発売のため、本エントリー期間は連載中です。が。ここ数年と同様、SF考証の学術的展開に意義を感じ、更新予定ありとして、エントリーを重ねさせていただきます。http://www.comp.sd.tmu.ac.jp/ssl/kimi_storia/index.html
稲葉振一郎 『銀河帝国は必要か? ロボットと人類の未来 』継堀雪見
アイザック・アシモフのSFを足掛かりに、ロボットと宇宙開発の「あり得る未来」を探るユニークな解説書。SFと科学技術の相互作用を踏まえた上で、ロボットSFや宇宙SFの変遷をコンパクトかつ的確にまとめ上げる手際の良さが光る。アシモフのSF作品における未来構想および倫理的思索を難点や時代的制約を含めて緻密に検証した上で、その意義を端的に指し示した「あとがき」の最後の一段落に胸を打たれた。古典を手放しに称揚するのではなく、現実の科学技術や倫理との関連も見据えて「SF」の持ち得る可能性(と限界)を示す批評の態度が貫かれている点も見事だ。
長谷川愛 『20XX年の革命家になるには──スペキュラティヴ・デザインの授業』継堀雪見
まだ誰も見たことのない未来を夢見て、設計し、この世に生み出すための技法書。著者によって制作された様々な作品は、イルカの子を産むプロジェクトなど革新的なエッジが効いているものばかりで、読み進めるごとに驚かされる。そして、ただ奇抜なだけではなく、綿密な思索とアウトプットの裏打ちが必要なスペキュラティヴ・デザインの分野において、SF作品が非常に重要な動力源として活用されていることが随所で示されている。(特に、ディストピア/ユートピアを舞台としたSF作品に対する向き合い方が面白い。)ワークショップ用のカードや推薦図書&作品リストなどの付録も充実しており、SF的発想力で世界を変えたい人に打ってつけの、類例の無い本となっている。
映画『眉村ちあきのすべて(仮)』 つくね乱蔵
この映画のヒロインは、眉村ちあきという歌手。弾き語りトラックメーカーアイドルという聞いたこともないジャンルである。映画の冒頭、眉村に関するインタビューが始まる。ところが、ある一点から映画は思いがけない世界に滑り出してていく。ネタバレになるため、詳しくは書けないのだが、その展開は正にSFそのもの。主演の眉村の演技も歌も神がかっており、観客はいつの間にか、わけのわからない涙を流してしまう。今までに無かった、おそらくこれからも類似の物はでない傑作と言えよう。
映画『眉村ちあきのすべて(仮)』 Takahiro Maeda
アイドル 眉村ちあき の密着ドキュメンタリーは密着し過ぎてタイトルに(仮)が付いてしまうほど SF の枠を使わないと表現出来ない映画に仕上がった。眉村ちあきさんの破天荒なアイデアの謎が明かされ、全編を彼女の音楽で包み込んで僕らを未来に連れて行ってくれる眉村ちあきから目が離せなくなる映画です。
大野場誠二 『奴隷 ラムシル』ともとも
多くの人は自らの意思によって「自由」に生きていると思っているがそれは本当だろうか?何かに拘束されている事実に目を瞑っているだけではないのか?未来と言う設定において古代同様の暮らしをする部族の中で奴隷にされると言う、思いもよらぬ状況の中での出逢いが主人公に気付きと成長をもたらす、人の内面に焦点を当てた作品。 100年近く前に出版された寓話作品にインスピレーションを得て書かれたロマンチックで落ち着いた作品で、原書の肌触りを大切にしながらもSFとしての仕掛けも巧妙。 また、本作品は来るコロナ後の世界において、我々が何をどう選択するかと言う面についても意識させられるものになっている。本作が書かれた直接のきっかけはコロナへの各国における政府の対応と国民の反応を見ての事だった。いろいろなレベルで楽しめる作品になっている。
藤井聡太とAI関竜司
将棋棋士・藤井聡太の快進撃が止まらない。2020年6月に棋聖のタイトルを奪取すると8月には王位を獲得。18歳にしてタイトル二冠は藤井が天才の中の天才であっただけでなく、幼児期からのエリート教育・凄まじい研鑽のたまものだ。一方で藤井二冠が世間を騒がせているのは、藤井聡太という人間にAIをベースにした新たな知の形が体現されているからだ。将棋の研究が棋士とAIの共同作業になって久しいが、藤井二冠もAIを積極的に活用する棋士の一人だ。自宅には70万の研究用PCが置かれ、気になる局面はおよそ5分で解析が終わるという。もはやAIと人間のどちらが優れているかを問う時代は終わっている。AIはある部分では人間より優秀で創造的であり、AIのはじき出した答えをいかに活用するかを考える時代なのだ。そうした新時代のロールモデルとして藤井聡太とAIは今後も社会で重要な役割を果たしていくだろう。
吾峠呼世晴 『鬼滅の刃』関竜司
大正時代を舞台にしながら、現代社会に薄く広く蔓延している貧困や不条理というテーマをうまく取り込んだ傑作。現代人が潜在的に抱え込んでいる攻撃性を、猟奇的な表現でうまく解放している点も見逃せない。その一方で幕間に散見されるコミカルで心温まるエピソードは吾峠という作家の人間的な幅を感じさせる。冗長にストーリーを長引かせるのではなく、潔く打ち切ったのも自分の生み出した作品世界に対するリスペクトだろう。近年『ゴールデンカムイ』(野田サトル)など明治・大正を舞台にした作品が人気を集めている。その背景には不完全な世界・不完全な人間を描くのにこれらの時代が適しているとともに、人間の自由意志が奪われた状況(未来)を描くのに格好の時代というのもあるだろう。人間が生きるということと正面から向き合った哲学的作品でもある。
野﨑まど 『タイタン』荒巻義雄
時は2205年の遠未来。超AIによって人類が労働から完全に解放された時代を描く。ある意味では、こうした世界は、かのマルクスが未来に設定したような究極の社会主義世界かもしれない。だが、果たしてそれでいいのだろうか。人間と労働の問題について一石を投じた作品であるのは確かだが、我々SF人の課題としてはより深く考える必要があると思う。作風に〈人類補完機構〉のコードウェナー・スミスを連想したが、散文詩のようでもある。わずか2世紀後の世界であるのに、まるで靄に包まれているようである。
