第34回日本SF大賞エントリー一覧

2012年9月1日-2013年8月31日対象 | 全147件

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【時間外参考】ゆうきまさみ「鉄腕バーディー」シリーズ(最終巻が2012年9月)小川一水
宇宙人とのファーストコンタクト、少年の成長と恋、力を持つことの葛藤、錯綜する勢力関係、秘められた陰謀などを、シャープで格好いい絵柄で描いた、執筆期間37年全33巻の大作。走り切ったことに感動。【エントリー管理者注・タイトルのみ〆切前に、推薦コメントが〆切後に寄せられましたため、エントリーとしては無効ですが参考として掲示致します】
「SF Prologue Wave」岡和田晃
2011年に創刊されてから、もうすぐ三周年を迎える日本SF作家クラブ公認ネットマガジン「SF PrologueWave」。本作はプロの作家たち自身がSFのための新しい「場」を創出すべく、編集・運営・広報等に現場で携わりながら、ショートショート・コラム・著者インタビュー・イベントレポート・シェアードワールド小説など、多様な企画を貪欲かつ持続的にこなしていくことで、旧来は持続的な運営が難しかった電子媒体における作品発表の「場」として、確実に定着しつつある。また、SF作家クラブ会員のほか、多彩なゲスト寄稿者にも恵まれ、ここから新たなムーヴメントが起きそうな予感にも満ちている。過去、日本SF大賞は『異形コレクション』のようなアンソロジーにも授賞されたことを鑑みると、本作も授賞にふさわしい
伊藤優子編、巽孝之監修『現代作家ガイド6 カート・ヴォネガット』(彩流社)岡和田晃
イラストレーターとしても著名なYOUCHAN(伊藤優子)が編集を手がけた本書は、批評に必要なジャーナリスティックな関心と、アカデミックな研究としての精度を兼ね備えているという意味で、まさしく充実した完成度を誇っている。ヴォネガットと大江健三郎との対談からキルゴア・トラウト作品リストに至るまで、硬軟取り混ぜた構成が素晴らしい。また、イラストレーターらしい造本やデザイン、手書きの地図などのこだわりも、本書を凡百の解説書から一線を画したものとしている。没後、ヴォネガットそのものが「典型的なポストモダンの作家」という枠組みで虚しく消費されているかに見える状況下、また「ゼロ年代批評」が軽佻浮薄な流行の後追いに終始するなか、創作と批評が同じフィールドでの勝負を余儀なくされるという(考えれば奇妙な)SF大賞の慣習を措いても、本書には創作と肩を並べて勝負を期待できるだけの強度が備わっている
林美脉子『黄泉幻記』(書肆山田)岡和田晃
ドイツ・ロマン主義が確立した批評的なフレームの延長線上にSFの理念型を考えてみた場合、それは小説よりもむしろ詩の形ではっきりと顕現する類のものではないか。歴史を振り返ってみても、ラングドン・ジョーンズ『レンズの眼』のように、アンリ・ミショーの詩篇を思わせる光芒を見せた作品も書かれている。本書には、エドガー・ライズ・バローズの世界をも作中に取り込んだ前作『宙音』の系譜に連なる詩篇が集められているが、前作で描かれたヴィジョンはいっそう深められ、宇宙論的なスケールと宗教的な贖罪のモチーフが相俟った、死と性の根幹を抉る鮮烈な作品となっている。昨年日本語で書かれたSF作品のなかで、もっともジェンダーSFの本義にかなう作品でもある。日本SF大賞はなぜか詩に冷淡であり続けてきたが、日本SFの旗手の一人荒巻義雄が詩人としても高く評価された現在、かような姿勢は時代遅れと言うほかない
山野浩一「地獄八景」(『NOVA10』所収、河出文庫)岡和田晃
日本SF第一世代(厳密には一.五世代と言うべきか)にあたる山野浩一の三十年ぶりの新作は、単に巨匠が復活を遂げた、というだけではない。伊藤計劃・樺山三英・宮内悠介ら若い世代の活躍に刺激を受け、彼らの作品に対する返歌として、「世界内戦」(シュミット)下における「死」の情景を、達観した「笑い」の境地から再考するという野心作。これまで日本SF大賞は、先行世代の功労者をその没後に特別賞や特別功労賞といった形で報いることが多かったが、それでは遅すぎる。そもそも「NW-SF」誌の創刊やサンリオSF文庫の編集顧問といった重要な仕事をはじめ、戦後日本文学を語るうえで山野浩一の仕事はどうあっても外せない。「本の雑誌」でサンリオSF文庫の特集が組まれたことも記憶に新しいが、山野浩一の批評精神は、今こそSFの「周縁」ではなく「中心」において評価されなければならないだろう
酉島伝法『皆勤の徒』(東京創元社)岡和田晃
現代SFにおいてポストヒューマン・テーマの重要性が日々高まっているのは、多言を要しないだろう。本作は何よりも「日本語」の造語的側面に着目し、卓越した造語センスによって、異形の未来を余すところなく描き出す。それが、人間を情報として捉えるサイバーパンク以後のポストヒューマン理解と、ルネッサンスに確立されたヒューマニズムの彼岸を描くポスト・フーコー的な人間理解とに、うまく接合されている。また、挿入されたイラストレーションも美しく、ヴィジュアルと文章を見事に融合させたW・G・ゼーバルトの諸作を彷彿させる側面もある。「日本SF冬の時代」は、商業的なシーンにおけるSFの困難が重要な課題となっていたが、本作は何よりもまず、表現としてのラディカリズムにおいて、「冬の時代」の困難を超克する圧倒的な膂力を感じさせるものだ
岡田剛『十三番目の王子』(東京創元社)岡和田晃
ハイ・ファンタジーは事実上の壊滅状態にある。トールキンが述べた"consolation"の感覚が、「癒やし系」として通俗的に浸透してしまったのが一因であるだろう。私たちは想像力まで規格化されている。なかでもヒロイック・ファンタジーは、過小評価の一途を辿っている。本作は、そうした状況を一作で変革しうる記念碑的傑作だ。伊藤計劃言うところの「世界精神(ヴェルトガイスト)」型の悪役という人物造形を大胆に取り入れながら、本質的に反近代を志向するヒロイック・ファンタジーのニーチェ的な暴力性を、圧倒的な筆力で紡ぎ出す身体感覚の妙に結集させる。ファンタジーは往々にしてSFのサブジャンルとみなされ、SF大賞でも概して評価が低かったものと認識しているが、本作はファンタジーの立場から「SFとは何か」をしたたかに問うものともなっており、SF大賞に推薦するにあたっていささかの躊躇いも感じない
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宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』(早川書房)岡和田晃
日本は、事実上の戦時下にあると言ってよいだろう。だが、その内実はマスメディア・ソーシャルメディア問わず、まるで意識されていない。文化状況はそれを反映して微温化の一途を辿り、一方で排外主義的な風潮は静かに浸透しつつある。旧来型のハードSFが、こうした状況へ無自覚に加担することでその限界を露呈しているのに比して、本作はポストヒューマン・テーマの最も昏い部分を見据えながら、科学技術が本来的に内包する政治性をフラットに問い直し、大胆に「外」へと開かれている。加えて本作は、英訳版がシャーリー・ジャクスン賞の候補ともなった伊藤計劃「TheIndifference Engine」が内包した問題意識を的確にふまえながら、数多刊行された伊藤計劃の劣化コピーのごとき作品群とは一線を画している。「継承」の問題に自覚的で、かつ、その重荷を乗り越えようとする意味で、本作は日本SFの看板を背負うに値する傑作であると確信する
皮膚感覚と人間のこころ (新潮選書) 傳田 光洋 (著) (2013/1/25 新潮社)井上雅彦
皮膚に脳と同じ受容体があることを発見した皮膚科学者(工学博士)によるノンフィクション。先端科学から「心」を探っていく研究手法と、皮膚に纏わる古典文学への傾倒ぶりが、独特の味わいを醸しだし、濃厚なセンス・オブ・ワンダーを味わうことが出来る。 ちなみに著者は、星新一ショートショートコンテスト出身者でもあり、本人は「星新一は理系も文系も超越しているから星新一なのだ」と主張しているのだが、それはさておき、本書は、近年読んだなかで、最もSFマインドを刺激された科学書――という意味で推薦する次第である。
スワロウテイル序章/人工処女受胎(著:籘真 千歳)匿名希望
シリーズ3作目. 主人公「揚羽」が「お嬢様校」と呼ばれる寄宿制女学校を舞台に活躍する話です、作品全体のストーリーの時間軸としては一番初めに当たる物語です。 一般的にイメージする「秘密の花園」に「男の望む伴侶を生み出す為に造られた洗脳機関」と言う「女学校に望まれる男社会」のダークな一面。学園と言った施設につきものの「七不思議」、学園祭にコンテストいった青春のイベントをバックに「第3の性」と呼ばれ、男性社会に奉仕する為に造られた彼女たちフィギュアの生体部品に仕組まれた実験ギミックが「人じゃなくロボット。研究者やマッドサイエンティストのモルモット何だよ」的サイコ・サスペンスなストーリーが凄く面白い。コレなら幅広いジャンルの読者にSFを楽しんで頂けると思った。他にも色々ありますがネタバレに成りますので残りは本編を購読の程
panpanya「足摺り水族館」(1月と7月)natsu1985
最近「異景マンガ」とでもいうようなジャンルが出来つつあるように思うのだが、これは極めつけかも。民俗学的なコラージュに溢れた「ねじ式」のような夢世界なのだが、不思議な笑いが込み上げてくる
長谷敏司『BEATLESS』siki
長谷敏司『BEATLESS』を推薦します。人工知能について扱った作品ですが、SFというものに手を出しにくい方にも、人工知能についてというテーマに惹かれて手に取られた方にも満足してもらえる入門書でありバイブルにもなる作品だと思います
藤井太洋『GENE MAPPERーー Full Buildーー』(早川書房)巽孝之
拡張現実と遺伝子工学から農業の未来に注目した 21世紀 SF。2013年夏の第二回国際 SFシンポジウムに来日したアメリカ のバイオパンク作家パオロ・バチガルピに優るとも劣らぬスリリングな物語が展開される
東浩紀『クリュセの魚』(河出書房新社)巽孝之
南軍の敗戦の将から始まったバローズの火星SFと日本消失後の王家の末裔が太陽系の命運を握る東の火星SFが真正面から交差するのは、必ずしも偶然とは思われない。そこには、フォークナーから復興期の精神を学ぶことで現代日本SFを確立した小松左京の精神も見え隠れする。その意味で、東の本作品はまぎれもなく日本SF独自の伝統を継承し、それを批判的に発展させた火星文学と呼ぶことができる
東野司『何かが来た』(岩崎書店)巽孝之
日本SF作家クラブ 50周年を記念する 2013年度にふさわしい、どなたにもおすすめできるSF作品。ベテランが積極的にジュヴナイルにも取り組み高品質の成果を挙げているのは、まことに喜ばしい。英訳を中心に海外進出のめざましい昨今だが、本書は欧米 SFの水準に匹敵すると思う
ゆうきまさみ『鉄腕バーディーEVOLUTION』タニグチリウイチ
2012年10月3日刊行の単行本で終結した長大なストーリーは、常人離れした怪力美少女によるバトルという痛快娯楽劇を維持しつつ抜けだし宇宙を巻きこみ時空すら超えるドラマへと発展。楽しませてくれた
庄司創「三文未来の家庭訪問」(アフタヌーンKC)natsu1985
現代SFとしての思索的深度でいえば「勇者ヴォグ・ランバ」を挙げるべきでしょうが、個人的好みは本書表題作。多様性の尊重がディストピアとして顕現した社会を生きる人々の、細やかな意志を繊細に描き出した傑作
『NOVA(全10巻)』大森望編鬼嶋 清美
新作SF中短編の発表の場としてSFプロパーのみならずジャンル外の作家の作品も集めた短篇集として、また創元SF短編賞の選者などと合わせ、現在の日本SFの活況を呼び起こした大森氏の偉業は讃えられるべきものです
白井弓子『WOMBS』第4巻小谷真理
連載中であり、エントリーの時期が難しいかとも思ったが、すばらしい作品なのであげておく。『宇宙の戦士』の妊婦版ともいうべき性差SF。原住生物との攻防を繰り広げる未来の植民地惑星で、原住生物の種を植え付けられ特殊能力を獲得した妊婦部隊を中心に、「母」の身体と精神、胎児らとの関係性が、軍隊という特殊な状況下で徹底追求されている。稀に見るぶっとんだ設定だけではなく、妊娠時の生々しい身体性を扱った描写力も興味深く、これを評価できるのは真のSF魂の持ち主だろう、と考えるのでエントリーする。(ちなみに3巻はセンス・オブ・ジェンダー賞にノミネートされた
よしながふみ『大奥』第9巻小谷真理
連載中なので、エントリーする時期が難しいと思ったが、すばらしい作品なので、あげておく。謎の伝染病・赤面疱瘡で男性が激減した江戸時代。将軍までもが女性になり、男女逆転大奥が誕生。腐女子力全開な設定だが、それだけではない! こを舞台に、性差と権力の関係を徹底的に探究する知的な歴史改変SFである。1-3巻は未完ながら、すでにティプトリー賞とセンス・オブ・ジェンダー賞を受賞している。本書では、女性である平賀源内がついに登場し、伝染病と対峙。まさに科学と女性をめぐる思索へと発展しており、このとどまるところを知らぬSF的想像力を評価しないでどうする、と思わせる
東 浩紀『クリュセの魚』(河 出書房新社・1600円)小谷真理
異星人の遺したワームホールゲート発見を境に激変する火星移民史が背景にあり、透明感あふれるロマンスが展開する。哲学的思考の持ち主だけあって、物語の水面下に潜む天皇論には考えさせられるところが多かったのでエントリー
藤崎慎吾『深海大戦』(角川書店・1800円)小谷真理
著者は海洋SFでは定評があるが、この最新作のど迫力には舌をまいた。完結していないけど、この迫力を今評価しないでどうする、と興奮したのでエントリー。千メートル以上潜水できる深海作業用ロボット・イクチオイドとその操縦士のスリリングな活躍が、海の魅力をぞんぶんに引き出している。たっぷり盛り込まれた海洋フロンティアの最前線の知見に圧倒されながら、海のロマンに浸りきれる大傑作♡
藤田雅矢『クサヨミ』(岩崎書店・1500円)小谷真理
植物の発する情報を読む特殊能力「クサヨミ」というアイディアが秀逸。この能力が発現した中学生らのクラブ活動的冒険譚。植物の目線を通した文明論もユニークだ
野崎まど『know』(ハヤカワ文庫JA・720円)小谷真理
まるでスマホをそのまま移植されたような身体が登場し、検索技術とプライバシー公開のランクによって、一種不可視の情報階級社会が招来された未来社会が描かれている。京都大学を擁する日本の古都に、先端的な技術光景を入れこんだところもたいそうお洒落だが、体験しえないはずのものを体験しようとする試みを情報論的に思索する哲学的姿勢は、いかにも京都学派を生んだ古都の未来的想像力を彷彿とさせてよかった
東野司『何かが来た』(岩崎書店・1500円)小谷真理
街の住人が全員異質化するというジャック・フィニィばりのアイディアを、子供の目からじっくりと捉え、科学と政治が絡み合う現実として、つまりは未来には確実に起こりうる脅威の体験として、緻密に構成。科学的な論理展開も面白いが、なにより残酷さと裏腹の抒情性に胸を打たれた。児童文学とSFとの幸福な出会いを目論んでおり、脅威を乗り越えそれに立ち向かっていこうとする勇気を与えてくれる点でも、高く評価したい
高野史緒『ヴェネツィアの恋人』(河出書房新社・1700円)小谷真理
鋼鉄製のサイボーグとなったルイ一六世を描く「錠前屋」や、TVでワーグナーに夢中になるルートヴィヒ王を追う「白鳥の騎士」など、この著者ならではの洒脱な歴史改変SF七編が優雅に展開。スチームパンク気質がカッコイイので、エントリーします
藤井大洋『GENE MAPPER』小谷真理