立原透耶(編) 『時のきざはし 現代中華SF傑作選』荒巻義雄
 短編17編が収められている。中国SFの専門家である編者が精選した傑作選である。一読、筆者は、わが国のSF創世期を牽引した「宇宙塵」の投稿作品の雰囲気を連想したが、この同人誌から多くの作家が育ったように、10年後、20年後の中国SFの隆盛が期待できると直観した。ただ、レトリックの頻度が少ないように感じられた。中国文学の特徴なのだろか。この点は今後の研究課題である。
佐々木譲 『抵抗都市』荒巻義雄
 日露戦争に負けた日本を描いた作品。作者はミステリー界を代表する作家の一人であるが、いわゆる〈もしも〉構造を持つ本作は明らかにSFであり、ディックの『高い城の男』の系列である。物語の縦糸となるプロットは、帝政ロシア統治下の日本の首都東京で、主人公の警官が、いかに自らの正義を貫くか。殺人事件の背景に巨大な陰謀があるのだった。
野﨑まど 『タイタン』月山
個人的な感想です、と前置きしてから言いますが、これはおねショタだと思っている。主人公の女性と、AI「タイタン」との交流。対話。語り合っていく内にうまれるものは愛情にも依存心にも思える。 この小説は、AIが人間の代わりに働く世界で、AIと人間が仕事について考える話だ。仕事とは何か。 彼らがどのように交流し、どのような答を導き出すのか、どんな風に、これからの未来を生きていくのか。 知ってほしい、考えてほしい、彼らの未来を、私達のずっと先に待っているかもしれない未来を、更にその先を。 人間とAIの歩む未来を。
TVドラマ『仮面ライダーゼロワン』@Φlibbertigibet
自分と同等の心を持つ弱者に対し、人間はどう対峙するのか? SFの最も古く、かつ現代では喫緊となった問いに、真っ向から切り込んだ意欲作。 脚本のブレや描写不足、コロナ禍による制限など問題は多いが、尊重すべき知的奴隷が社会にもたらす軋みや成長を描き、私は視聴者としてずいぶん考えさせられた。他の人も考えてくれていると良いと思う。 表現もコミカルからシリアスまで演者の名演・怪演、画面作り、新機軸の総集編に唸った。 個人的には、ある種の理想のFrankenstein's monsterを体現した登場人物・腹筋崩壊太郎、そしてイズ、またイズを失い狂気に陥った主人公・或人の印象が、今も深く心に残る。
立原透耶(編) 『時のきざはし 現代中華SF傑作選』高槻真樹
日本SFにも大きな影響を与えることとなった、中国SFの大ブーム。もはや欧米だけを見ているわけにはいかないという点でも、アジアSFが手をたずさえて世界にアピールしなければならないという点でも、大きな転換点となった。ケン・リュウの大活躍の影に隠れがちだったが、非常に早い段階から中国SFの魅力を紹介し続けてきた立原透耶の業績を、今こそ評価すべきだろう。待望のアンソロジー刊行は、絶好の機会である。
伴名練(編) 《日本SFの臨界点》高槻真樹
埋もれた日本SFの秀作に光を当てる試みであると同時に、自作『なめらかな世界と、その敵』への解説にもなっているという離れ業。しかも自伝でもある。これまでに、アンソロジーをこのような形で編んだ例は聞いたこともない。だが、実際に本書を手に取る層は『なめらかな世界』で関心を持った読者だろうから、このアプローチは正しい。表現媒体としてのアンソロジーの可能性を押し広げたという意味で、受賞に値するだろう。ますますジョン・スラデック化が進行してしまった気もするが、それでもよい気もしてきた。
鶴淵けんじ 『峠鬼』蝉川夏哉
古代倭国を舞台とした神と人とのコンタクトはセンスオブワンダーに満ち、すぐれてSFの匂いを感じさせる。神々の権能は人智を越えるが、その顕れ方はSF者に馴染みのある形とも似ていて、興味深い。十分に進歩した科学が魔法と区別の付かないものであるならば、魔法の表れは進歩した科学と区別が付かないのかも知れない。
樋口恭介 『すべて名もなき未来』渡邊利道
2018年に長編『構造素子』でデビューしたSF作家の一冊目の批評的エッセイ集。ネットなどに発表された書評を中心に、思弁的実在論や加速主義、数学的宇宙仮説などのトピックやウエルベックやマキューアンなどの作品について要約というよりもリミックスというべき勢いで紹介し、その意義について饒舌に語る。そのほとんど軽はずみな瞬発力には、新しい世代のSF批評の登場を感じずにはいられない。SF的想像力のパンク性を派手に煽りつつ、個人的回想のノスタルジックな叙情がしばしば差し挟まれる絶妙なアンバランスさはいかにも作家兼批評家のもの。本年度もっとも印象的だったSF批評の本だ。
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西崎憲 『未知の鳥類がやってくるまで』渡邊利道
SFから純文学、またムックやアンソロジー、電子書籍など、さまざまなジャンルや媒体で発表した短編を十編収録する短編集。発表媒体の変化には関係なく統一した色調のある美しい本。さらっ書かれたようにさえ見える淡彩色の作品世界は、幻想的、思弁的、物語的、文学的、といろんな形容ができそうだが、読みながら一貫して強い「声」のようなもの、自分の思考や感覚を簡単に誰かに譲りわたすな、という強いメッセージがある(ように私には感じられる)。定型を外しながら安易に「アンチ」に陥らず、世界に抜け道を見つけて欠けているものを補完する作品たちであり、SF大賞というある意味「何でもあり」な場所でどのように本書が評価されるのかぜひ見てみたい。
松崎有理 『イヴの末裔たちの明日』渡邊利道