爆発的な人口増加に対応するには、自然作物ではもはや間にあわないという事情から、遺伝子設計された農作物が一般的になった近未来。とある遺伝子デザイナーの手がけた作物が突然とんでもないものに変貌するという事件発生。この謎解きが展開するのだが、遺伝子設計の実態や、仮想現実のネット技術の浸透した世界の様子が、実に詳細に構築されていて、ポリティカル・サスペンスとしても圧倒的迫力。斬新さでは他を圧しているのではないでしょうか
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小川一水『コロロギ岳から木星トロヤへ』(ハヤカワ文庫JA・600円)小谷真理
多次元空間にまたがって存在する生命体の「事故」のため、三次元空間世界に思わぬ影響が出る。西暦2231年の木星付近の小惑星アキレスと、現代日本の北アルプスはコロロギ岳と、ふたつの世界の住人が、時空間を超えて協力しあって、この生命体を救出する……と与太話のような設定ながら、こんな稀有壮大なお話はSFでなければ書けません、無理。おもしろすぎるので、エントリー
新城カズマ『tokyo404』(文藝春秋・1300円)小谷真理
「404」とは検索しても「見つかりません」、「未検出」という意味で使用される記号である。本書は未検出の東京をめぐる物語。土地神話に根ざした定住型思考とは異なる、非定住型、すなわち移動型思考を東京気質に見ている。一風変わった視点の東京SFと言えようか
長谷敏司『BEATLESS』(角川書店)小谷真理
超高度AIと人類の共存する新世界の夜明けを、高校生の少年の視点で捉えようとする意欲作。硬質の思考と抒情性とが巧みに合わさり、透明感あふれる世界になっている
小田雅久仁『本にだって雄と雌があります』(新潮社・1800円)小谷真理
中身はタイトル以上に秀逸。雄本と雌本の間に誕生した幻の書籍と、蒐集家一家との百年の歴史。書籍愛が見え隠れする饒舌文体のすばらしさに、思わず顔がほころんだ。関西弁全開で描かれる大阪人メンタリティが、愛書家のライフスタイルと妙にハマっているところも粋
進撃の巨人木立嶺
主人公を始めとする個性豊かで魅力的な登場人物達、ウォールや立体機動装置などシンプルながら洗練されたガジェット――読者/視聴者をぐいぐい引き込んでしまうこの素晴らしい土台の上に構築されたものは、優れた資質を持ちたゆまぬ努力と工夫を重ねる人間達が、ただ人間であるがゆえに巨人に圧倒されてしまう絶望的な現実です。この作品の魅力を語るのに難しい言葉は必要ではないでしょう。現代社会に生きる多くの人々が、過酷な物語世界を生きる主人公達と感覚を共有できるのではないでしょうか。
アニメ「革命機ヴァルヴレイヴ」魂木波流
一部の展開や演出に、2クールという短さからくる雑な箇所はあるものの、情報粒子ルーンを操る地球外生命体マギウスとの邂逅と戦い、接触による新人類の創出、第三銀河帝国樹立までをやりきったこと、充分SFアニメしていたと思います
中島諭宇樹・河村巧「ひまスペ兎!」(ジャンプコミックス)natsu1985
女子だけの構成員による恒星間貨物船の日常を描く萌えマンガにして、物理的整合性にこだわったハードSF。設定を下支えする丹念な考証に爽やかなジュブナイル性。理想的な学習マンガの現代的アップデート
恩田陸「交信(短編集『私と踊って』所収)」こゆ
恩田陸『私と踊って』(新潮社)の表紙=「交信」を推薦したいです。私にとってSF=宇宙もの。これだけの文字数で、圧倒的な寂寥感とスケールの大きさ、同時に地球の温度まで伝わってくる。はやぶさの事詳しくなくても、目が潤みました。視覚的な仕掛けも、素晴らしい
大森望編「NOVA」シリーズnatsu1985
「日本SFの夏」を標榜する編者の、その実践ともいうべきアンソロジー。とにかく互いに共鳴しあえるホットな「場」を提供し続けた功績は甚大。個人的ベストは本全体の完成度が高い「2」
「渋谷慶一郎feat初音ミク:ボーカロイドオペラthe END」yoichiro hiroki
先鋭的音楽家が初音ミクを使い作り上げたオペラ。人間とアンドロイド、喪失と再生など壮大なテーマを音楽、映像、詩を駆使して描きだした。良質なSF文学と問題を共有し、類を見ない方法で具現化
宇宙戦艦ヤマト2199匿名希望
ここ数十年のSF小説、映画や科学の研究成果の様々な要素を生かしていて集大成としての興味深い作品です。また、現在SFを愛読する人たちの原風景であり、多大な影響を与えたヤマトという作品が新たな解釈で作られたことは次世代にSFを受け継いでいく取り組みとしてたいへん有意義であったと思います
『NOVA 』全10巻匿名希望
短篇の発表媒体が限られている中で、貴重な媒体であり、現代のSF作家の意欲的な作品を数多く収録していて、恐らく将来的にこの時代のSFのひとつの到達点を示す歴史的な企画になると思われます。大賞を受賞することで注目度が高まり、これに続く企画が現れることを切望します
パンツァークラウン フェイセズ 著者:吉上亮匿名希望
コンピューターによって管理されたディストピア社会というと使い古された世界観であるように思われるが、それを実現させているのがパーソナライズという既に現在の生活に浸透している技術の延長であることが面白い。また機械によって人の行動が決定されているようでありながら、その決定が個々人の行動履歴に基づいた物であるという設定は、現在の民主主義社会における自己責任への意識の在り方に対する問題提起とも取れ、3.11以後のSF小説として相応しいものであるように思われる
『スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの』 籘真千歳 早川書房のんきな太公望
『スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの』を推薦します。人間より人間らしい人工妖精たちの、苦悩、悲しみ、葛藤、勇気、恋、愛、笑い…彼女たちのその心情は「守りたい者」のために生まれ、そのために苦悩することも。人と人でないもの、その違いは心の存在かもしれないが、それは人だけのものなんだろうか、この作品は、色んな問いかけをしてるように思います。また、竹岡美穂さんの素敵なイラストが世界観を広げてくれます
『パンツァークラウン フェイセズ』y-mototani
今年の数なる中でSF作品を推薦するならば、吉上亮氏による「パンツァークラウン フェイセズ」だと思う。作品に於ける都市構造、都市のシステムが現実味に帯びていることが非常に良かったと思う。作品内のUn-face、それはGoogleによって開発されているGoogle glassではないかと思うくらいである。非常に現実味があり、今後の社会への警鈴とさえ感じてしまう。とはいえ、SFテイストだけではなく、エンターテイメントに非常にすぐれている。1巻から流れるような物語。2~3巻と流れるように読み進め、進めなければ止まらぬスピード感がある。私個人として、プロローグとエンディングの主人公の変化が演出として素晴らしいと感じた。故にSFとして素晴らしく、一般の読者にも刺さり、3・11の以降の作品として意義のある物語として、吉上亮氏の「パンツァークラウン フェイセズ」 を本年度のSF大賞として推薦したいと思う。
『ニンジャスレイヤー』(B・ボンド&P・N・モーゼズ)ruca
舞台は日本、大企業が影から支配する、物理的電子的にも鎖国状態のディストピア。ニンジャという理不尽な異能の存在に立ち向かうニンジャを殺すニンジャの復讐劇である。ハッカー文化、機械との合一なども魅
『巨神兵東京に現わる 劇場版』(2012年11月『ヱヴァンゲリヲン新劇 場版:Q』と同時上映)宮野由梨香
見慣れていた東京の風景の見え方が、これに接した前と後では、確実に変わった。もう、これを見ない以前の自分には戻れないと思う
web漫画「無限島」作:中川悠京中川悠京(本人)
(第1話は2010年初出ですが、最終話は2013年9月に配信されたものです。)http://morningmanga.com/mugentou/自分で自作の良い点を探すのが難しいので、紹介とさせて頂ければ幸いです。トキオから無限島に移住する事になった少女・こおるの生活。消えない花火、飛びイカを追う船団など少しずつ日常を踏み越えた出来事が起こります。優しい毎日は少しずつ壊れ最後に無限の本当の姿が現れます
『BEATLESS』長谷敏司カワカミ
シンギュラリティ後の人とモノの在り方について、ただ複数の意見を提出して放り出すのではなく、本書の中での結論をきちんと出し、なおかつ読んだ人間にも、ではあなたはどう思う? という問いを突きつける。しかも上質なSFエンターテインメントという形で。もうすでに挙げらているし、わざわざ改めて私が推薦することもないのだが、それでも自分も言葉に表して推薦したい、と思わせてくれる作品でした
アップルシードXIII(宮川輝)Ryu_Amano
同名アニメの漫画版。「押井版攻殻」以降の士郎正宗原作作品群に付き纏うある種陰鬱な哲学的イメージを振り切り、独自のアレンジも交えて「古き良き士郎正宗漫画」の再現に成功した良作。月刊アフタヌーン2013年6月号掲載分にて完
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「裏通りの14日(sage)」Ryu_Amano
戦闘サイボーグと少女の関係を描いた、Pixivにて公開中の連作漫画「裏通りの恋」シリーズより。悲劇的傾向の多い人工身体者の恋愛をテーマに、ポジティブで心温まる答えを提起した作品http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=33564025
『図書館の魔女』高田大介(講談社 2013.8)Yoshiriro KATSUKI
世界最古の図書館の館長である「魔女」マツリカと、口のきけない彼女に手話通訳として仕えるためにやってきた少年キリヒトとの出会いから始まる壮大な物語。言葉と書物を中心に据えた骨太の異世界ファンタジイで狭義のSFではないが、ファンタジイ作家も多く所属するSF作家クラブ主催の賞の候補として検討に値すると思う
三島浩司『ガーメント』(角川書店)ミツバチ
従来とは異なる方法で戦国時代にタイムスリップするアイデアが斬新。小説の結末は涙なしで読めない
『愛の徴 天国の方角』近本洋一(講談社 2013.5)Yoshiriro KATSUKI
一見ペダンティックな歴史ミステリのようだが、実は2031年の量子検索アルゴリズムプロジェクトと17世紀フランスの不思議な指輪に導かれる少女の旅とが交錯する量子論SFロマンス。整理されていない部分もあり決して読みやすくはないが、デビュー作らしい熱気をはらんだ意欲作
長谷敏司「BEATLESS」灰鉄蝸
ともすればご都合主義にも見えかねない美少女ロボットの存在・振る舞いそのものを、SFガジェットに昇華した物語は見事。ヒトとモノの関係という題材に対し、様々な立場・意見を登場させつつ、エンタメとして成立させた傑作だと思います
『ヴェネツィアの恋人』高野史緒(河出書房新社 2013.2)香月祥宏
全7篇収録の短篇集。言語SFとしても秀逸な幻想譚「空忘の鉢」、テレビ的な受像機が存在する19世紀ミュンヘンの地下を舞台にした「白鳥の騎士」など、SFファンとっても必読の作品が並ぶ。各篇の舞台となっている土地や時代背景の描写も魅力的
野崎まど「know」ささみ
高度に発達した情報処理技術と脳が融合した果てにあるのは何か。「知る」事の限界を突き詰めて「知る」とは何かを問いかける一作
TVアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」ささみ
フィリップ・K・ディックを彷彿とさせるディストピアSFと警察組織で描かれる泥臭い人間ドラマの融合が心地良い作品。心理状態の計測による犯罪抑止という世界設定が堅牢な設定基盤となっている
『ルカの方舟』伊与原新渡邊利道
アストロバイオロジー研究室を舞台に、膨大なディティールを積み重ねて、研究の人間ドラマや、科学研究の社会的、倫理的な問題の提起、大胆な仮説の提示などを盛り込んだ理系ミステリ。現代SFの重要な方向性を示唆している作品だと思います
『ポストヒューマニティーズ』渡邊利道
藤田直哉さん編集のSF評論集。ポストヒューマンの主題と「伊藤計劃以後」という状況をめぐる、硬軟とりまぜて非常に幅の広い論考が集まった本で、論争的なものから膨大な情報を提供するものまで多角的に「現代日本SF」を浮き彫りにする
【社会】殺人ロボット反対キャンペーン海猫沢めろん
2013年4月にロンドンで発足した「ストップ・キラーロボット」キャンペーンは現実がSFに追いついた瞬間だった。完全自立型のロボットの実用は現実の問題、今後SF的想像力の射程はより広いものになっていくだろう
【ゲーム】BRAVELY DEFAULT FLYING FAIRY(スクエニ)海猫沢めろん
FFシリーズの世界観を受け継いだRPG。ファンタジーながら、震災後を意識させるモチーフやテーマを寓話的に入れ込み、ループや並行世界などSF的な要素も満載の傑作
【技術】理研のSRシステム海猫沢めろん
ARと混同されがちだが、現実感を保ったまま空間に情報を付加するARと、現実感覚そのものを変えてしまうSRはまったく違うものであり、よりSF的な技術。活用の仕方が難しいがぜひSF方面でも盛り上げていただきたいところ
「直球表題ロボットアニメ」(石舘光太郎監督)2013年2月5日 - 4月23日放映(全12話+1話、テレビアニメ)高槻真樹
3DCGフリーソフト「MMD」による身軽な制作態勢で話題になったが、非常にSF度が高く野心的な内容が埋没してしまったのは残念。関心を高める機会となればと思う。 人類滅亡後の地球で残されたロボットたちが、(人間が滅亡したというのに)終わりの見えない戦いを止めさせるために、「笑い」を研究するというストーリー。ロボットたちは「笑い」を知らないため、トンチンカンな試行錯誤を重ねながら、少しずつ「笑い」を学んでいく。しかし最後に待ち受けていた結末とは・・・衝撃の「サイシュウワ」(12話)が大きな話題となった。 「笑い」の効果を探るためのシミュレーションや歴史資料館での「モノボケ」など、ひとつひとつの仕掛けもSF性の高い仕組みになっているのが興味深い。
酉島伝法「皆勤の徒」東京創元社匿名希望
濁流のように押し寄せる造語群にわけもわからぬまま奇々怪々な世界に呑み込まれつつ、息もせぬまま読んでいるようでいて、映像に置き換えながら読む快感に同時に浸れたのは、作者自身によるイラストレーションの助けと要所要所にさしはさまれる人間的な会話の魅力に尽きます。私の中のイマジネーションを再構築してくれた傑作
【マンガ】『足摺り水族館』panpanya海猫沢めろん
つげ義春と吾妻ひでおが悪魔合体したかのような謎の世界観のなかを、なんとなく散歩したりぼーっとしたり冒険したりする白昼夢じみた作品集。日本のサブカルチャーとシュルレアリスムの素晴らしきマリアージュ
『僕は問題ありません』宮崎夏次系猫乃りんな
SF的な要素を散りばめながら登場人物たちの「世界が変わる瞬間」をビビットに描いた八編を収めた作品集。今までに見たことがない独特のストーリーと画風でSF漫画の新世界を切り開いている著者の実力が十分に発揮された一冊
『機龍警察 暗黒市場』著:月村了衛Y_えんどー@1/26リスアニ
機龍警察シリーズの長編3作目。ベースは警察小説だが、機甲兵装という有人搭乗兵器が普及している世界がリアルに描かれている。SF的ギミックと重厚な人間ドラマが合わさり非常に読みごたえがある作品
野崎まど「know」blnk mda
ひと月で2回読んだのは初めて。曼荼羅や古事記のクローン脳並列兵器など視覚的にも優れていた。ダンスミュージックへの肉薄やエグい描写などニッチな表現も欠かさない。それでいてポップ、恐るべきバラン
『館長 庵野秀明 特撮博物館  ミニチュアで見る昭和平成の技』タニグチリウイチ
SFを映像として表現する際に不可欠な特撮の歴史を振り返り技法を紹介し凄さを知らしめつつ、特撮を志す者を増やした功績は大。短編映画『巨神兵東京に現る』で実践しつつ破滅のビジョンを見せた