多彩な語り口でハードSFを書き続ける作家の(今のところ)最新短編集。自称未来人によるタイムマシンでの脱獄企画、数学の未解決問題と宝探しが並行して進行する暗号小説、AIに仕事が奪われてベーシック・インカムが導入された未来の労働小説など、切れ味の鋭いシンプルなアイディア小説中心で面白いのだが、基本的に暗めのトーンで重い作品が収録されている。暗号小説「ひとを惹きつけてやまないもの」は、途中の展開があっと驚く傑作だったが、ラストの「箱舟の座席」ではさらにあっと驚く展開になって、最後に爽やかな解放感に満たされて嬉しくなった。ぜひSF大賞候補として推薦したい。
藤野可織 『ピエタとトランジ <完全版>』渡邊利道
2013年発表の同名短編の続編にして長編完全版(最初の短編も巻末に収録)。何故か殺人を呼び寄せる天才探偵と友達になったヒロインが次々事件に巻き込まれ時間が進んでいくごとにどんどん人が死んでいって世界の終わりまで一緒にいく話。どんな悲惨な事態になっても「世界は滅びない、人類が滅びるだけ」と大変クールで素晴らしい。事件はいつも抑圧された女性絡みで、「こんなクソみたいな世の中で子供なんか産んでやるものか滅びろ」的メッセージを読み取ってしまいこれはフェミニズムSFの極北ではあるまいかと感動した。
早瀬耕 『彼女の知らない空』渡邊利道
設定的には直近未来だが、実質的な「現在」を描いたSF連作集。動物実験を忌避する製薬会社に就職したのに、軍事研究に仕事が利用されてしまうことがわかった研究者や、憲法9条が改正された後の自衛官など、不穏な現実を背景に、ごく普通の人々の静かで繊細でヘヴィーな心情を丁寧に描いていく連作で、夫婦間の不和とかすれ違いとかの心理描写が重く、大変鬱々とした気分に浸りつつも、読み終わったときにはささやかな希望を感じるよい短編集だった。『智恵子抄』やシェークスピアなど、文芸作品のエッセンスが散りばめられた細部も機知に富んでおり楽しい。
石川宗生 『ホテル・アルカディア』渡邊利道
雑誌で連載されていた掌編群に枠組みになる物語を与えて再構成した長編小説。その枠組みというのはホテル支配人の一人娘がコテージに閉じこもってしまったので、彼女を慰めるために七人の芸術家が物語を語り聞かせる、というもの。それぞれ独立しているにもかかわらず、たがいに微妙に重なり合い縺れあった物語群が輪舞して世界を迷路に変え、一種巡礼のような旅の経験を読者にあたえる美しい小説で、どれも軽やかな質感の掌編ばかりなのだけれど、一冊を通して読むとずっしりした長編の感触が残る。章が進むごとに作品の数が少なくなっていき、世界の余白が存在感を持って現れてくるように思われる仕掛けも素晴らしい。
柴田勝家 『アメリカン・ブッダ』門田充宏
2019年から2020にかけて現実の世界を覆った混乱に対して、多くの作家は作品を通して真摯に向き合うことを選んだ。柴田勝家もそのひとりであり、彼はそこで混沌に陥ったアメリカで生きるインディアンがブッダについて語る、悟りの物語を描き出した。……ここまで並んだ字面の強烈さだけでもう充分、あとは全て蛇足になる気もしないでもないが敢えて先に進もう。これまでも著者は、豊富かつ深い知識を自由自在に投影して世界を巧みに作り替え、その本質を露わにした上で物語として語って見せてきた。それは本書においても一貫しているが、特筆すべきはやはり本書末尾に置かれた表題作であろう。「アメリカン・ブッダ」において柴田勝家は、現在の世界の課題、その醜さを露わにした上で、その先にある悟りを描き出したのである。柴田勝家が描くSF以外でこんなことが起こりうるだろうか?本作は、まさしく今だからこそ読んで欲しい作品であると言える。
北野勇作 『100文字SF』 倉数 茂
個々の作品の質の素晴らしさももちろんですが、100文字小説(著者の言葉ではマイクロノベル)という形式を確立して世に知らしめたことが最大の功績だと思います。俳句や短歌のように、あるいはツイッターやTikTokのように誰もがごく自然にマイクロノベルを読み書きする社会が来ることを夢見ます。
小野美由紀 『ピュア』ひろし
この『ピュア』という作品は読者の脳を頭蓋からはみ出させる力にみちあふれている。そもそも、これはただの、女性が性交しながら男性を食べる小説ではない。自らを取り巻く環境、社会、世界が、苛烈であろうと純愛は存在できるのかという、あまりにも無謀な問いを作者は投げかけている。そのような問いを受け取った者は自分という枠を壊さざるを得ず、結果、その脳が頭蓋からはみ出るのだ。
斜線堂有紀 『楽園とは探偵の不在なり』碁郎
推薦文はSFをたくさん読んできていなかった自分としては主観や個人的な意見で良いと書いてあって嬉しかった! 斜線堂有紀さんの過去作でハマった、人間らしくもあり純粋でありながら異様な信仰心のようなものや、人物の感情や思いがこの作品でも書かれていた。 2人以上殺した人は""天使""によって即座に地獄へ引き込まれるようになった世界。 探偵業を営む青岸焦は、大富豪の男に「天国が存在するか知りたくないか?」と聞かれ、天使が集まる島を訪れる。そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人だった。 青岸焦はなぜ天国の有無を知りたいのか。 その理由が切実で身につまされる。 館に探偵という魅力的な舞台で、天使がいるから有り得ないはずの連続殺人が起こる。その謎が解決しない間にも様々な謎が出てきて、ミステリーがたくさん詰まっている。 面白いこと間違いなしなのでぜひ読んで頂いて大賞候補にお願いします!
鵜狩三善 『ボーズ・ミーツ・ガール 1 住職は異世界で破戒する』渡辺圭
絶妙な言葉遣いと流れるようなストーリーテリング。仏教用語とSFの相性がこんなに良いとは! しかもこれが色物でなく、至極まっとうなエンターテインメントであることが素晴らしい。SFの本流ではないかもしれないけど、著者のジャンル性の高さも要注目。
林譲治 《星系出雲の兵站》Rey.Hori