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東浩紀 『クリュセの魚』Ta. Miyoshi
NOVAでの連載作品として完結し、単行本として発刊。テラフォーミングされた火星、国家の枠組みの変わった地球、そして異知性体の介入という舞台を変えながら、出逢いを描き、特に第1章には惹かれるものがありました
酉島伝法『皆勤の徒』笛地静恵
竜頭竜尾柳眉元徳蜿蜒長蛇延々長考彫心鏤骨鏤骨最新前人未到前代未聞泥泥愚茶愚茶抱腹絶倒人情喜劇神聖悲劇葦編三絶異変空前絶後金口木舌言語絶倫一票投射怪人慄然
映画 『009 RE:CYBORG』(神山健治監督)タニグチリウイチ
石ノ森章太郎氏による不朽の名作を劇場映画化。何者かの意思により操られる人類を、過去に置き去りにされていたサイボーグ戦士が再結集して救おうとする。哲学的な内容と、3DCG技術によるアニメの革新を評価
籐真千歳「スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの」S
籐真千歳「スワロウテイル/初夜の果実を接ぐもの」を推薦します。シリーズ完結記念と、SF関連の賞で無冠なのが惜しいので。このシリーズは伝統的なSFテーマ(「人工知能/生命」アシモフのロボットシリーズ、「進化の袋小路と救世主」ハーバートのDUNEシリーズ、「異種知性との接触」レムのソラリス)を扱いながら、物語としての面白さと思弁性とアクション主体の映像が浮かぶような表現とユーモア性を高いレベルで同居させています。何より技術的特異点と人類進化の可能性を示すテーマは、とあるSF作家の「人が想像できることは、必ず人が実現できる」という言葉を信じるなら、希望に満ちた福音として今後も読み続けられるべきと思います
『皆勤の徒』酉島伝法(東京創元社)森下一仁
異形の生命に満ちた宇宙を、驚嘆すべき文体で紡ぐ。『家畜人ヤプー』以来の異色SF
『BEATLES ビートレス』長谷敏司(角川書店)森下一仁
ラノベのスタイルに、進化する機械と人類との競合/共存という刺激的なテーマを盛り込んだ意欲作。男女の性愛が繁殖行動といかに遠くまで来ているかを示唆している点も興味深い。文章はもう少しこなれて欲しいが、内容勝負ということで
電王戦(株式会社ドワンゴ、日本将棋連盟、株式会社中央公論新社主催)庵野雲
現実として兵器・兵士がロボット化していく中で、自己学習機能を持つソフトウェアが人間に替わり軍師的役割を担う様をまざまざと見せつける将棋電王戦は、映画『ターミネーター』の世界観を確信させるSF的事象である
『ニンジャスレイヤー』(B・ボンド&P・N・モーゼズ)赤いたぬき
ネオサイタマというハイテクディストピアでニンジャと呼ばれる超人達が暗躍し、それをニンジャスレイヤーが殺す痛快復讐劇。緻密なハードSFと娯楽作品の使い分けが非常に上手く、ヒーロー物としても楽しめる
『ニンジャスレイヤー』(B・ボンド&P・N・モーゼズ)イエローオスシ
サイバーパンク小説の新たな境地。Twitterという発表形式もさる事ながら奇想天外に見えて緻密なSF考証、テンポの良い展開、魅力的なキャラクター等が光る。特に古典SFネタはファンにはたまらない
業田良家「機械仕掛けの愛」gryphonjapan
アシモフが、手塚治虫が、考え続けた「ロボットとは何か=人間とは何か」の問いに、オムニバス形式でロボットを描き応える。子供役、恋人役、兵器、スパイ、労働力… そのどれにもなりつつその役だけに納まり切れないロボットの「心」を、さまざまな視点やシチュエーションで照らし出す。手塚治虫文化賞・短編部門受賞作。2つのエピソードがネット上で試し読み可能→ http://big-3.jp/bigcomic/rensai/kikai
『皆勤の徒』(酉島伝法)吉田隆一
想像力を燃料に言語をハードウェアとして重力をぶっちぎり飛翔するすがすがしさを感じました。湿気に満ちた映像的描写でありながら徹底的に乾ききった世界観にSFを感じます。この内容をエンタメ小説として成立させる力技に唖然
諫山創『進撃の巨人』若木未生
「巨人」という脅威への絶望感やプリミティブな残酷表現に注目が集まる今作だが、作者の意識はクールであり、お化け屋敷的なおどかしではない「おもしろい物語」を追求している。物語を「巨人」に明け渡すまいとする作者の抗戦を、まず称賛したい。人類の趨勢が主人公ひとりに託され、ヒロインは主人公を一途に守る、という物語構造は、「セカイ系」の最新形態といえよう。セカイの象徴として存在する三枚の「壁」が、出色の設定。作中では「座標」なる概念が明らかになりはじめ、また伏線として時間ループや多元世界の可能性が示唆されている。この物語の本質と、この作品をとりまく熱狂的ムーブメントの理由について、SF者の視点をもって論議されてもいい頃ではなかろうか
blackseep『∞ -メビウス-』渡邊利道
これまで音楽、特にJAZZと日本SFとのつきあいはとても長くて強いものでしたが、このアルバムほどポップでアクチュアルなものはなかったように思います。単に趣味的ではないヴィジョンのあるコンセプトが素晴らしいです
アニメ「ガッチャマンクラウズ」KASUKA
既存のヒーロー像を現代的なSNSでアップデートしようとした意欲作
『ニンジャスレイヤー』(B・ボンド&P・N・モーゼズ)hatikaduki
小説を、140字ずつ、みんなで、リアルタイムで楽しむTwitter連載は「連載」という発表形態の理想型。加えて謎めいた作品の出自やメタ存在など作品を取り巻く空気の虚実曖昧さ。なにより図抜けて面白い
からて『マカロン大好きな女の子がどうにかこうにか千年生き続けるお話。』(MF文庫 J)タニグチリウイチ
千年後に飛ばされた友人に会うために不老不死となり生き続ける少女を描きつつ、その過程で科学の悲劇や人類の未来や地球の将来宇宙の彼方が示され号泣の結末へ導かれる
永野護「ファイブスター物語」(ニュータイプ2013年5月号掲載分)Uotuki
四千年に渡る年表を元に、緻密な書き込みと美しいデザインで人気のSF漫画。その休載から8年、ようやく再開された漫画はしかし、読者の知る世界とは違う異世界であった…。ページを捲った瞬間、以前とは違うデザイン、違う設定に基づいて何事もなかったように続く物語は、読者に自身が平行世界へ迷い混んだような錯覚さえ与えました。もはや一つのSF的事件として、また、これだけの事をさらりと行ってしまうこの作品に、SF大賞を
電王戦(株式会社ドワンゴ、日本将棋連盟、株式会社中央公論新社主催)山口優
小説作品ではなく実際の出来事だが、従来同様の状況になっていたチェスのみならず、駒の再利用という点で遙かに複雑な将棋においても、コンピュータソフトが第一線のプロに比肩し得る能力を持つことが初めて示されたという意味に於いて、エポックメイキングな出来事と言える。電王戦をきっかけに、技術的特異点の現実味が更に増し、日本においても、これについて真面目に議論する雰囲気が徐々に醸成されてきた印象がある。
西崎憲『飛行士と東京の雨の森』(筑摩書房、2012年9月10日)北原尚彦
日本ファンタジーノベル大賞作家による、基本的には文学寄りの短篇集なのだが、最後の「奴隷」は奴隷の存在が当たり前の日本が淡々と描かれる衝撃度超弩級の作品で、オールタイムベスト級の短篇
デッドボールP『俺のボカロが妹になりたそうにこちらを見ている』(一迅社)ジョー猫村
新しい小説であるボカロ小説から素朴で美しい「人とモノ」の物語が登場したこと。連作短編集という形式を生かし、奥行きある作品世界を構築していることを評価したいと思います
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長谷敏司『BEATLESS』(角川書店)ジョー猫村
「君に魂がなかったとしても。」の一文が持つ力強さに、じぶんが存在している「いま」と地続きにある未来を見ました。オールタイム級の傑作だと思います
大森望(編)『NOVA』シリーズ(全10巻 河出文庫)ジョー猫村
ジャンルが内包する多様性を示し、可能性を明らかにするアンソロジーであったと思います。私は奔放な遊び心と知性の結びつきこそSFの本懐と考えますゆえ、本シリーズを高く評価したいと思います
『Gene Mapper – Full Build – 』藤井太洋タヤンディエー・ドゥニ
バイオナノテクノロジーや遺伝子工学によってデザインされた生物の特許化、環境問題、貧富格差など、現在の国際社会が直面する問題を取り上げたスリリングな作品です。重大な問題を巡る考察とワクワクさせる物語の両方が巧みに混じりあっています。また、従来のネットの崩壊を描いた作品であるのに、最初は自費出版の電子書籍として大ヒットした点が面白いです
『ヨハネスブルグの天使たち』宮内悠介タヤンディエー・ドゥニ
紛争やテロというテーマを背景に、繰り返して落下する日本製ロボット「歌姫」が人間性を時に美しく映し出し、時に残虐に打ち壊すが、それを強く訴える作品です。シーシュポスの神話と同様、不条理に直面したとき、人間がどのように生きて行けばいいかを視覚的に描いています。肉体と機械、記憶とメモリ、ソフトウェアと意識、独自性を持つ精神ととけあった精神、様々な形で肉体と精神の関係性を問いかけています
三島浩司『高天原探題』(早川書房)礒部剛喜
SFの評価として最も重要だと考えているものは、SF作品の構造性です。同時にそれはSFの定義でもあります。SFは筒井康隆さんが指摘したした〈浸透と拡散の時代〉を経て、〈抽出と凝固の時代〉にはいったというのが私の持論です。〈SFとは何か〉という再定義が求められているということです。SFの定義は、それぞれの作品に秘められた文学宇宙の構造によって定義されるべきだと考えています。では小説の構造によってSFを定義しようとする試みにあって、もっとも重要だと見なしているのは、その作品の神話性だと思います。神話学的な手法によって、その小説の構造を解体してみるとき、そこの何が見つかるのかが、評価の重要な観点だと思います。神話性という視点から構造を解体したさいに、そこにセンス・オブ・ワンダーが現れることを評価し、『高天原探題』を日本SF大賞に推戴したいと思います。
『皆勤の徒』酉島伝法(東京創元社二〇一三年八月三十日)山岸真
とにかくほんとうに見たこともないような異世界が、連作というかたちながら長篇一冊分構築されているという一点だけでも、大賞候補に推したい。その造語感覚・ストーリー(?)構築は、かつて吾妻ひでお作品をどなたかが評した「わけのわからないものがわけのわからないまま描かれている」という難行の小説的達成といえるが、解説にあるようなSF的世界観がその背景に貫かれている(ほのめかしにとどまらず)のも驚異
《NOVA》全十巻 大森望責任編集(河出書房新社二〇〇九年十二月二十日~二 〇一三年七月二十日)山岸真
読者への話題性、作家にとってのマーケットといった面も含め、日本の短篇SF(ひいてはSF全体)の活性化にきわめて大きな貢献があったと思う。収録作自体も、どの巻にも年間ベスト級(少なくとも)の作品が数作あるというレベルの高さ。いずれの点からもSF大賞候補にふさわしい。ノンテーマの書き下ろしSFアンソロジーシリーズという英米でも継続困難な企画が短期間で十冊も実現した点も高く評価されるべき
『ガーメント』三島浩司(角川書店二〇一三年五月三十日)山岸真
時間(歴史)SFとしてはタイムパラドックスの処理が気になるなと思っていると、そこに史上最大スケールともいえるアイデアが仕掛けられている。SFを読みなれた人ほど驚愕するであろうこの一点を評価するという意味でSF大賞候補に
『Gene Mapper -full build-』藤井太洋(早川書房二〇一三年四月二十五日)山岸真
遺伝子設計作物や拡張現実が日常に浸透しきった近未来をリアルに体感させてくれる、パオロ・バチガルピやチャールズ・ストロスの作品と並んで現代SF最前線に立つ一作としてSF大賞候補に。ベストセラーとなった自費出版の電子書籍を、倍近い長さに全面改稿した作品という点も加味したい
『本にだって雄と雌があります』小田雅久仁(新潮社二〇一二年十月二十日)山岸真
書物を題材にした奇想小説で、とくに終盤で提示される独創的な宇宙論的ヴィジョンは度肝を抜かれるスケール。家族四代の年代記のかたちで近・現代日本史を描き、またフィクションの持つ力がテーマである点も大賞候補にふさしいが、なにより読書(小説)好きがこれほどしあわせな気分で読み終えられる作品は滅多にない
『SF挿絵画家の時代』大橋博之(本の雑誌社二〇一二年九月二十五日)山岸真
題材的にSF大賞候補に挙げるにふさわしく、また資料性の高い大労作。そればかりでなく、七十数人分もの画家の生涯・半生や絵画観、あるいは絵画やSF等に対する思いに(正直、まったく絵に接したことのなかった方もいるのに)思わず読みふけってしまうのは、本書が著者の「作品」として高いレベルにある証し
『know』野�まど(早川書房二〇一三年七月二十五日)山岸真
未来世界構築やヒロインの能力の面白さ、構成の巧みさ、クライマックス自体の迫力、などレビュウ的な高評価ポイントは多々あるが、とくにSF大賞に推したいのは、【推薦者より、「以下のコメントでは、単にすぐれた作品というだけでなく「SF大賞に」推したい理由として結末に言及してますが、作品未読の人のために、可能ならウェブでは非公開にしていただけるよう希望します」とのご要望がありましたので、省略させていただきます
小川一水『天冥の標』シリーズ(ハヤカワ文庫JA)foxhanger@改造人間
未完結のシリーズでもエントリ可能になったと言うことで、こちらを。完結を待たずして贈る価値のある作品だと思う
酉島伝法「皆勤の徒」放克軒(さあのうず)
SF大賞が無ければ評価をし得ない小説(まあそれ以外も可のようですが、基本的には小説を応援したいです)があれば理想的。で、今回は独特の言語感覚でSFならではの世界観で圧倒的な異世界を構築した酉島伝法「皆勤の徒」があるではないですか!一点買いです(笑
TVアニメーション「翠星のガルガンティア」ケイン
科学技術の進歩・生物としての進化・文明崩壊後の地球。人類の進む可能性のある3つの未来の姿が、1つの世界の中で衝突し、混ざり合う。SF作品としての要素が詰まっている。戦争のため極限まで最適化された宇宙で過ごしてきた少年が事故に巻き込まれ、一機の機械兵器と共に情報でのみ存在が確認されていた地球へと降り立つ。そこで助け合い、自然と折り合いをつけ生きる魅力的な人々に触れながら、兵士という駒から一人の人間として成長していく。少年の成長物語としても非常に楽しませてくれる作品
『皆勤の徒』(文・本文挿画:酉島伝法:東京創元社)長谷敏司
独自の語彙でつづられた物語が、我々のよく知る「営み」と似ているために読み解ける。想像しがたくも魅力的な文章世界が、これも異質なイメージを持つ挿絵ページに衝突したとき、はっと理解にぶつかる。文章と挿絵との関係性の中で、古くて新しいイメージが豊かに膨らんで行くさまは、ビジュアルの影響が強い世代以降だからこそおそらく生まれた素晴らしい作品的結実だと思う。 http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/978448801817
漫画『オルゴール』クリスティーヌ中島
自著の漫画『オルゴール』を自薦します。http://t.co/bgDp0nyizzオルゴール/ 3Dでの映像再生が一般的になった近未来で、亡くなった恋人を保存しようとする話です。変わっていくものと変わらないものについて
野崎まど『独創短編シリーズ 野崎まど劇場』(電撃文庫)タニグチリウイチ
『know』で著者の豊かな想像力を知った者が遡り読んで自覚の甘さに気づかされる本書。タイポグラフィありナンセンスありパロディありの奇想ぶりに騒然とならない人はいない。『know』と合わせ推す
『ヨハネスブルグの天使たち』宮内悠介図子慧