人類が初めて体験する知的異星生命体との接触と戦闘を描いたミリタリーSFとして、兵站に焦点を当ててスタートした本作。戦闘以外の補給・輸送・人員や兵器のやりくりなどといった「兵站」が物語世界の基礎を成したその上に、巻を進めるにつれて、正体不明で情報に乏しい敵の実体とその意図、更には人類がそもそもなぜ宇宙に軍隊を構えるような文明を築いて来たのか、その来歴、といった謎が次々に提起され、やがて驚くべき真相が明らかになっていく展開の巧みさ。登場人物群像やメカ設定の数々(加えて、ちりばめられた小ネタあれこれ)も魅力的。ミリタリーSFの枠を大きく超えた謎解き型のハードSFとして本作を推薦致します。
2Way完全ワイヤレスイヤホン「KPro01」うみゅみゅ
イヤホン、ヘッドフォンのオタクで知られる声優の小岩井ことりさんが、Owltech 社よりコラボイヤホンの話を持ち掛けられ「コラボよりも、開発がしたい」と言った為、クラウドファンディングで立ち上げられた前代未聞の「完全無線と有線を切り替えられるイヤホン」の開発企画。 目標金額の3,000,000円を遙かに越えた166,072,180円もの支援を集めて、その筋では大いに話題になった。特に、 ・タレント(声優)が、コラボではなく企画開発に積極的に関わった。 ・無線・有線それぞれのメリットとデメリットを克服する、一本で完結する新しいイヤホンをクラファンで開発した。 この二点が画期的だと思ったので、今回のSF大賞にエントリーさせていただきます。
藤井太洋 『ワン・モア・ヌーク』うみゅみゅ
「核をもう一度、この国に」東京オリンピック直前の2020年3月の東京で、突然起こった核のテロ。複数のテロリスト達の思惑、阻止する側のそれぞれの葛藤。問題提起の仕方は、この作者ならではの目線だし、そこで描かれる人物たちはリアリティがあり、共感したくなる。 厳密にはSFとして描かれた作品ではないのかもしれない。でも、読んでいるとやはり、架空の未来を描いたSF作品として面白い。 何より、コロナ禍の影響で2020年はオリンピックの年ではなくなってしまった。そんな今年、「おうち時間」が増えたタイミングでリアルタイム読書をしていた人たちが複数居たのも、現象としてとても面白かった。
アロハ天狗 『柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』バッティ
 杜王町vs吉良吉影、ゴッサム市民vsジョーカー…そこに住む人々が自分たちの誇りを示し町を襲う悪意と戦う…そんなエンターテインメント作品は皆さんお好きでしょうか?  『柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!』は死都・町田に襲来した柳生十兵衛と町田の変人軍団がぶっ殺しあう最高のエンタメノベルです。余りのケレン味と作者のアロハ天狗先生渾身の数々のパロディでコーティングされた強烈なガワの一方で、中身はドストレートなSF剣戟アクション。読み終わった時貴方もきっとこう言うことでしょう、やりやがったなアロハ天狗!!と。
藤井太洋 『ワン・モア・ヌーク』りょう
手作りの核爆弾を、2020年3月11日という東日本大震災から9年後のその日に、新造なったばかりの国立競技場で爆発させるテロという大仕掛けを見事に描き切った、本年2020年を代表する作品といえる。秘かに都市に持ち込まれた核爆弾によるテロは、かつてフォーサイス『第四の核』(1984)やクランシー『恐怖の総和』(1995)でも取り上げられていたが、2020年の本作は、国際紛争や外国人労働者の問題、役所仕事の実情も絡めてより緻密に描き、私たちが目を背けがちになっている、東日本大震災で発生したメルトダウンが今なお向き合うべき現実であることも突き付けてくれる。
アンディ・R・ホームズ、ケン・セント・アンドレ、キャサリン・デモット(著)岡和田晃、杉本=ヨハネ(訳)安田均(日本語版監修) 『コッロールの恐怖+猫のいぬ間に』吉里川べお
トンネルズ&トロールズ、この世界2番目のロール・プレイング・ゲームは、これまでも「人とモンスター」「善と悪」といった定型を次々相対化、もといジョークで混ぜっ返してきた。「生と死」も例外ではない。全てをデータ化するこのジャンル、動く死者は「アンデッド」と名付けられ、生者と峻別される……はずなのだが、廃都コッロールの怪しい奴らは互いの生死など気にせずに、グロテスクな宴に酔いしれる。 作者アンディ・ホームズはイギリス怪奇の伝統をアメリカの脳天気なルールシステムと接合し、新たな境地を僕らに示した。ファンによる“うろつく人影”も、気のいいタコ頭の種族、禁断の知識を探求するトロール、生者をつけ狙う聖騎士など、“わかってらっしゃる”キャラばかり。迷宮探検家たちを襲うは死の恐怖、そして“向こう側”への強い誘惑だ。「人間捨てた方が楽しいんじゃね?」と思った瞬間、貴方はもうその陥穽に落ちている。
生配信劇《京都妖気保安協会》ケース1〜3
本作は京都の劇団『ヨーロッパ企画』がコロナ禍で舞台公演ができないため行われたYoutubeでの生配信演劇です。コロナで困難なエンターテインメント業界が試行錯誤を行う中、ものの数か月で京都嵐山線の電車内から生配信で演劇を行ったかなりの傑作です。 ケース1は電車内で物語が進みますが電車の乗降と早替えを利用し一人2役で生配信ながらパラレルワールドが存在する設定づくりには感動しました。 残念ながら現在配信期間が過ぎ、非公開状態になってしまいましたが是非みんなに見てほしかった。池澤さんにも見てほしかった!!コロナの時代でもあんなに楽しいSFエンターテインメントを新たに生み出せる力を!
映画『ドロステのはてで僕ら』
京都に拠点を置く劇団『ヨーロッパ企画』が手掛けた初の長編映画です。 元は『ハウリング』という同劇団の短編映画ですが舞台を京都の雑居ビルのカフェに変更し長編映画にリメイクした作品です。 時間SFとして扱うにはあまりに短い2分後という未来を逆にうまく利用した大傑作です。また2分間という時間を効果的に見せるために70分間疑似ワンカットでリアルな時間と劇中時間が合っていて撮影方法が全く分からなくなってくるところも本作の楽しみなポイントです。キャッチコピー通り時間に殴られました!!!!
野﨑まど 『タイタン』ヤナギシュン
日本人にとり、生きることは久しく働くことでした。働かざるモノ、食うべからず。ブラック企業、バブルの亡霊、三丁目の夕日は言うに及ばず、国家のあけぼのから額に汗して稲刈りに精を出すばかりか、縄文時代から平生あくせくと栗の木を植え、たまの余暇にも眉間に皺寄せ粘土をこねては人形を作る。きっと縄文人もこう思ったはずなのです。働くってなんだろう、仕事ってなんだろう、と。2000年を渡る問いの答えが、ここにあります。
野﨑まど 『タイタン』匿名希望
「今日も働く人類へ」 人々が働くことの意義を問い直すコロナ禍の中、発売された本書は、至高のAI「タイタン」により人類が平和に保たれ、仕事を必要としなくなった未来の物語。 AIを題材にした作品は、AIが人類に反乱を起こすものが多いが、鬼才野﨑まどが描き出す未来はそれらとは違ってーー? 今の時代にこそ、読まれるべき物語だと強く感じます。
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鮭さん 「セックスの相手ランダムに選択マシーン」salmon mama
優生思想を徹底的に排除した世界で起こった狂った世界。狂っていてすごい!!狂っていてすごい!!驚きの連続!!驚きの連続!!驚きの連続!!驚きの連続!!驚きの連続!! また、短いためチャチャっと読めるのも良い。歴史に残る名短編と言えるだろう。
仁藤夢乃 「自民党議員らによる 10 代女性を支援する 『Tsubomi Cafe』視察における問題のある言動や少女に対する セクシャルハラスメント行為についての抗議文と要望書」大野典宏
DVや虐待被害者の十代少女の逃げ場所(シェルター)として活動をしている「Colabo」が運営してする自助活動「バスカフェ」において行われた公然たるセクシャルハラスメントの事実を抗議した文章。女性の人権保護が提唱され、女性の受難と活躍を題材にしたSF作品が多く出版され、話題を呼んでいます。ではなぜにそのような作品が書かれる必要性があるのか、その根拠である「男性側から行われた事件の被害者となった女性側」の立場から現実を訴えた文章は、フェミニズムSFが一作でも多く書かれるべき理由を明白化した文書として非常に価値が高いため、推薦します。 詳細は、https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2020/04/e15191a1ce1f7cc6364f14482462d8c0.pdfで閲覧可能です。
菅浩江 『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』上田早夕里
1981年に著者のデビュー作「ブルー・フライト」が発表されたときの衝撃以来、日本SF界における菅浩江の貢献度の大きさは、執筆された数々の作品の質の高さだけでなく、SF系新人賞選考の場における優れた選評の提示など、短い言葉ではまとめがたいほど計り知れないものです。加えて、本作『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』を含む博物館惑星シリーズは、SF的視点によって、人間だけでなくそれ以外の生命の価値までをも、芸術作品を通して語りきった作品の集大成です。芸術を題材としたSF作品はたくさんありますが、ひとりの作家の手によって、これほどまでに大量の読み切り短編で、しかも深く、SFの本道をゆく形で描かれた例を私は他に知りません。読者を楽しませるために磨きあげられた技術と美しい文体、SFとしての矜持とも言うべき論理性が、高度なレベルで融合している諸作品を、本シリーズが一段落ついた本年度に、強く推薦致します。
三宅乱丈 『イムリ』上田早夕里
『イムリ』は全26巻に及ぶ長編漫画で、本年度期間内に完結したので推薦します。本作は、架空の惑星上における三つの民族の闘争を描いた作品です。支配層による極端な格差社会が固定された状況下で、この社会システムが、ひとりの若者が抱いた疑念から揺らぎ、多くの人々の意志を経て打ち砕かれていきます。支配層と被支配層との関係が描かれるとき、多くの物語は、闘争と滅亡によってその幕が閉じられますが、本作が辿り着いた先はそれとは異なり、複雑で思索的で、現実社会に対する読者の目を鋭く問い直すものでした。冷酷な人権侵害や激しい戦闘、抵抗兵器の謎を解く知的興奮に満ちた展開、人間同士の軋轢と交流を通して著者が提示したものは、強靱な意志と慈しみです。その粘り強い思考過程は賞賛に値するもので、これがひとりの女性作家の手によって、14年間もの歳月をかけて描かれ続けたことに、本推薦をもって、最大限の敬意を表したいと思います。
菅浩江 『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』池澤春菜
「永遠の森」「不見の月」に続く、博物館惑星シリーズの第3作目「歓喜の歌」は、今まで読んできたたくさんの本の中でも、屈指の美しいエンディングでした。  衛星軌道上に浮かぶ“アフロディーテ”、ここはその名の通り、博物館惑星。有形無形問わず、この世のあらゆる芸術品が収められています。  美しいとはどういうことなのか。  感動するって?  好きになったり嫌いになったり、感情はどう生まれるの?  そこに、正しい、や、間違っているは存在するの?  機械に心は生まれるの?  この難しい問いに、管さんは全身全霊で、ありったけの力と誠実さを持って挑んで、そして美しい物語群を生み出しました。  最後は正に、圧巻、鳥肌。重層的に重なり合う歓喜の歌が、ここまで読んできた読者をも巻き込んで、至福の最後へと昇華していきます。最後のページを読み終えた瞬間、この物語に出会えて良かった、心からそう思えるはず。
TVアニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』マリ本D
近年の舞城王太郎の活動を注目するにあたって見逃せないのは“原作・脚本”担当としてのはたらきであり、本作はその最も新しい事例の一つ。西暁町、穴、そして名探偵など舞城作品に頻出する概念が惜しげもなく投入されているが、“殺人事件の現場に残された殺意から構築される仮想世界で、事件や犯人につながる手掛かりを見つける”という型さえ把握できれば意外と取っつきやすい、一話完結型のSFミステリアニメである。もちろん、取っつきやすいからといってパワーダウンしているわけではなく、個人的に“祈り”の作家だと見ている舞城王太郎の、現状到達点としての“祈り”の凄みには圧倒させられる(自分は6話の仮想世界のラストシーンで落涙を禁じ得なかった)。舞城作品初心者にもうってつけながら長年のファンの期待にも応える稀有なまでのバランスを誇る本作品は、間違いなく今年のアニメを語るにあたってはずせない傑作SFミステリである。
宮西建礼 「されど星は流れる」 門田充宏