解体する家族とロボットを通してみえる人という希薄な存在、はかない存在のイメージが、冷ややかなエロスとともくり返され、美しいと思いました。テキストで語られる物語の限界を追っているような
CD『Childhood's End』(難波弘之)YOUCHAN
コチラ、本ではなく、CDです。難波弘之『Childhood's End』を推薦。長い音楽活動をSF表現に費やしてきた難波さんにぜひ大賞を!と思いました
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TVアニメ「進撃の巨人」中里友香
世界観も、解き明かされるべきSF的な謎も、圧倒的でダイナミック。人物の造形もすばらしい。SFにありがちな人物造形にとどまっていない。単純に物語としても見ごたえがあります。やはり大賞作品は、SFとして優れているのみならず、物語の魅力が備わっているべき。SF設定がどうこうと考えずとも、視聴者が単純に「調査兵団になって自由の翼になり、巨人を駆逐して、壁の外の世界を見る!」とガチで夢中になる魅力があります。原作漫画も素晴らしいですが、やはりアニメをきっかけに原作に触れた人も多いので、このたびアニメの功績をより評価したいと思いました。今年から、完結作品でなくともかまわなくなったのは、日本SF大賞の進歩だと思います。これまで大作も名作も、該当期間中に完結していないと受け付けてもらえなかった。日本SF大賞の今後に期待しています
「ラファティ3冊出版」らっぱ亭
生誕百周年に向けて浅倉伊藤セレクトの短篇集『昔には帰れない』(早川11月)、後期の集大成的長篇『蛇の卵』(青心社3月)、初期傑作長篇『第四の館』(国書4月)が続々と出版。このタイミングでの奇跡的なコラボレーション!(エントリー管理者注・日本SF大賞は翻訳を対象とする賞ではありませんが、これはラファティ3冊出版という特別な「出来事」のエントリーですのでOKと判定されました。
《NOVA》全10巻 河出書房新社(責任編集:大森望)図子慧
さまざまな書き手を発掘し、ポップなSFから、ハードSFまで網羅して、読者層を若返らせた。ぜひとも第二期がはじまってほしいシリーズです
山口優『アルヴ・レズル 機械仕掛けの妖精たち』(講談社BOX)タニグチリウイチ
『シンギュラリティ・コンクェスト』で進化する人工知性を描いた作者の久々の長編。コンピュータから生まれた知性を巡る物語に、ネットを介して様々な機器を操る力を得た少女たちの戦いが絡む
『皆勤の徒』(酉島伝法)高橋良平
さて、「絶対評価」なるものを基準とする100文字以上400字以内の推薦理由をつらねるとあれば、短評を求められているのに等しく、ならば該当書を取り出して再度"ギンミ"をしようとしたが、どこにまぎれてしまったのか、なかなか本が見つからず、したがって現在憶えている印象を記せば、創元SF短編賞の作品のみなら異色作にとどまったかもしれぬが、連作としてまとまった作品を読むと、その異化作用をもたらす造語能力と世界構築力に圧倒され、読んでいるうちでは近来まれにみる傑作と思わずにいられず、したがって我が「絶対評価」でスイセンするものとする
黒史郎『未完少女ラヴクラフト』nyapoona
H・P・ラヴクラフトが美少女化するという点だけが話題になりがちだが、実は他のクトゥルフラノベとは一線を画す重厚なダークファンタジー+言語SFである。言語が狂わされることで起きる「言語災」の鬼気迫る描写に注目したい
『Beatless』(長谷敏司:角川書店)匿名希望
緻密に設計された地続きな100年後の世界、美少女メカを使役して戦う少年達というキャッチーな設定、これらの口当たりが良い素材を作って作られた絶望の物語。読み手によって様々な姿を見せる、龍安寺の石庭のような作品
『ヨハネスブルグの天使たち』宮内悠介北野勇作
様々な落下と破壊のイメージが素晴らしい。正直、私にはこの小説を評するだけの知識が欠けていて、この価値をきちんと受けとれている自信はないのだが、従来の小説の価値を超えた光景には文句なしに興奮させられた
泉和良『おやすみムートン』(星海社FICTIONS)タニグチリウイチ
人工知性ムートンの成長を見せる物語。故郷の星を失い彷徨う宇宙船に残された人々の絶望がムートンの純真さで変化する。異星人がもちかける悪魔的な取り引きを容れるべきか否か。人類の限界と可能性を見よ
『ヒトデの星』北野勇作北野勇作
自著ですが、日本SF大賞にふさわしいと考えるのでエントリーします。要約不可能な話がSFでしかありえない方法で書かれています。これが私のSFです
『皆勤の徒』酉島伝法北野勇作
視覚を初めとする様々な感覚を刺激する豊かなイメージと同時にこれは文章を用いることでしか、そしてSFにしか表現できない世界だと思う。これを評価できるのは日本SF大賞だけ、日本SF大賞がやらねば誰がやる。そんな小説
『NOVA(全10巻)』大森望・編北野勇作
短編集がほとんど出版されることのなくなった日本SFにとって、貴重な場として機能した書き下ろしアンソロジー。SFの武器である「実験」「遊び」「狂気」を最大限に生かす形式である短編SFの今後のためにも
森田季節『ウタカイ』タニグチリウイチ
森田季節『ウタカイ』(一迅社)推薦。短歌を詠むとその内容が具現化して相手を襲い自分を守る「ウタカイ」の競技に勤しむ少女たちの物語。言葉の持つ力を形に変えた一種の異能バトルである上に、繰り出される短歌のどれもが洗練されて前衛的。短歌の賞もあげたい位
渡来ななみ『天体少年。 さよならの軌道、さかさまの七夜』タニグチリウイチ
渡来ななみ『天体少年。 さよならの軌道、さかさまの七夜』(メディアワークス文庫) 少女が会ったのは未来から時間を遡行する少年。すれ違う時間の上で初対面が別れになり、別れが初対面になる特異な関係の上で懸命に心を交わそうとする2人の姿が胸を打つ時間SF
野崎まど『know』タニグチリウイチ
野崎まど『know』(ハヤカワ文庫JA)を推薦。デビュー作『[映]アムリタ』から『2』へと至る作品群を通し描いてきた、脳の限界を超えて人が進化する可能性が、高度な情報ネットワークを加えることでより深淵なものとなって提示される。“知る”ことの意味を知れ
芝村裕吏『この空のまもり』タニグチリウイチ
芝村裕吏『この空のまもり』(ハヤカワ文庫JA)を推薦。現実に起こっている、ネットコミュニティを経たリアルな行動への参集が持つ可能性と危険性、仮想現実を中核とした近未来的テクノロジーがもたらす風景、現在の施策や心情の揺れが生み出す社会の姿を見せてくれる
「ヒトデの星」北野勇作Satoru Shima
「ヒトデの星」北野勇作著を推薦。不思議な読後感、ホラーじみたストーリー。それでいて切ない、どこか懐かしいような家族の物語
野崎まど「know」アザレアを咲かせて@ぼっち党員
「知る」──単純にして実は恐ろしく奥深いテーマを、野崎まどらしい二段構造のサプライズを持つストーリーテリングによって描きあげた佳作。野崎まどに日本SF大賞を
『日本SF短編50』藤田直哉
もう一作。『日本SF短編50』の偉業を、エントリーしたいと思います。日本SF作家クラブの50年における、多くのSF作家たちの傑作に出会う機会を齎してくれたことに感謝し、選者たちの深く広い知識に敬意を表して、推薦させていただきたいと思います
藤田直哉『虚構内存在 筒井康隆と〈新しい《生》の次元』藤田直哉
次に、これはちょっと自分でも笑っちゃうのですが、自著『虚構内存在 筒井康隆と〈新しい《生》の次元』を推薦します。初の総合的な筒井康隆論です。これから、来るべき日本SF第一世代の総合的な研究の端緒となることを期待して……とか、自推もいいんですよね?(
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小島秀夫〈メタルギア〉サーガ藤田直哉
続けて、小島秀夫〈メタルギア〉サーガを推薦いたします。故・伊藤計劃氏に強い影響を与え、全世界で評価されている偉大なるゲームのシリーズであり、ゲームというメディアで作られた日本SFの金字塔と呼ばれるべき作品群です。単体では『メタルギアライジング』を。様々な理由により、SF大賞はこれまで、ゲームを評価し損ねてきました。しかし、映画、漫画、アニメと、様々なメディアを先進的に評価したSF大賞であれば、現代の最先端メディアの中の優れたSFを評価せねば、名折れであろうと思います
長谷敏司『BEATLESS』藤田直哉
長谷敏司さんの『BEATLESS』を推薦いたします。人工知能が発達し、それが美少女の〈かたち〉を採って人間とコミュニケーションするという世界の中で、人間と機械はどう共存するべきか。新しくも普遍的なテーマを扱った快作です
長谷敏司「BEATLESS」アザレアを咲かせて@ぼっち党員
「人」と「モノ」の関係を描いた、「人」と「モノ」の恋愛小
ブラッドレー・ボンド&フィリップ・N・モーゼズ『ニンジャスレイヤー』nyapoona
「海外のSF小説を翻訳してtwitterに掲載している」という奇特な発表形態や機械翻訳じみた文体もさることながら、緻密な設定と無駄を省いたテンポの良いアクション描写が光るシリーズ
浅羽通明「時間ループ物語論」gryphonjapan
映画、小説、漫画アニメなどで広く題材になっている「時間ループ」作品の意味や起源を探る中で、モラトリアムの意味や「日常」とは何か、といったテーマまで考察する評論本(洋泉社)。 http://www.amazon.co.jp/dp/4800300185
『ノックス・マシン』(著:法月綸太郎)マリ本D
本格ミステリとハードSFの、馬鹿馬鹿しくも華々しい融合。SFの文法で本格ミステリを論じた作品としての最高到達点が4つも収録されている幸福。白眉は「バベルの牢獄」。タイポグラフィな仕掛けを必要な設定として活用し、叙情的な物語にまで昇華した傑作
『艦隊これくしょん-艦これ-』マリ本D
第二次世界大戦期に活躍した軍艦たちを、日本SF/ファンタジー独自の手法ともいえる〈擬人化〉によってユーザーたちに愛着を抱く存在にさせつつ、史実を忠実に再現した武装や性格によって、古参のミリタリーファンから新規のユーザーまで幅広い層を獲得。また、明確なストーリーがないことが逆に多くの二次創作作品を生み出し、ファン同士の交流のきっかけになっていること。また、擬人化された軍艦である〈艦娘〉たちの存在そのものが、一種の「ポストヒューマン」であることなどから
「我は四肢の和を超えて」ジョー・ホールドマン/イラストレーション 加藤直之/解説 北原尚彦東亭朱美
4回目を迎えたSFコンベンション「はるこん」http://www.hal-con.net/ 実行委員会発行で、その年のGoHによる短編集。ハヤカワSFシリーズの銀背を完全に模した装丁、ほとんどが日本未翻訳の短編、日本GoHによるイラストなどファンジンとしては今までにない出色の出来。本家 早川書房が刺激を受け、新ハヤカワSFシリーズを再開したと言われるほど。本作は珠玉の短編に、ホールドマン氏の邦訳ほとんどすべてを手掛ける加藤氏のすばらしいイラストもさることながら、海外作家を招聘する「はるこん」ならでは、ホールドマン氏が直接、解説の北原氏に「素晴らしい解説だ、自分でも確認できていなかった書誌データをありがとう」という趣旨のことを言っていたのを推薦者は聞いた。私は「はるこん」スタッフとして、誇りをもって本書を推薦したい
ジャズアルバム「∞メビウス」Uotuki
BlackSheepのジャズアルバム「∞メビウス」を推薦します!曲の題をSF作品から採りオマージュに溢れつつも、ただSFの情景を描くのみでなく、音の一つ一つがSF的感覚を持つ革命的なSF音楽。少人数の古典的ジャズ編成から紡がれるSFは新感覚で懐かしく
高橋葉介 「夢幻紳士」森岡浩之
本作は30年以上前、『マンガ少年』誌上に登場して以来、掲載誌を変えつつ発表されつづけ、今期も『新・怪奇篇』が『ミステリマガジン』に連載された。掲載誌のみならず、ときにはスチャラカな冒険活劇、ときには耽美的な奇譚と作風すら変化させつつも、浪漫に富む肌触りを保ちつづけている。類を見いだすことの難しい存在であり、日本SF史上に位置づけられるべきと考え、ここに推薦する
酉島伝法『皆勤の徒』(東京創元社、八月三〇日刊行)長山靖生
ハードSF的な設定の上に、優れた幻想文学的イマージュを展開して独創的な世界像を構築している。また日本の文字表記、漢字と音のダブルイメージを巧みにあやつり、重厚な世界観とおかしみのある文体を同時に実現したその手腕は、日本SF史にひとつの新たな可能性をもたらしたといえる
TVアニメ「ファンタジスタドール」ささみ
希望の相互扶助、人工物であるドールと人間の交流、技術による命運の行方、カードを実体化させるデバイスなどSFを感じさせる設定が随所に織り込まれている作品。そうした設定が各所にありながらも王道を往くストーリーは年齢、性別を問わず楽しめることから日本SF大賞に相応しい作品と評価できる
日銀の異次元緩和Maisel's Weisse
SFを現実の政策に持ち込んだ初の例として推薦しま
「介護ロボット」星いちる(「機械仕掛けのイコン」所収)しあ
二十一世紀後半、世界中で超高齢少子化社会になり介護の担い手が不足していた。日本の科学者が介護ロボットを開発、ロボットは介護を始め死後処理もし主人の三十三回忌を終えると自ら没する。「子どもがいないと老後が困る」という人間のエゴへの皮肉も込められている。自薦、同人誌発表のものです
電撃文庫「フルスケール・サマー」永島裕士匿名希望
電撃文庫「フルスケール・サマー」永島裕士著 を推薦します。推薦理由は近年貴重なSFジュブナイル作品であり、広く読まれたい作品だからです
「宇宙戦艦ヤマト2199」Budvar_P
かつて社会現象にもなった「宇宙戦艦ヤマト」が、現代物理学・天文学の成果や言語学的試行を加えられて、大人の鑑賞に耐えられる優れたニュースペースオペラとして復活しました。これはまた、長期低迷するテレビドラマにおける物語の復権でもありました。作品内において、しばしば80年前後に日本に紹介された海外SF諸作品を上手くオマージュし、生活に埋もれてセンス・オブ・ワンダーを忘れていた中高年層にSF少年だった頃の感動を思い出させ、行き詰まりがちな現代日本に生きる我々に勇気と活力を取り戻させた。更には継承すべき文化財として少年たちに伝えるべきものが何なのかも気づかせてくれた
「八重の桜」前編匿名希望
私7月に怪我をしまして入院したんですけど、その日の夜に観たのが丁度戊辰戦争の会津側の敗戦が決まった回でした。そこから展開が読めなくて神経に来たりもしたんです。今は足の神経を治療中です
『ニーナとうさぎと魔法の戦車』(著:兎月竜之介)マリ本D
ライトノベルではあるが、「戦争」を扱ったその物語は、「伊藤計劃以後」の系列に連なる立派なSFファンタジーであると考えられる。何より作者は、同人活動において『ハーモニー』(著:伊藤計劃)のトリビュート作品を書くなど、自分が「伊藤計劃以後」の作家であることに自覚的である
《NOVA》全10巻(責任編集:大森望)マリ本D
開始から約4年。趣向も違えば長さもまったく異なる傑作短編を送り続けてきたアンソロジー。収録された短編集が、すでに『SFが読みたい!』や『このミステリーがすごい!』などにて好評を得ているだけではなく、新たなるSF専門のシリーズである『NOVAコレクション』の刊行も始まるなど、ここ数年のSF界に大きく貢献した功績を讃えて。また、今回受賞すれば、第二期開始への大きな足掛かりになるだろうから
『BEATLESS』(著:長谷敏司)マリ本D
ラピュタのような典型的な落ちものラブコメ(例えば、空から美少女が降ってくるようなお話)に、ハードなSFの主題をくっつけて、究極的に思弁的でありながら徹底的にエンターテイメントをしている物語を作り上げた作者の手腕に感嘆させられた。対象期間随一の傑作だと思う
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