創元日本SFアンソロジーGNESIS第三巻の表題作となった本作は、COVID-19によって世界の様相がすっかり変わってしまった今だからこそ書かれた物語であり、今だからこそ読まれるべきSFであると言える。誰もが先の見えない混沌と閉塞感の中に閉じ込められている中、個人の力ではどうにもならない状況を諦めるのでも絶望するのでもなく、自分たちの力とできることを信じ、推し進め、更なる未来の可能性へと思いを馳せる。この可能性と希望を描けることこそがSFの強さであり魅力だろう。本作はそれを堪能できる物語であると同時に、この時代に突き立てられた未来へと繋がる希望の旗印だと言える。
空木春宵 「地獄を縫い取る」門田充宏
2019年。それは、空木春宵が長く続いた沈黙を遂に破った年である。 8月「感応グラン=ギニョル」、10月「終景 累ヶ辻」、12月「地獄を縫い取る」、2020年8月には「メタモルフォシスの龍」を発表。そのどれもが読んだ者の心を鷲掴みに——いや、反しのついた針のように心に突き刺さり抜けなくなってしまうものだ。そしてこの〈突き刺さる〉ことこそが空木作品の特徴であり、同時に最大の魅力であると言えるだろう。 空木作品が何の躊躇いもなく差し込む針は、読み手が普段考えず見ないようにしている、だが確実に存在して決して消し去ることができない暗い部分へと確実に突き刺さる。そうして奥底まで侵入して食い込み、もう決して忘れられないものにしてしまうことにこそ、一連の作品の真骨頂があると考える。 エントリー作はその針の大きさと歪さ、そして反しの鋭さにおいて万人に忘れられない読後感をもたらすことだろう。
斜線堂有紀 『楽園とは探偵の不在なり』匿名希望
「2人殺せば""天使""によって地獄に落とされる世界」における連続殺人を描いたSFミステリーです。 天使に傾倒する主人と孤島の館、集められた有名人や記者、そして探偵…………というミステリーにおける定番のシチュエーションでありながら、そこで起こった殺人事件は天使の存在によって『ありえないもの』になってしまいます。 現実に限りなく近いのに、天使によって人々の倫理観や物事の捉え方が少しズレてしまった世界、という非日常的な雰囲気が魅力的な1冊です。SFとしてもミステリーとしても非常に面白い作品なので、沢山の人に読んでいただきたいです。
『ピュア』 小野美由紀bocky bock
新しさを孕む作品は常に「問題作」として扱われるが、「SFというものはマニアや専門家でなければ理解できない / 創造できないものだろう」という狭い了見を、『ピュア』の短編群は獰猛に破壊してくれる。 「ピュア」 →「女が男を捕食しなければ妊娠できない」というシンプルかつ凶暴な原則に乗っ取られている世界観は、それだけで読む者の意識を染めてしまう。果たしてその世界で純愛は成立するのか! あまりに必読! 「to the moon」 →身近な友人が、性どころか、人類から別の何かに転換したとき、我々はどう振る舞うのか。 すでにジェンダーSFの枠からも飛び出ている作品。 「幻胎」 →主人公の変態度合いがすごい。必読。 「エイジ」 →「ピュア」と同じ世界の別の側面。男の視点から見た時に、何が浮かび上がるのか。 作品群の全てに賦与された特殊な「空気」を吸い込むだけでも価値のある体験だった。
オキシタケヒコ 「平林君と魚の裔」緒賀けゐす
宇宙遍く商業システム《汎銀河通商網》が存在する世界。借金のカタに連れ去られた全アメリカ国民の中で唯一帰還を果たした関西弁の女スミレ・シンシア・ヒルとその相棒の宇宙人トリプレイティの軽快スペオペ漫才を描いた『What We Want』に続く、オキシタケヒコによる《通商網》シリーズ第二弾。今作は海洋生物学者の「私」を視点人物とし、《汎銀河通商網》の無情なシステムとそれでも目映く輝いた「魚の裔」の可能性を軽快な文章で描いたスペースオペラだ。オリジナル設定とオカルトを組み合わせる発想力、情報の開示タイミングを完全掌握した構成力には舌を巻いてひれ伏すばかりである。 最後に提示される標なき道、そして、その先に広がる希望――果てしなく広がる宙を見上げ、その虚空に想いを馳せてしまうのは私だけではないだろう。原義的且つ新鮮なSF世界観と個性的なキャラクターが織り成す、センスオブワンダー剥き出しの傑作短篇だ。
柞刈湯葉 『人間たちの話』紅坂 紫
「テクノロジカル・フィクション」ではなくどこまでも「サイエンス・フィクション」のこの作品、溢れるユーモアとセンスで現実世界の延長としての未来やあったかもしれない世界を描き出すのが素晴らしかった。「記念日」が特に好きだ。
伴名練(編) 《日本SFの臨界点》紅坂 紫
単行本に収録されていない傑作短編SFを中心に組まれたアンソロジー。そのため、生まれたときには既に簡単には手に入らなくなっていた作品が書店で身近に手に取れるようになったことが嬉しい。伴名練の熱量高い解説は圧巻だった。
映画『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』緒方映一
デビュー作『HOUSE ハウス』から、『ねらわれた学園』『時をかける少女』など、数々の映画で観客を魅了してきた大林宣彦監督の遺作。閉館間近の映画館でスクリーンの中の戦争時代にタイムスリップした青年たちの冒険をあえてギミック臭い映像で展開させる。大林監督には本来ならば功績賞を差し上げるところだろうが、最後まで現役の映画監督として公開を待っていた本作を日本SF大賞に推薦したい。
林譲治 《星系出雲の兵站》緒方映一
移民星系での知的生命体とのコンタクトと戦闘を描くミリタリーSFではあるが、能力の差が図られることはあっても男女性差のない平等が形成されている社会がユニークな設定に見えてしまうぐらい、翻ってわたしたちの社会の不平等性を間接的に浮かび上がらせてくれる。毎巻サプライズを用意して次回への期待を与えつつ、コンスタントに2年間でシリーズ二部作全9巻を刊行するという、ノベルズ作家としての著者の技量を見せる、まさに著者の代表シリーズになったと言えるだろう。完結を期に日本SF大賞に推薦したい。
北野勇作 『100文字SF』 緒方映一
名は体を表すとはよく言ったもので、タイトルが内容を指している。ツイッターの一投稿140字という仕様を逆手に、1作100字でSFを書くという誰もやったことのない、日本SF大賞に値する著者の発明といえる。
吾峠呼世晴 『鬼滅の刃』夜田わけい
大正というロマンあふれる時代を舞台に、不死の存在である鬼に対して刀で暗躍する鬼殺の剣士たちを生き生きと描いた。主人公竈門炭治郎が鬼になってしまった妹竈門禰豆子を戻すために旅に出るという兄妹愛、家族愛を深く描いていて、豊かな物語性をもっている。
津久井五月 「蒼転移」小林ひろき
コルヌトピアの世界観、登場人物を引き継ぐ作品であるが、コルヌトピアが植物と人間の共生という美しい点であったのに対し、そのネガティブな部分を取り上げた部分が注目に値する。それは動物の暴走であるが、一瞬のきらめきのようなものである。コルヌトピアでは植物と登場人物が繋がることによって私達の現実を異化してみせる著者の筆力に感動を覚えたが、今作ではそれがより可視化されて解像度がさらに上がっている。動物の環世界を小説のかたちに凝集した傑作ではあるまいか。
劇場アニメ『Fate/stay night [Heaven's Feel]』三部作マリ本D
《Fate》というコンテンツは、少なくともその存在すら知らない人はほぼいないのではないかと思われるほどに大きく発展したものの一つである。ソーシャルゲーム『Fate/Grand Order』はそれぞれの章のTVアニメ化(放送済み)、劇場アニメ化(12月予定)が行われているし、他にもアニメ化された派生作品など受け取る側だけでなく作り上げる側も多く参入している。そんなコンテンツの大元である『Fate/stay night』の今までアニメ化されてこなかったルートを、劇場アニメという形式で発表したのが本作である。多くのファンを獲得し後陣作品、作家に多大な影響を与えたコンテンツが、まず何よりも優れたファンタジー作品であったと証明するこの劇場化作品を、三部作まとめて一つのエントリーとして推薦する次第である。
草野原々 『大絶滅恐竜タイムウォーズ 』春夏 式
草野原々という作家がデビューした当時、正直言ってバカにしていた。 ラブライブの二次小説の改稿で、早川書房によるちょっとしたマーケティング戦略の一つだろうと。確かに作品自体はしっかりとSFしていた。だがそれだけのこと。少しの間、話題になって消える作家だと、そう思っていた。 だが、そんな思いは本作を読んで根底から覆された。 この作者はいずれ小松左京をも凌ぐ作家になる。そう思わせるほどの熱量と密度が本作には存在した。 何かを語ればネタバレになる本作はただ読んで欲しい、としか言えないが、 かつて長谷敏司氏がBEATLESSにおいてキャラクター性について語った内容を、本作大絶滅恐竜タイムウォーズはさらにその先というよりも根本的な問題、キャラクターについて語っている。 そういう意味で本作はあらゆるオタクが読むべき読み物であり、現代のオタクをアップデートするべく作られた小説という形を取ったモノリスだ。
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DUSTCELL 『SUMMIT』マリ本D
いまや様々な事務所、グループがそのユニークさを発揮するようになったバーチャルYouTuberの世界において、しかし殊更に異質さを誇るレーベルがある。その名は「KAMITSUBAKI STUDIO」(神椿スタジオ)。花譜を筆頭に歌を主戦場とする“バーチャルシンガー”という概念を打ち出したこのレーベルは、歌によって独自の世界観を築き上げようとしている。その神椿スタジオに所属しているユニットとして注目をあびているのが、コンポーザーのMisumiとボーカルのEMAの二人で結成されたDUSTCELL。7月に配信でのライブパフォーマンスを行った彼らは、バーチャルではなく現実にいるアーティストとして我々に歌声を届けようとしている。なぜバーチャルを経て現実へと回帰したのか、その(逆説的にSFじみた)問いの答えは、本作とこれからのDUSTCELLの活動の中に我々が見出だしていかなければならないのだろう。
墨佳遼 『鉄界の戦士』マエパンダ
多腕をテーマに機械と肉体の融合と有機と無機の生命体とその狭間に生きる人々のドラマ。全ての命ある存在を無駄なく活かしたい主人公の想いに巻き込まれてゆく人々の立場の変化がSFの舞台を上手く利用しているのが上手い作品。
吾峠呼世晴 『鬼滅の刃』祥太
ダークファンタジーに分類されるようなハードな作風でありながら「全集中の呼吸」「鬼化」などの広義のSFに分類される要素を数多く併せ持つ。「家族の敵討ち」「敵味方の悲惨な過去」といった要素は少年漫画において使い古されてきたが、作者はその王道を類まれな構成力と描写力で描き切り、社会現象を起こす程の巧みな物語に仕上げた。もちろん作者は王道の要素だけでなく、「熱狂的なファンがつくほどの魅力的なキャラクター造形」といった非常に難易度の高いガジェットを使いこなし(それも初連載で!)ている所も評価したい。本作は既刊が1億部を突破したこと、史上初めて週間オリコンランキング1位~10位を独占したことを鑑みて、多くの人々の娯楽作品となっている。まさしく「これがなかった以前の世界が想像できないような作品」としてふさわしく、コロナ渦の情勢において多くの人々の心の支えになった功績は評価されるべきである。
配信イベント『ゆり子の部屋』第一回マエパンダ
アンヌ隊員 を慕う人々に向けてひし美ゆり子さんがゲストを迎えて思い出の作品を上映しながらゲストとコメンタリーするライブ配信。 第一回はウルトラマンエースのヒロイン西恵子さんをゲストに迎えてガールズトーク回と思いきや上映作品を先ずはそのまま視聴してからコメンタリー付きで再上映する初見の人にも優しい展開。 上映作品:1 『ウルトラセブン』第8話「狙われた街」 ●上映作品:2 『ウルトラマンA』第22話「復讐鬼ヤプール」 撮影裏話など特撮に関わる皆さんの熱い時代のお話しが沢山展開される楽しい配信イベントでした。 運営の友井さんがファンのために最適な配信方法を探して楽しませてくれているのも特撮を楽しむ人々への熱い想いが伝わってくる素晴らしい活動です。
ゲーム『十三機兵防衛圏』アオいナツ
80年代、映画や漫画など気軽に誰でも楽しめるSF作品が溢れててとてもわくわくしたものです。この作品はあの頃のわくわくやキラキラをこれでもか!と詰め込みながらもきれいにまとめあげてて圧巻でした。主人公13人の視点から紡いだ複雑な設定、物語はもはや狂気さえ感じるほど。ゲームだとなかなか敷居が高く手が届かない人もいるかもしれませんが、ゲームだからこそできた体験であり、唯一無二の作品だと思います。
ゲーム『DEATH STRANDING』匿名希望
分断された世界で「伝説の配達人」としてプレイするこのゲームは、期せずしてこのコロナ禍の時代を予見したような作品となった。配送従事者の重要性がより明確になってきたのにもかかわらず、ステイホームな住人たちに身体的接触を避けられてしまう孤独な存在として表現されているからだ。それでもゲーム内で試みられる「ゆるいつながり」には希望がある。またむくつけき男性である主人公が、人工子宮を身に着け「胎児」をあやしながら進み、疑似的な妊婦として自らを生き直していく姿には色々と考えさせられる。破滅と進化のからみあう設定はSF的に作りこまれていて興味深い。今期のSF作品としては大きな存在感を示しているもののひとつだ。
澤野弘之 『BEST OF VOCAL WORKS [nZk] 2』マリ本D
映像によるSF作品においての音の重要性は、映画『メッセージ』がアカデミー賞で音響編集賞を受賞したという例一つ見ても明らかであろう。そして日本における劇伴音楽を考えるのであるならば、澤野弘之を無視することができないのもまた明らかである。その活動は多岐に渡るが、SFアニメに絞って見ても『アルドノア・ゼロ』『甲鉄城のカバネリ』『Re:CREATORS』『プロメア』などSFアニメを語るうえで外せないものばかり。そんな澤野がボーカル楽曲に重点を置くプロジェクトとして行っているのが“SawanoHiroyuki[nZk]”であり、本作は上記のアニメの主題歌なども含まれたそのプロジェクトにおける二つ目のベストアルバムである。映像によるSFでの音のはたらきを今一度認識するためにも、本アルバムをはじめとした澤野作品をSFの枠組み内で評価する必要があるのではないだろうか。
北野勇作 『100文字SF』 しゃけとば
大学生の頃好きだったSFに引き戻してくれた本。就職してから仕事が忙しく、すっかり読書の習慣がなくなっていました。久々に本屋に行った時、ふと手にとって購入。「短いしこれなら読めそうだな」くらいの気持ちだったのですが、予想以上に面白く、もったいないので1日2,3編ずつゆっくり読み進めました。たった100文字で壮大な出来事を感じさせてくれるし、SF?怪談?なものや作者の日常から生まれたと思われるものもあり、幅の広さに驚かされます。表紙や帯文まで100文字に徹底されているのも良いです。
遠藤浩輝 『愚者の星』 マエパンダ
徐々に明らかになるがまだまだ謎の多い世界観にワクワクしながら、戦術を駆使したチーム戦はSFならではの戦い方を楽しめる作品。組織に飛び込んだ主人公は上手く組織を利用して成長し仲間との絆が作られていく王道な展開も心地良いのです。
若松卓宏(漫画)野田宏(原作) 『恋は世界征服のあとで』マエパンダ
デス美さんをアニメ化希望の作品。戦隊モノのリーダーと怪人組織の幹部の恋愛物語と言いつつ、怪人幹部適正の高いデス美の成長物語に笑い、キュンキュンな恋愛エピソードにホッコリするデス美さんのを愛でる作品なのです。
動画「NVIDIA GTC 2020 Keynote Part 1: CEO Jensen Huang Introduces Data-Center-」マエパンダ
Accelerated Computing で世界を加速する環境。SF は加速して迫りくる現実の先を進み続ける事が出来るのか?野心あるJensen Huang のスピーチの流暢な英語や的確な日本語訳は本当に本人なのか?AI なのではないかと疑ってしまう。URL : https://youtu.be/bOf2S7OzFEg
アレン・スティール(著)中村融(訳)『キャプテン・フューチャー最初の事件』あぼがど
新型コロナの不安がピークに達していた2020年4月、懐かしいヒーローが私たちの前に還って来ました。カーティス・ニュートン、またの名をキャプテン・フューチャー。「未来」という希望に溢れた言葉を携えた、私たちのキャプテン。現代の読者に向けてリブートされた新シリーズは、原典とは少し変化しています。ですがそこに流れる物語は、登場人物にちりばめられた魂は、昔と変わらぬヒーローたちのものです。例え現代がどれほど不安で先の見えない場所になっても、それでも「信じても良いもの」は不変なのだと、これはそんなお話です。 「還ってきた懐かしいヒーロー」というのはこれまでどこかに消えていたわけではなくて、実はずっと私たち自身のこころ中にあったのだと、そしてもう一度そこに立ち返り、まっすぐに未来を見るのだと、いわばリブート版キャプテン・フューチャーを通じて、私たちは私たち自身の未来をリブートするのです。
野村亮馬 『第三惑星用心棒』doubly
衰退した地球で、エージェントロボが野良ロボットらに対処するエピソード群。軌道エレベーターやロボに最適化されたツール、「人に寄り添う異形」として少し不気味さが残るラボットたちを想像力の枠一杯を類まれな筆致で描き切っているSF漫画。
柞刈湯葉 『人間たちの話』なな
雑味のないあっさりとした文の味わい 読みやすく、何度読んでも読み飽きない 特に秋の夜長にはぴったり! もっと気負いなく、SFを楽しんでもらいたい、普段SFを読まない方にもおすすめです。 (本読むのは好きなんですがアウトプットが苦手でもうここらで勘弁してください…でも柞刈湯葉さんの人間たちの話もっと売れて欲しいしもっと色んな方に読んでほしいです)
ゲーム『十三機兵防衛圏』和崎 慶
この作品の何が一番の魅力なのか?私としては、そのゲーム構成の素晴らしさによってもたらされるSF的体験の心地よさだと考えています。 複数の時代、13人の少年少女の視点で語られる物語を、ある程度自由に進めていくことができます。 進めていくうちに重なり、混じる物語の展開に、大抵の人間ならば、大いに混乱し、引き込まれていくことでしょう。 ストーリーラインを4次元でイメージする必要が生じるというSF的体験を、このゲームで初めて味わわされました。 また、物語のテーマとしても、時間旅行、巨大ロボット…SFファンならば心惹かれるであろうものを詰められるだけ詰めこんでいます。 いわゆる「古い」SF的テーマを存分に扱いながらも、物語の構成とゲームというメディアの組み合わせによって、今までにない「新しい」SF体験に昇華されています。 この体験こそ、新時代のSF大賞と言えるのではないでしょうか?
原作:平井和正・石ノ森章太郎/脚本:七月鏡一/作画:早瀬マサト・石森プロ 《幻魔大戦 Rebirth》FNL
平井和正、石ノ森章太郎という、SFの小説、マンガ、アニメの巨人の作品世界を取り込み、大河シリーズ「幻魔大戦」のかつての読者が読みたかったであろうストーリーが展開され、きちんと完結したことを高く評価したいと思います。幻魔による宇宙的破壊が、地球にだけ及ばなくなるという結末(私はどう感じました)の是非は感じますが、過去の作品をもとにしてこれだけの作品が生まれたという、日本SFの成熟を示すものでもあるのではないでしょうか。
劇場アニメ『HUMAN LOST 人間失格』黒井真
誰もが知る文学史に残る名作を、SFアニメーション映画としてリブートするという発想がすでにヤバい。 「無理でしょ?」 「何言ってるの?」 「意味わかんないんだけど」 恐らくはその試みからして全否定されたであろう映画を、このスケールで実現してしまったという事実だけでもスゴイ。 さらにそのなかで描かれる、昭和111年の日本社会の狂いっぷり。 超長寿社会、年金一億円、GDP世界一位、そのための一日19時間労働と環境汚染による常時マスク着用、――現代日本を生きる者に刺さりすぎる設定の上に織りなされる狂気のドラマは、まさにSF大賞に相応しいと言えるでしょう。
TVアニメ『キャロル&チューズデイ』miyo_C
火星と地球に人々が住む世界で、AI、ソーシャルネットワークがからみ、少女達の出会いから、インディーズ、そして大きく人々をつなぐ出来事まで広がって行く物語が、そして歌が素敵な作品でした。 生きること、歌うこと、そして世界は。SFという舞台装置の中で歌の力が試されます。
TVアニメ『映像研には手を出すな』miyo_C
想像する力と創造する力が合わさって、アニメというSFと切り離せない媒体が融合したコミックス作品がさらに実際のアニメとして放送されたことがとてもSF的だと思いました。 また過去作品へのオマージュもNHKアニメとして画期的でありました。
柴田勝家 『アメリカン・ブッダ』miyo_C
時代を映すかのような、さまざまな物語がSFと民俗学的な視点で融合した作品達が集められた短編集。テクノロジーだけでない作者特有の観点も含めて、今推薦するにふさわしい作品と思いSF大賞にエントリーいたします。
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